知っておきたい危機管理術

酒井明

自動化運転の未来と安全性

NEWキャリア

2019.04.15

知っておきたい危機管理術 第25回 自動化運転の未来と安全性

『地方財務』2016年4月号

 死亡交通事故の大部分が運転者の違反や過失に起因し、加害者としても、被害者としても、高齢者の事故が増えている。ブレーキとアクセルを間違えて通学中の子供の列に突っ込んでしまった。また、脳の病気を持った運転者が発症したためお店に突然、車が突っ込んできた等々。多くのメディアが報道しているこのような痛ましい事故をなくせないものかと思う。車が自動で周囲を監視し制御してくれたらと。そのような夢のような世界が現実のものになりつつある。自動化運転である。

自動化運転レベルは5段階

 自動化運転レベルは、5段階で考えられている。レベル0(運転支援なし)、レベル1(現時点でのレベルで特定の機能のみ自動化)、レベル2(複合機能の自動化で車両に搭載されている複数のシステムは互いに協調しながら車両制御を行う)、レベル3(半自動運転として特定の交通環境下で、システムが車両制御と周辺監視を行う)、レベル4(最終的な完全自動運転で目的地までの全行程においてシステムが車両制御と周辺監視を行う。ロボット運転又は無人自動運転となる)の5つである。

実証実験が進む

 政府は2014年6月に、自動走行を戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のテーマに選定し、通信技術を利用した自動化運転の実用化を目指すことを決定した。2020年オリンピック・パラリンピックを一里塚に自動化運転を実用化すべく、関係省庁が連携して技術開発等を推進している。

 神奈川県藤沢市では、本年2月から「特区」に指定された地区で夢の実験が始まった。2015年にテクノベンチャー企業等が設立した「ロボットタクシー社」が、「自動運転でスーパーに買い物へ」をコンセプトに実証実験を行っている。具体的には、タクシーでスーパーマーケットへ行きたいとき、携帯やスマホで自動運転車を呼び寄せて乗り込むと、目的のスーパーに着くことができるというものだ。こうなれば高齢化や過疎化に大きく貢献できる。

さまざまな課題も

 しかし、完全自動化を達成するまでには課題も多い。

 この3月に、米国グーグル社の実験車が接触事故を起こした。運転者が車内にいたということである。一部を自動で一部を人で運転するときの切り替えをどうするのか。また、自動化システムを使うべきなのに使おうとしないケースだったのか。反対に自動化システムを使ってはいけない人の運転のときに、自動化システムに任せてしまったのか。よくわからない。

 飛び出しや出会いがしらの事故をどう防ぐのか。予知行動や状況判断は、人工知能(AI)の世界である。チェスや将棋の名人に勝利した人工知能は、最近では碁の世界も制覇しようとしている。プログラミングではなく機械自体が自分で学ぶディープラーニングが注目されている。これらの目覚ましい技術は自動化運転の切り札となろう。

日米の取り組み

 我が国の取り組みはどうなっているのか。藤沢市での実証実験はあるが、主要メーカーは、無人運転については当面の目標ではなく、現時点では運転者がいる運転支援の高度化を目指し、将来的に、無人運転やロボット運転へ移行するとしている。

 すでに実用化されつつあるシステムとして、衝突被害軽減ブレーキ、一定速度で走行する機能及び車間距離を制御するACCシステム、路面が滑りやすいカーブを走行中に急激なハンドル操作やアクセル操作を行ったとき安定させる機能のECCシステム、駐車支援システム、ふらつき警報システム、レーンキープ支援システムがある。

 米国ではどうか。米国運輸省道路安全交通局(NHTSA)は2015年5月時点では無人運転技術は存在せず、無人運転に関する基準策定も時期尚早としている。米国グーグル社の自動運転車は、特別の訓練を受けた運転者が運転席にいることを条件に、いくつかの州で試験走行が認められているものであり、無人運転は認められていない。

社会環境面での取り組み

 自動化運転には、技術開発面のほかに社会環境面での取り組みが必要となる。

 事故を起こしたときの責任はどうなるのか。交通に関する条約として、道路交通に関するウィーン協定があり、第8条(運転車)で、「あらゆる走行中の車両か連結車両には運転者がいなければならない」「運転者は、いつ、いかなるときも、車両を制御できなければならない」として、無人運転、ロボット運転は、現時点では「特区」以外禁じられている。国連規則では時速10キロ以上の自動操舵を禁じており将来、法制面での改正が必要になってくる。

 このように、自動化運転は課題も多いが、高齢化、環境問題等の解決への未来の星でもある。

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特集:平成28年度地方財政対策

月刊 地方財務 2016年4月号

2016/04 発売

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酒井明

東京福祉大学特任教授

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