会議の技術 第1回 その会議は本当に必要か?

NEWキャリア

2019.06.27

こうすればうまくいく!会議の技術
事前準備からファシリテーションまで

第1回 その会議は本当に必要か?

月刊『ガバナンス』2009年4月号

 新任の課長が赴任してきて以来、田中君はちょっとした悩みを抱えている。それは、以前より会議の数が増えたこと。今週に入って、すでに5回も会議に出席した。特に、今日は午前中に1回、午後に2回も予定されている。

 田中君は今日中に片づけなければならない仕事を抱えており、切羽詰まった状態だ。できれば会議に出席したくない。会議に出席する代わりに、目の前の仕事を片付ける時間に充てたい。その方がよっぽど生産的だと思っている。今日も会議室へ向かう田中君の足取りは重かった。

 

会議は無法地帯

 会議といえども発言する機会もなければ、みんなで議論するわけでもない。何かが決まるわけでもなく、上司から一方的な話があるだけ。会議の前には、気が遠くなるような資料を準備するよう指示される。会議で資料が活用されるならまだしも、参照もせず出席者に配布してそれで終わりということもある。何のための資料かと疑問に思う。

 それに、会議は時間通り始まったことがない。遅刻者を待つ手持ちぶさたの時間ほどムダなものはない。何人か集まったところで、会議は見切り発車する。時間のムダだとわかっていても、だれも遅刻者に何も言わない。

 さらに、何のために集まったのか、何を話し合うのか、何を決めるのか、会議の目的も目標も、議題さえもわからない。暗闇の中に放り込まれるようなものだ。最初のうちは緊張して会議に集中するが、徐々に眠気が襲ってくる。

 そのうちに、手帳を取り出して内職を始める職員、配布された資料にいたずら書きを始める職員、隣とひそひそ雑談を始める職員など、会議は無法地帯と化す。議長が、「何か意見はありませんか」と尋ねるが、だれも反応しない。

 しばらくすると、いつもの決まった人が「それじゃ」と言って発言する。いったん話し始めると、これがまた長い。時計をみると、もうそろそろ終わりという時間だ。けれども、会議が終わる気配は微塵もない。次の約束が気になり始めるが、逃げ出すこともできない。

 終了予定時刻より30分遅れて、議長が、「それでは、そろそろ…」と言う。やっと終わったと思い席を立とうとするが、「ところで、次回は…」と、まだ続いていく。

 このような無法状態の会議では、生産性がおそろしく低い。会議の出席者数に時給を掛けて、そして、年間の会議の回数を掛ける。それに、資料作成準備の時間、会議室の賃料、光熱費、紙代、印刷代などを足せば、会議にかかる費用を計算することができる。

 会議は莫大な費用がかかっている。こんな生産性の低い会議をやめると、少しは税金も安くなろうというものだ。

時間と空間を共有する会議

 会議は人と人が同じ時間と空間を共有するという特性がある。他のコミュニケーションの形態とは異なった特徴があるはずだ。

 たとえば、文書や電子メールのやりとりは、同じ時間も空間も共有しなくてもコミュニケーションは成立する。コストをかけない方法だ。また、電話で話し合う方法は、同じ時間を共有しても、相手は目の前にいない。同じ空間を共有するわけではない。

 会議は複数の人たちの同じ時間と空間を共有するわけだから、その特性を活かしたコミュニケーションを行わなければならない。会議は人が集まるだけに、一番コストがかかるコミュニケーションの形態だ。

 会議でだれかが一方的に話をするだけなら、文書を配布した方がよほど効果的だろう。コストもかからず、時間の節約にもなる。それに、文書ならば何度でも読み返すことができるし、しっかりと記録に残すこともできる。

 人と人が対面すると、双方向のコミュニケーションが成立する。逆に、双方向のコミュニケーションを行わないなら、会って話をする必然性はない。他のコストのかからない方法を用いればいい。同じ時間と空間を共有する会議では、相手を目の前にして自分の意見を述べることができる。そして、その意見に他の人が反応することができる。つまり、議論が成立するということだ。

 もし、会議で上司が一方的に話をするなら、それは会議と呼んではいけない。むしろ、独演会と名称を変えた方がいいだろう。あなたが会議を開催する立場にあるなら、必ず「これについてご意見はありますか?」と尋ねよう。もし、会議に参加する立場にあるなら、「ちょっと、意見を言ってもいいですか?」と、遮ってでも発言する。

 それをしないならば、本来なら会議を中止すべきだ。中止する勇気がなければ無法地帯の会議に耐えるしかない。

創造的な結論を導き出す

「いつも同じ人が発言する」と文句を言う出席者は、考え方を改めた方がよい。文句を言う前に自ら発言すればいいだけだ。会議は意見を述べる場だと心得るべし。もし、何も意見がないというなら、仕事に対する姿勢を改めよう。真剣に仕事に取り組んでいるなら、必ず言いたいことがあるはずだ。

 よくある光景だが、議長が「これに対して、何か意見がありませんか?」と投げかけると、会議室は水を打ったようにシーンと静まりかえる。もし、このような光景がしばしば見られるなら、その会議は機能不全に陥っている証拠だ。直ちに中止した方がいい。

 会議の参加者は、賛成なら賛成、反対なら反対と自らの意思を表明する。そして、賛成の理由を、あるいは反対の理由を、堂々と述べることが参加者の責任だ。会議で終始黙っているのは、その責任を放棄していることになる。もし、その責任を放棄するなら、その場で即刻退場すべきだ。

 これもよくある光景だが、議長が「どなたか、反対の意見があれば…」と反論を促すと、また、会議室は静まりかえってしまう。たとえ反対だと思っていても、その場では言わない人も多い。

 言わない代わりに、会議終了後、水を得たように「あれじゃ、話にならないよね」とか、「あの考え方だと、うまくいかないと思う」などと、急に元気になる。これでは卑怯千万と言われても仕方がないだろう。

 ひとつの意見に対して、だれも反論しないなら、その組織は危険きわまりない。全員で崖っぷちに向かって行進しているようなもの。それを止めるのが会議での反対意見だ。意見に対しては、反論を求める。反論には反駁を求める。議論の中から新しいアイデアや考え方、あるいは、新しい方法ややり方を産み出す。このように丁々発止の議論が成立し、創造性が発揮されることが、本来の会議のあるべき姿だ。

 もし、そうでなければ、その会議は必要ない。

著者プロフィール

八幡 紕芦史(やはた ひろし)

経営戦略コンサルタント
アクセス・ビジネス・コンサルティング(株)代表取締役、NPO法人国際プレゼンテーション協会理事長、一般社団法人プレゼンテーション検定協会代表理事。大学卒業とともに社会人教育の為の教育機関を設立。企業・団体における人材育成、大学での教鞭を経て現職。顧問先企業では、変革実現へ、経営者やマネジメント層に支援・指導・助言を行う。働き方改革への課題解決策として慣習の”会議”から脱皮を実現する鋭い提言で貢献。著書に『会議の技術』『ミーティング・マネジメント』ほか多数。

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