相手を動かす話し方 第7回 マスコミの取材に答えるポイント

NEWキャリア

2019.07.31

相手を動かす話し方
第7回 マスコミの取材に答えるポイント

(月刊『ガバナンス』2008年10月号)

 田中君は集会所の建て替え工事にかかわる住民説明会で、綿密な事前準備が功を奏してか、説得力のあるプレゼンテーションを行うことができた。プレゼンテーションの後、地元のケーブルテレビ局の記者から声をかけられ、後日、集会所の件について取材をしたいとの申し入れを受けた。

 田中君は、職場に戻って上司と相談したところ、住民の理解を得る絶好の機会だから快く取材を受けるように言われた。ところが、これまでマスコミの取材を受けた経験もなく、どのように質問に答えていいか不安に思い始めた。

 

質問を要約して投げ返す

記者による取材

 取材でいきなり質問をされ、それに的確に答えるのは簡単なことではない。あたふたしたり、緊張してあがってしまったり、あるいは、質問の意味を取り違えてとんちんかんな答えをしたりなど、恥ずかしい思いをすることもある。単に恥ずかしい思いだけならいいが、言ってはいけないことを口走ってしまうとか、相手に間違って理解されてしまう恐れもある。もし、それが、そのまま公になってしまうと、取り返しがつかない事態を招く。

 このような事態に陥らないためにどうすればいいだろうか。いきなりの質問に、とっさに答えることは難しい。きちんと手順を踏んで答えることだ。答える手順を知っていれば、インタビュー取材だけでなく、職場や日常の場面でも円滑なコミュニケーションを行うことができる。住民からの質問に的確に応じることができるし、上司からの鋭い質問にも正しく答えられるようになる。

 まず、相手から質問を受けたら、質問者に目を合わせて集中して聴くことだ。ひと言も聞き漏らさないように聴く。もちろん、質問内容を正しく理解するためだが、相手に集中して聴いていることを示す効用もある。「うん、うん」と口では言いながらも、目線が合っていないとか、書類を見ている状態であれば質問者は不安になる。身体で「集中して聴いています」というメッセージを伝えることが必要だ。

 集中して質問を聴き、次に、質問内容を要約して相手に投げ返す。多くの人は質問されると、すぐに答えなければならないと思い、焦って何とか答えようとする。質問を受けたら、一呼吸おこう。たとえば、「…というご質問ですね」などと質問の内容を要約する。あなたの理解が正しければ、「そうです」と返ってくる。逆に、理解が違っていれば、「いや、そうではなく…」と質問を繰り返してくれる。

 もし、質問の内容が理解できなければ、わかったところまで要約し、「…ということだと思うんですが、ご質問がよく理解できませんので、もう一度…」と素直に聞き返すことだ。誤解したまま答えると後で痛い目にあう。相手の質問を要約して投げ返すことにより、質問者は質問内容がしっかり理解されたと思う。そうすれば、相手は好意的な態度で、その後の答えを聴こうとする。理解される相手に敵意をもつ人はいない。

質問を褒める

的確な受け答えをする女性

 次に、質問を褒めよう。「いいご質問ですね」などと。ただ、いつも「いい質問だ」、「いい質問だ」と褒めていると、質問者は逆にバカにされているように思う。そこで、ボキャブラリーを駆使して、「非常に重要な点ですね」とか、「とても大切なことです」とか、「ユニークな観点からのご質問ですね」などと、表現豊かに褒めることだ。

 人は質問をすることに少なからず抵抗感をもつ。「こんなつまらない質問してもいいんだろうか」とか、「質問をして恥をかくかもしれない」などと。特にセンシティブな問題については、「相手の気分を害するのでは…」などと思う。

 質問をすることが仕事の人、意地悪な質問をしようと企んでいる人、このような人以外は、質問するには少しばかりの勇気が必要だ。たとえば、おそるおそる質問をしたところ、いい質問だと言われた。そうすると、もっといい質問してみようと思う。つまり、質問を褒めることによって、コミュニケーションが活性化するわけだ。

 質問は、〝不明な点を明らかにするもの〟とだけ考えているなら、それは甘い。質問という名の下に自分の意見を言いたい。そんな質問者もいる。たとえば、「その案は再考すべきだと思いませんか?」などは、再考すべきだと言いたい質問だ。あるいは、質問の力を借りて相手を陥れたい。そんな質問者もいる。たとえば、「それでも、その企画を検討すべきだとおっしゃるんですか?」などは、その案は全く検討に値しないものだと、こき下ろしたい質問だ。これらの質問を、〝不明な点を明らかにしたい質問〟と同じように対応すると、その先は悲惨な状態に陥る。

 取材などで尋ねられる質問は、常に好意的であるとは限らない。質問をして問題を暴こうとか、足下をすくってやろうなど、トゲのある質問も多い。たとえ、このような質問であっても、手順を踏んで答えることだ。質問内容を要約して投げ返す。そして、質問を褒める。腹の中が煮えくりかえっていようが、質問を褒めることを忘れてはいけない。

 まず、「この案をもう一度、考え直すべきかどうかというご質問ですね」と要約して投げ返す。そして、「そうですね、おっしゃる通り、初心に返って考え直すことも大切なことだと思います」と褒める。そうすれば、ファイティング・ポーズで質問した相手のガードも、少しは下がるというものだ。

結論から答え最後に確認を忘れずに

身構えながら取材に応じる様子

 たとえば、取材者から「個人情報の保護については、大丈夫なんですか?」と質問をされたとしよう。もし、いきなり答えようとすると、「その点については、日頃から職員一同、心して取り組んでおりまして…、責任者もことあるごとに重要である旨、職員に訓辞しておりますが…」などと、背景や経緯を長々と話し始める。質問者は、その間、何を言いたいのだろうかと推測しながら、話を聴かなければならない。

 答えは結論から話し始めることだ。「その点についてはご安心下さい」と答え、その上で、必要に応じて背景や経緯などについて話せばいい。ただ、尋ねられていないことまで答える必要はない。調子に乗ってつい口を滑らしてしまうこともあるから注意が必要だ。特に、インタビュー取材などでは、質問の範囲のみに答えるようにする。

 それに質問の種類によっては、答えてはいけないものもある。自分の担当外のことや専門外のことは、きっぱり、「それはわたくしの担当外ですから…」と答えることだ。

 質問を受けたら、集中して内容を聴き、要約して投げ返し、質問を褒め、そして、結論から答える。答えた後は、「これでよろしいでしょうか?」と確認しておくこと。このような手順で進めれば、取材にも的確に答えることができる。

 

著者プロフィール

八幡 紕芦史(やはた ひろし)

経営戦略コンサルタント
アクセス・ビジネス・コンサルティング(株)代表取締役、NPO法人国際プレゼンテーション協会理事長、一般社団法人プレゼンテーション検定協会代表理事。大学卒業とともに社会人教育の為の教育機関を設立。企業・団体における人材育成、大学での教鞭を経て現職。顧問先企業では、変革実現へ、経営者やマネジメント層に支援・指導・助言を行う。日本におけるプレゼンテーションの先駆者。著書に『パーフェクト・プレゼンテーション』『自分の考えをしっかり伝える技術』『脱しくじりプレゼン』ほか多数。

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