会議の技術 第5回 参加者に意見を言わせるために

NEWキャリア

2019.07.29

こうすればうまくいく!会議の技術
事前準備からファシリテーションまで

第5回 参加者に意見を言わせるために

(月刊『ガバナンス』2009年8月号)

 プロジェクト・リーダーの田中君に、ひとつの悩みがある。それはプロジェクト・ミーティングをファシリテートすること。

 田中君は、できるだけメンバーから多くの意見を引き出し、仕事に反映させたいと考えている。しかし、「何か意見はありませんか?」と投げかけても、シーンと静まりかえってしまう。しかたなく指名をして意見を求めるが、「いえ、特に…」と答えたきり黙ってしまう人がほとんどだ。

 さて、どうすれば、メンバーに意見を言わせることができるのだろうか。

 

役割と期待を表明する

 会議の席で参加者が意見を述べない理由はいくつかある。

 たとえば、人前で意見を言うのは恥ずかしい。間違っていたらどうしようと不安になる。意見を言うと出る杭になるかもしれない。急に言われても意見が思いつかない。そもそも意見を言う必要性を感じない。その他にも、隣の人と相談する時間がほしいなど、信じがたい理由もある。それに、多くの参加者は、「別に自分が発言しなくても…」と思っている。

 もし、これらの理由をそのままにしておくと、いつまでたっても、会議は本来の議論の場にはならない。

 参加者に意見を言わせるためには、会議の冒頭で、参加者に役割を理解させ、期待を表明することだ。人は自分の役割を理解し、期待されていることを認識すると、それに応えようと努力する。

 たとえば、担当している仕事と関連づけて、意見を期待していることを示してみよう。「山本さんは住民と接触される機会が多いようですので、住民の立場からのご意見をいただきたいと思います」とか、「鈴木さんは経理を担当されていますので、予算の消化という観点から、ご発言いただければと期待しています」などと。

 あるいは、参加者の得意分野や能力を褒めながら、意見を期待していることを述べてみよう。「山田さんは技術に精通されているので、テクニカルな問題について発言していただきたいと思います」とか、「中田さんはこの分野について経験豊富ですので、ぜひ、経験者としての意見をいただければと思います」などと。

 このように、参加者は自分の役割と期待がわかれば、「そうか、そんな立場で発言すればいいんだ」とか、「なるほど、そのように期待されているんだ。それなら、それに応えよう」などと、会議での役割を遂行しようと努力する。

 会議の冒頭で何も言わずに、いきなり、「本件に関して、何か意見はありませんか」と投げかけるから、いろいろな理由をつけて参加者は黙ってしまう。これからは、会議の冒頭で目的と目標を示した後、参加者の会議における「役割と期待」を表明しよう。

具体的に投げかける

 参加者が会議における自らの役割と期待されていることがわかると、発言しようという気持ちになる。そして、「このたび、庁舎の補修を行うことになりました。ついては、本件について、皆さんから何かご意見はありませんか」と、投げかけたとしよう。

 ところが、「えっ、それって、どういうこと?」とか、「そんな話、あったっけ?」などと思われると、参加者からの意見は期待できない。会議で参加者が意見を言うためには、それに必要な情報をもっていなければならない。そこで、会議が始まる前に、事前情報を与えておくことだ。開催通知に書類を添付し、目を通すように要請する。

 たとえ事前に要請しても、何の準備もせずに出席する輩がいるから、会議の最初の部分で要約のプレゼンテーションを行う。もちろん、要約程度に止めておくことだ。もし、そこで新たにすべての情報と与えると、その後は、だれも事前に書類に目を通しておこうとは思わない。それに時間のムダだ。

 参加者に必要な情報をインプットした後、「では、本件について、何か意見がありますか」と投げる。

 しかし、これでは、参加者はどのような意見を述べればいいか、わからないはずだ。抽象的に投げかけると、参加者からは意見が出ない。たとえ意見が返ってきても、抽象的な内容になる。抽象論を戦わせても、議論は噛み合わない。

 そこで重要なのは、具体的な質問を投げかけることだ。たとえば、「この補修作業の進め方に対して、ご意見はありませんか?」とか、さらには、「この進め方にヌケやモレがないか、どなたかご意見はありませんか?」などと、できるだけ具体的な質問をする。そうすれば、期待する意見が返ってくるだろう。

議論の観点と範囲を示す

 たとえば、職場で深刻な問題が発生したとしよう。会議を開いてその問題について議論をしたい。会議では、取り急ぎ発生した問題の他への影響について意見を求めたい。

 そこで、「この問題について、何か意見はありませんか?」と投げかけた。ところが、「その問題は、確認を怠ったことが原因だと思います」という期待はずれの意見が返ってきてしまった。その意見を受けて、他の参加者が、「いや、この問題は、そもそも職員の意識が低く、マネジメントの問題で…」とか、「そうではなく、元はと言えば、組織体制に甘さがあって…」などと、組織の問題にまで話が広がってしまった。

 こうなると、議論を収拾するのは至難の業だ。このようなすれ違いが起こったのは、議論の観点や範囲を示さずに、漠然と参加者の意見を求めたことが原因だ。

 これを避けるためには、たとえば、議論の観点を示して、「発生した問題は、どのような影響があるでしょうか。どなたか意見はありませんか?」と投げかけることだ。

 そうすれば、「そうですね。この問題は、今後の職員の意欲に悪影響を与えるかもしれません」とか、「この問題は、住民のクレームに発展する可能性があります」などと、期待通りの意見が返ってくる。

 それから、議論の範囲を示して質問を投げかけることも大切だ。そうでないと、「話は変わりますが…」と、確信犯的に話題を逸らす輩が出てくる。そうなると、会議はあらぬ方向に行ってしまう。それを避けるためには、たとえば、「発生した問題について、対外的にどのような影響があるか、範囲を限定して意見を求めたいと思います」などと、意見の範囲を絞り込む。

 そうすれば、「もし、この問題が続くなら、住民サービスの低下につながるでしょう」とか、「事務処理が滞って、窓口が混乱することが危惧されます」などと、期待した意見が返ってくる。

「参加者は意見を言わない」と、発言しないことの責任を参加者に転嫁してはいけない。発言できる環境を整えることが重要だ。また、「的はずれの意見だ」と参加者を批判してもいけない。どのような意見を求めているか明確にすることが先決だ。

著者プロフィール

八幡 紕芦史(やはた ひろし)

経営戦略コンサルタント
アクセス・ビジネス・コンサルティング(株)代表取締役、NPO法人国際プレゼンテーション協会理事長、一般社団法人プレゼンテーション検定協会代表理事。大学卒業とともに社会人教育の為の教育機関を設立。企業・団体における人材育成、大学での教鞭を経て現職。顧問先企業では、変革実現へ、経営者やマネジメント層に支援・指導・助言を行う。働き方改革への課題解決策として慣習の”会議”から脱皮を実現する鋭い提言で貢献。著書に『会議の技術』『ミーティング・マネジメント』ほか多数。

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