『小倉昌男 経営学』から経営について考える

NEWキャリア

2019.04.19

第1回 予算編成本格化前に 経営についてじっくり考える

『地方財務』2018年9月号

今月の本『小倉昌男 経営学』小倉昌男 著

 突然ですが皆さん、本を読んでいますか?「ガンガン読んでいるよ」という人は、少数派かもしれませんね。電車に乗ると、ほとんどの人がスマホをいじっています。スマホを見ていないと罰せられるのか、と思うくらいの割合です。本を読んでいる人はほとんど見かけません。

 この流れは止められないのかもしれませんが、「地方財務」を読んでいる皆さんには、是非、本を読んでいただきたいと思います。本は知識を広げてくれるだけではなく、想像力の羽も与えてくれます。知らなかった世界に触れることができますし、ときに生き方・考え方を変える力も持っています。ネットのような速報性はありませんし、持ち運びが必要で、かさばります。それでも、本を読みませんか。

 今月から、財政課職員が読むと役立つと思う本を紹介していきます。紹介した本を読んで、実際に役立てていただければ最高ですが、これをきっかけに少しでも本の方を振り向いていただければ嬉しいです。

   *

 さて、夏休みシーズンが終わり、9月になりました。学校に子供たちの歓声が戻り、朝の電車にも高校生や大学生が帰ってきます。

 財政課にとって9月は、予算編成に向けての準備を始める時期だと思います。予算編成本番に突入してしまうと、どうしても目の前の課題を片付けることに専念しがちですから、あわただしくなる前のこの時期に、大局を見る目を養っておきたいところです。

 そこでお勧めする本が、小倉昌男さんの「経営学」です。著者の小倉さんは、ヤマト運輸の元社長であり、「宅急便」の生みの親といわれている方です。今や当たり前過ぎるくらいに生活に溶け込んでいる宅配便サービスですが、小倉さんが始めるまではどの会社も全く手掛けていませんでした。

 この本には、小倉さんの会社経営に関する思いや信念が書かれています。「経営学」というタイトルですが、わかりやすく実践的な内容であり、財政運営を行う上でも、大いに参考になると思います。

学びポイントその1:柔軟性

 トップに立つと、周りの人の意見を聞かなくなる人が少なくないようです。「自分が一番偉いのだから、みんな自分の意見を聞けばいい」となってしまうのでしょうか。

 しかし、どんなに優れたトップでも、個人でできることには限界があります。自分の知る範囲、わかる範囲でのみ判断をしていると、その団体がどんどん偏った方向に行ってしまいかねません。

 小倉さんは、柔軟です。様々なセミナーに参加され、それを積極的に取り入れられます。また、アメリカなど他国の情報も積極的に取り入れ、日本流に変換します。

 さらに、業種を超えていろいろな企業の取組を参考にされます。宅急便に資源を集中する際に学ばれたのは、牛丼チェーンの吉野家だといいます。「牛丼ひとすじ」に特化したことによる強さを見て、ヤマト運輸も「あれもこれも」ではなく、宅急便に特化しようと考えられたのだそうです。

 財政課の職員も、柔軟性を持って仕事に向き合いたいものです。「金がないから無理」ではなく、「どうしたら実現できるか」を柔らかい頭で考えましょう。

学びポイントその2:明確な優先順位付け

 公共団体の仕事の範囲は、非常に幅が広いです。そして、それぞれの担当からすれば、自分たちの所管している業務が最も大切だということになります。財政課としては、予算の制約のなかで、全く違うジャンルの事業から、厳しい選択をしていかなければなりません。そんなとき、しっかりした評価の軸があれば、事業選択のよりどころとなります。

 小倉さんは、宅急便を開始するに当たり、「これからは、収支は議題とはしないで、サービスレベルだけを問題にする」と宣言されたそうです。また、労働災害を減らす取組に当たっては、「安全第一、営業第二」のポスターを貼らせたといいます。こうして目指すべき方向性を明確にしたことにより、社員の気持ちが一つになり、目標達成につながったそうです。財政課も予算編成が本格化する前に、目指すべき方向性をはっきりさせておきたいところです。それもわかりやすい言葉で。

学びポイントその3:信念を貫く

 その1の「柔軟性」と対極にあるようですが、小倉さんは、自らの信念は絶対に曲げません。相手がどれだけ大きくても、ことを構えることで不利な状況が生まれそうでも、信念を貫くためには、徹底的に戦います。

 有名なのは、運輸省を相手にした行政訴訟です。普通の経営者なら、理不尽に思っても、その後の影響を心配して泣き寝入りするところですが、小倉さんは一歩も引きませんでした。

 「監督官庁に楯突いてよく平気でしたね」と言われても、小倉さんは、「別に楯突いた気持ちはない。正しいと思うことをしただけである」と平然とされています。

 財政課職員も、予算編成のなかで「これはおかしい」と思うことが出てくるかもしれません。組織ですから、何もかもが自分の思うようにはなりませんが、自身の正義と照らし合わせてみて、どうしても納得できないようなら、徹底的に戦うことも必要でしょう。

学びポイントその4:明るさ

 本の最後に、「経営リーダー10の条件」という章があります。そこでは、「論理的思考」「高い倫理観」「時代の風を読む」など、小倉さんが考える経営者に求められる資質を10項目上げておられます。そして、このなかに「明るい性格」というものがあります。

 明るい性格の人はプラス思考の人が多く、経営者は常にプラス思考をする必要がある。つまり、明るい性格の経営者が成功しているのは、偶然ではないと主張されているのです。ご自身も元々は内向的だったものの、意識して明るく振る舞った結果、だんだん明るくなってきたとおっしゃっています。

 皆さんは、明るい態度で他部署に接していますか? 新規事業の相談に来た時、「金がない」「新しいことをやる時代じゃない」などと突き返していませんか? 将来を悲観し過ぎていませんか?

 お金を担当する以上、慎重になるのは当然だと思いますが、粗探しばかりされては、所管課もモチベーションが上がりません。明るくないと、いい予算編成になりません。

 役所と運送業では、業種業態が全く違いますし、小倉さんが第一線で戦っておられたころとは時代も変わっています。しかし、この本はそうした違いを超えて、読む人に訴えてきます。

 予算編成の濁流にのみ込まれる前に、この本を読んで組織を動かすことについて思いをはせてみてはいかがでしょう。

【今月の本】
『小倉昌男 経営学』小倉昌男 著
(日経BP社、1999年、定価:1,400円+税)

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