会議の技術

八幡紕芦史

会議の技術 第12回 目的別に見る会議の注意点

NEWキャリア

2019.08.07

こうすればうまくいく!会議の技術
事前準備からファシリテーションまで

第12回 目的別に見る会議の注意点

月刊『ガバナンス』2010年3月号

 田中君は、これまで会議の効率的な進め方について、多くの考え方や技術を学び、そして、日々の仕事で実践してきた。

 そこで、学んだことを振り返り、まとめてみようと思った。まず、会議を開催する時の注意点をノー卜に書き出してみた。ところが、途中で田中君はひとつの疑問にぶつかってしまった。

 それは、「会議を開催する目的によって、それぞれ注意するべき点が異なるのではないだろうか」ということだ。田中君は、ノートを閉じて考え込んでしまった。

 

ムダの多い報告会議

 きっと、世の中で一番多いのが報告を目的とした会議だろう。いわゆる「報告会議」というやつだ。たとえば、上司を前にして、職員が前月の実績や仕事の進捗を報告する。そして、一通りの報告が終われば、上司がコメントする。

 上司は、一応、「よくできたね」と褒めはするが、その後が怖い。「これはどうなっているのか」とか、「詰めが甘い」とか、「何やってるんだっ!」と、お叱りを受ける。それを聞いている順番待ちの参加者は、「またか」と思いながら、下を向いて耐えている。

 報告会議は、多くの場合、「定例会議」と名前を変えて定期的に開催される。つまり、お小言を頂戴する会議が、定期的に開催されるわけだ。

 果たして、このような会議は生産性が高いだろうか。単に報告するだけなら、わざわざ会議を開く必要はない。たとえ、報告内容にコメントするとしても、全員が集まる必要もない。文書で報告し、それにコメントを書いてもらえば、それで事は足りる。そうすれば、他の職員が耐えて待つムダな時間も節約できる。

 もし、それでも報告会議を開催したければ、報告すべき内容を文書にして、あらかじめ参加者に配布しておくことだ。そして、全員が報告内容を理解していることを前提に、共通する問題を取り上げ、会議で話し合う。個別の報告と問題については、個別に話し合えばいいのであって、全員を巻き込むことはない。

 このように全員の問題と個人の問題を切り離せば、定例会議を開催する必要性がなくなる。

 この報告会議を改革するには、まず、定例会議をなくすことだ。定例会議ほどムダなものはない。マンネリ化しつつも惰性で開催しているのではないだろうか。

 報告会議は、それぞれの仕事の担当責任者が、必要に応じて開催することだ。そうすれば、報告会議も新鮮なものになる。

決まらない意思決定会議

 本来、会議というものは、何かを決めるのが主旨であって、すべての会議は「意思決定会議」と言ってもいいだろう。ただ、時として、「戦略会議」などと物々しい名称の会議が開かれる。中身をみると、お偉いさんが一方的に訓辞を垂れるだけというケースが多い。それは会議とは呼ばず、これからは、「講演会」と名称を変えた方がいい。

 多様な意見を集め、議論をし、決定する。決定すれば仕事は前に進む。しかし、なぜ多くの会議は意思決定がされないのだろうか。

 議長が、「何か意見はありませんか?」と言っても、シーンと静まりかえる。「どなたか反対の意見をおもちの方は?」と言っても、シーンと静まりかえる。

 これでは何も決まらない。決まる以前の問題だ。それぞれの参加者が、会議に向けて準備し、自分自身の意見をもち、そして、会議で勇気をもって発言する。そんな会議でなければ何も決まらない。

 議論が煮詰まった頃に、議長が「では、A案に決めたいと思いますが、いかがでしょうか」と決定するよう提案する。しかし、これまでガヤガヤやっていた会議室が水を打ったように静かになる。

 話し合いは、ある意味、無責任でいられる。言いたいことを言っていればいい。特に問題を提起する意見であれば、波風は立たない。

 しかし、一旦、AかBか、決断を迫られると、多くの参加者は途端に無口になる。責任をもちたくないからだ。それは、会議の問題ではなく、本人の生き方の問題になってくる。

 決定するとは、捨てることだ。いずれかを選択することは、他方を捨てることに他ならない。捨てる勇気があれば、決定することができる。ただ、蛮勇をふるって決めるのでは、先が思いやられる。決定できないのは、決定することを阻害する要因があるからだ。それは、決定基準がないこと。たとえば、効率性を重視するのか、効果性を重視するのか、決定するための軸となる基準がないと、堂々巡りになる。

 決定できないときは、「では、決定するための基準について話し合いをしましょう」と提案する。そうすれば、決定することは容易になる。ただ、決定基準さえも決められないなら、会議は一旦中断し、日を改めた方がいい。

無責任なブレーンストーミング会議

 意思決定会議が、ときとして、会議の途中で「ブレーンストーミング会議」に変身することがある。たとえば、議長が意見を求めても、参加者の反応が鈍い。ポツリポツリと意見が出てくるだけとか、参加者は無理矢理に意見を出そうとしているとか、あるいは、ひとりの意見に偏ってしまっているなどの場合だ。

 そんなとき、議長は、「活発に意見が出ませんので、ブレーンストーミングをやりましょう。どんなことでもいいですから、アイデアを出してください。板書しますから…」と提案する。

 しかし、多くの場合、無責任なアイデアが多く出されるにすぎない。出された意見を前にして、議長は途方に暮れる。そこで、「アイデアを分類してみましょう」と提案する。ところが、分類してみると、「そんなこと、最初からわかっていたことだ」と失望する。

 途中で変身しないブレストを目的とした会議もある。会議の主催者から、あらかじめ、「ブレスト会議を行います」と通知される。

 参加者は、ブレスト会議と聞いた途端、「その場でアイデアを言えばいいんだ」と安心する。そして、何の準備もなく、手ぶらで会議に参加する。そして、そのときに閃いたアイデアを口から出す。本来、ブレーンストーミングとは、他からの刺激を受けて、さらなるアイデアを抽出する作業だ。つまり、元になるアイデアがあることが前提になる。頭の中が空っぽでは話にならない。

 ブレスト会議を開催するなら、参加者に事前の準備を課すことだ。たとえば、「このテーマに対して、各自10個以上のアイデアを準備し参加してください」などと。

 そして、参加者が準備してきたアイデア以外のアイデア、つまり、創造的なアイデアが多く抽出されれば、ブレスト会議は成功だ。

著者プロフィール

八幡 紕芦史(やはた ひろし)

経営戦略コンサルタント
アクセス・ビジネス・コンサルティング(株)代表取締役、NPO法人国際プレゼンテーション協会理事長、一般社団法人プレゼンテーション検定協会代表理事。大学卒業とともに社会人教育の為の教育機関を設立。企業・団体における人材育成、大学での教鞭を経て現職。顧問先企業では、変革実現へ、経営者やマネジメント層に支援・指導・助言を行う。働き方改革への課題解決策として慣習の”会議”から脱皮を実現する鋭い提言で貢献。著書に『会議の技術』『ミーティング・マネジメント』ほか多数。

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