相手を動かす話し方 第2回 五月病に効くホウレンソウ

NEWキャリア

2019.07.26

相手を動かす話し方
第2回 五月病に効くホウレンソウ

(月刊『ガバナンス』2008年5月号)

 4月に新しい職場に異動してきた田中君は、必死に仕事を覚え、周りに溶け込もうと努力してきた。その結果、与えられた仕事はなんとかこなし、周りの人たちとも良い人間関係ができつつあった。

 しかし、5月に入ってからは、ちょっと様子が違ってきた。取り立てて問題を抱えているわけではないが、仕事に対する熱意が失せてきたように感じる。肉体的にも、身体がだるく夜はあまり眠れない。何事にも根気がなくなってきたような気がする。田中君は、〝ひょっとすると、これって五月病?!〟と思い始めた。

 

 五月病にかかると、どうしても内にこもりがちになる。自分ひとりでくよくよ悩んだり、落ち込んだりする。そうなると、仕事へのモチベーションが下がり、悪循環に入ってしまう。それを断ち切るためには、問題を深刻に捉えず楽天的に考え、かつ目の前の仕事から逃げないことだ。

 そして、積極的に家族や友人、あるいは、周りの人たちとコミュニケーションを図る。職場では、意識的に仕事のホウレンソウ(報告・連絡・相談)を心がけよう。人とコミュニケーションを図ることによって、問題や悩み事が解決したり、新たな目標へのチャレンジを見つけることができたり、あるいは、他人から元気をもらったりすることができる。

〝報告〟のメリットは?

職場での相談

 仕事が忙しいと、つい忘れがちなのが上司への報告だ。本来、部下から報告すべきことを、上司から催促されて「あっ、すいません」と謝ることもあるだろう。報告は面倒くさい仕事だ。しかし、ここで原点に立ち返ってみよう。何のために報告をするのか。もし、「上司が仕事の状況を知りたいから報告する」と考えているなら、報告業務の一側面しか見ていない。これでは義務感や負担感が先に立つ。

 そこで、報告する側のメリットを考えてみよう。上司に報告をするためには、実施した仕事の内容を整理し、仕事のヌケやモレがないか確認しなければならない。それに、報告内容を書類として作成するなら、仕事の記録をきちんと残さなければならない。もちろん、報告することによって、上司から直接的に仕事の問題点を指摘してもらったり、新たな視点やアイデアをフィードバックしてもらえたりする。

 このように、上司への報告には、自分にとってのメリットがたくさんある。思い切って上司の席に行き、「少しお時間をいただけませんか。先日の住民説明会の結果をご報告したいと思います」と言ってみよう。ただ、ぐだぐだ背景から説明してはいけない。「説明会の結果は…でした」と、ずばり結論から報告する。もし、悪い結果であれば、「今後のことも含めて、ご意見をいただければ…」とアドバイスを求める。

密な〝連絡〟が職場の人間関係をよくする

 また、人間関係のストレスが五月病の引き金になることもある。あまりよく知らない間柄であれば、お互いに気を使い、表面的にはうまくいっているようにみえる。しかし、しばらくして気心が知れると、ちょっとしたわがままや本音、言葉の行き違いが出てきたりする。そうなると、些細なことで人間関係にひびが入りストレスの原因になる。

 職場の人間関係は仕事のモチベーションと密接な関係がある。人間関係がぎくしゃくするとストレスを抱え、仕事へのモチベーションが下がってくる。逆に、仕事にストレスを抱えていても、人間関係がうまくいっていると、仕事に対するモチベーションを維持することができる。

 人間関係の良し悪しは、ひとえに相互のコミュニケーションが円滑かどうかに関わっている。膝をつき合わせてじっくり話し合ってみると、問題の原因は単なる誤解や行き違い、あるいは言葉の使い方が稚拙だったということも多々ある。

 職場のコミュニケーションは、密に連絡を取り合うことが基本だ。連絡不足が原因で、たとえば、「そうだったら、最初に言ってよ」とか、「いや、それは言った」、「いや、聞いていない」など、非生産的な水掛け論に発展する。もし五月病にかかったかなと思ったら、口頭でもメモでも、あるいは、メールでもいいから、できるだけ頻繁に連絡することを心がける。

困った時は早めに上司に〝相談〟

笑顔で迎える上司

 さらに、仕事に行き詰まったり、ミスを犯したり、壁を感じたりすることも、五月病の原因になる。

 仕事を前にして頭を抱え込んでしまったら、思い切って上司に相談することだ。たとえば、新しい仕事に取りかかるときは、「指示をいただいた件について、仕事の目的と目標を確認したいのですが…」とか、「このような内容と手順で進めたいと思いますので、相談に乗っていただきたい」などと、上司と話し合って齟齬がないようにする。独りよがりで仕事を進めてしまうと、指示内容と違ってしまったり、非常に効率が悪いやり方になってしまったなど、後で問題になることが多い。事前に相談してから仕事を始めよう。

 また、仕事の中間で状況を報告し、不明な点を話し合って解決してから前に進めることも必要だ。たとえケアレス・ミスであっても、場合によっては深刻なトラブルに発展することもある。いずれにせよ、事前と中間のコミュニケーションが図られていれば、仕事のミスも予防できるだろう。

 もちろん、問題が起こってしまった場合に、そのまま放置するとか、自分だけで処理すると、さらに傷口を広げてしまう。きちんと上司と相談をして、早めに問題を解決することだ。抱えている問題が解決できれば、気分も爽快になる。

 少し仕事に慣れてくると、五月病にかかりやすい。同じことの繰り返しでマンネリに陥ると、仕事へのモチベーションが下がる。また、仕事への期待と現実のギャップに悩まされて失望感を味わうこともある。そんなときは、「ちょっと悩み事があって、山本課長に折り入って相談があるんですが…」と相談をもちかけよう。上司としても、面と向かって名指しで言われると、「うん、いいよ」と気持ちよく聞いてくれるはずだ。

 さらに一通りの仕事がこなせるようになると、ステップ・アップが求められる。今までのやり方が通用せず、どのように手をつけていいかわからない。仕事に壁を感じた場合は、気持ちが内向きになり、自分の価値観だけで物事を一面的に捉えてしまう。こういうときは、上司だけでなく、先輩や同僚、あるいは、職場以外の第三者に相談することがおススメである。

 相談することによって、相手から解決策を授けてもらえることもあるし、多面的な視点を与えられることもある。それに、相談の話し合いをすることによって、自分の中で新たなアイデアを発見することもある。相手と話すことで解決策を見つけることが、五月病の特効薬だ。

 

著者プロフィール

八幡 紕芦史(やはた ひろし)

経営戦略コンサルタント
アクセス・ビジネス・コンサルティング(株)代表取締役、NPO法人国際プレゼンテーション協会理事長、一般社団法人プレゼンテーション検定協会代表理事。大学卒業とともに社会人教育の為の教育機関を設立。企業・団体における人材育成、大学での教鞭を経て現職。顧問先企業では、変革実現へ、経営者やマネジメント層に支援・指導・助言を行う。日本におけるプレゼンテーションの先駆者。著書に『パーフェクト・プレゼンテーション』『自分の考えをしっかり伝える技術』『脱しくじりプレゼン』ほか多数。

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