相手を動かす話し方 第11回 悩んでいる人を励ますには?

NEWキャリア

2019.08.07

相手を動かす話し方
第11回 悩んでいる人を励ますには?

(月刊『ガバナンス』2009年2月号)

 田中君は、最近、同僚の鈴木君の様子がどうもおかしいと気づき始めた。何やら元気がなく、落ち込んでいるときもある。鈴木君は保険料の徴収を担当している。景気の悪化にともなって滞納件数も増え、窓口での対応に苦労しているようだ。

 そこで、田中君は鈴木君を励ましてあげようと、昼休みにつかまえて昼食を一緒にとることにした。いろいろと励ましの言葉をかけてみたが、鈴木君は生返事をするだけで黙々と食事をしている。さて、どうすれば鈴木君を励ますことができるのだろうか。

 

相手の悩みを否定しない

思わずため息する女性

 人は誰かが落ち込んでいるとき、解決のアドバイスをして励ましてあげたいと思う。しかし、下手にアプローチすると、励ます方も励まされる方もストレスを抱えてしまうことがある。

 たとえば、AさんとBさんの次のようなやりとりを見てみよう。

A :「最近、元気ないね」 B :「いや、そうでもありませんが」
A :「何か悩んでいるの?」 B :「いえ、特に悩んでいることはありません…」
A :「そんな風には見えないけど」 B :「大丈夫です」
A :「本当に大丈夫かい?」 B :「いえ、何もありませんから」
A :「いや、何もないわけがないだろう」 B :「ほっといてくださいよ!」


 と、こんな具合に、そのうちケンカになってしまう。

 悩み事を抱えて落ち込んでいる人にアプローチするのは非常に難しい。問題解決のアドバイスを押しつけ、うまくいかなかったりすると、逆恨みされることもある。基本的には、本人が悩み事を打ち明けられる人間関係でなければ、何を言っても押しつけになってしまう。日頃から、「元気そうだね」とか、「がんばってるね」などと、気にかけてあげることが大切だ。そうすれば、相手も相談しやすい。

 たとえば、「最近、自分はこの仕事に向いていないと思うんだけど…」と打ち明けられたとしよう。そんなとき、元気になるようにと、「いや、そんなことはないよ。キミは十分能力もあるし…」などと下手に相手の悩みを否定してはいけない。たとえ、「そんなことはない」と言われても、本人にとっては何の解決にもなっていないからだ。

 あるいは、「最近、いろいろとトラブル続きでね、ちょっとストレスが溜まって…」、と言われたとしよう。そんなとき、「仕事にトラブルはつきものだから、ダメ、ダメ、そんなことでめげていたら、ここで元気を出して…」などと、勢いで励まそうとしてもいけない。他人からみると取るに足らない問題で悩んでいるように見えても、本人にとっては深刻な問題だ。些細なことだと思っても、まず、本人の話をしっかり聴いてあげよう。

徹底して相手の話を聴く

傾聴する女性社員

 もし、本人が「この仕事に向いていない…」などと打ち明けたら、なぜ、そう思うのか、話をじっくり聴くことだ。ただ、本人にとっては、自分の悩みを積極的に話すのは抵抗があるだろう。そこで、「と言うと?」とか、「それで?」とか、「たとえば?」などと話を促す。そうすれば、「…というのは、自分は人に強く言えない性格だから、窓口の対応は難しくて…」と話しやすい状況になる。

 あるいは、「どうして、そう思うの?」とか、「何かあったの?」とか、「それって、どういうこと?」などと質問を投げかけて話を引き出す。そうすれば、「うん、その理由はね、自分はあまり外向的な性格じゃないから、人と話をするのが苦手で…」などと話が続いていく。重要なことは、徹底して相手の話を聴くことだ。相手の状況をしっかり理解しないと、間違ったアドバイスをすることもある。それに、相手は話をすることで、悩みを解決したり、ストレスが解消されることも多い。

 相手が話し始めたら、しっかり相手の目を見て、注意を逸らさず聴くこと。もし、あなたが相手の目を見なかったり、他に注意を逸らしたりすると、「ああ、この人は真剣に聴いてくれないんだな」と失望する。そして、話を途中で止めてしまう。相手が真剣に悩んでいるなら、真剣に聴いてあげなければならない。そして、話しやすいように、「なるほど」とか、「そういうことね」とか、「わかるよ」などと相づちをうちながら、相手の立場に立って聴く。

 たとえ話の途中で反論したくなっても、肯定的に受け入れることが大切だ。たとえば、「いやあ、課長のやり方が強引で、それにはついていけないから…」などと本人が言っても、「課長のやり方は強引ではなくて、仕事としては当然…」などと反論してはいけない。ここでは、相手とランデブーすることが大切だ。「そうか、課長のやり方が強引なんだ。それで、ついていけないか…。なるほどねえ」などと、相手と同じ気持ちを共有する。あるいは、「窓口に来た人の態度が悪くて、頭にくることがあってね」に対して、「たとえ態度が悪くても、きちんと対応しなきゃ」などと、反論するのも控えよう。「わかる。それは頭にくるよね」と、相手の気持ちに寄りそうようにする。

自分で判断させる

励ます女性職員

 相手の話を聴いているうちに、問題解決の方法を見つけて、何かアドバイスをしてあげたいと思うことがある。たとえば、「どのように窓口で対応するか、自分なりのマニュアルを作ってみるといいよ」とか、「その分野について、しっかり勉強することが解決になると思う」などと。ただ、自分の意見を押しつけてはいけない。

 きっと、第三者からみれば、悩みを解決するのは簡単なことだと思う。しかし、本人は、「いや、それができれば悩まないんだけどね」とか、「それは無理だと思う」とか、「そう簡単なことじゃない」などと反論する。そうなると、「いや、簡単だよ」、「そう言うけれど、実際には難しい」などと、言い合いになってしまうこともある。あくまでも、本人が解決の方法を見つけられるよう仕向けてあげることが大切だ。第三者は解決のヒントを与えることができても、最終的に判断し行動するのは本人しかいない。もし、本人が話をしている中から、「もう少し気持ちに余裕をもって、相手の立場でコミュニケーションしよう」とか、「それならば、この分野についてはもう少し勉強して、知識を増やすことが大切かな」などと自ら解決方法を見つけたら、しめたものだ。

 相手が否定的な態度であれば、「こうすればいい」とか、「ああすればいい」と言っても暖簾に腕押し状態だ。肯定的な考えをもったときに、「キミならできるよ」とか、「頑張ってやってみようよ」などと、相手を励ましてあげることができる。

 

著者プロフィール

八幡 紕芦史(やはた ひろし)

経営戦略コンサルタント
アクセス・ビジネス・コンサルティング(株)代表取締役、NPO法人国際プレゼンテーション協会理事長、一般社団法人プレゼンテーション検定協会代表理事。大学卒業とともに社会人教育の為の教育機関を設立。企業・団体における人材育成、大学での教鞭を経て現職。顧問先企業では、変革実現へ、経営者やマネジメント層に支援・指導・助言を行う。日本におけるプレゼンテーションの先駆者。著書に『パーフェクト・プレゼンテーション』『自分の考えをしっかり伝える技術』『脱しくじりプレゼン』ほか多数。

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