PICK UP「第20回早稲田大学世界デジタル政府ランキング2025」にみる世界と日本の現状と課題/岩﨑 尚子(早稲田大学電子政府・自治体研究所教授)

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2026.05.18

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PICK UP
「第20回早稲田大学世界デジタル政府ランキング2025」にみる
世界と日本の現状と課題


早稲田大学電子政府・自治体研究所教授
岩﨑 尚子

 2025年11月17日に早稲田大学電子政府・自治体研究所は「第20回早稲田大学世界デジタル政府ランキング2025」を発表しました。この調査は、デジタル先進国66ヵ国・地域を対象に、国民生活に不可欠なデジタル政府の進捗度を主要10指標で多角的に評価、分析し、世界のデジタル社会推進へ貢献しています。

 2025年のハイライトは次の通りでした。

●ランキング開始以降20年目にしてはじめて英国が1位に。2年連続10位圏外だった日本は9位で返り咲き。デンマーク、シンガポール、エストニアをはじめ人口小国の優位性が鮮明。

●AI開発競争が本格化し、行政サービスの質の向上や業務効率化に貢献するも社会変革を牽引する成果は不十分。気候変動、エネルギー・食料、災害への総合的対策は途上。将来的にはAI/データ重視政府にシフトの可能性。

●デジタル政府は行財政改革に加え、国民サービス優先の財政シフトへ。技術進化が激しい昨今、新技術への初期費用、保守運用費用の高騰で上位国も財政規律に苦慮。

●高度なサイバー・セキュリティのリスク拡大と生成AI、偽誤情報対応のリテラシー不足が深刻化。特に人材、技術両面の対策不足が先進国含め現実味を帯びる。

●中央と地方のデジタル行政に実装面の標準化等課題あり。国際、地域、構造的格差問題が継続。

●民主主義対権威主義、自国第一主義台頭で国家間の不協和音が表面化、世界で急速に進む高齢社会対応を含め、国連SDGsの進捗度に未達成の兆し。

●デジタル政府の進捗は経済成長との相関関係にある。また、デジタル資産並びにデータ重視の国家的経済活動と安全保障の両面に影響を与える。

 そして、2025 年度のランキング総合順位は表-1の通りです。

表-1 第20回早稲田大学世界デジタル政府総合ランキング2025
ランキング一覧①

 報告書では生成AIの実装が現実的になる一方、その「利活用」によって期待される「成果」にどれほど寄与しているかという点を検証する転換点になっています。本デジタル政府ランキングは20年目を迎え、ランキング当初より関心事であった「行財政改革」への貢献度に時間を要している潮流も否めません。効率性、生産性のみならず、信頼性、透明性の確保といったデジタル政府のガバナンスの根幹さえもAIなど技術進化のスピードに追い付けない状況で、早急な戦略修正が求められます。

 これまで20年にわたり世界のデジタル政府の進捗度を調査してきましたが、顕著なイノべーション事例も出現してきました。具体的には、DXとSNSの普及で市民や社会の電子参加及び市民の幸福度(ウェルビーイング)向上施策への要望が増加してきています。そして、ユーザー体験(UX)を重視した行政ポータルやアプリが増加しつつあります。

 また英国やオランダなどでは、障がい者や高齢者にも配慮したデジタル制度設計が進んでいます。一方、高齢社会をはじめ様々なデジタル格差解消にはヒト、モノ、カネの投入が不可欠ですが、必要とするところにその恩恵が十分行きわたっていません。さらにアクセシビリティ(接続性)だけでなく、AIリテラシーやデータ活用能力が新たな格差要因になっています。

 サイバー・セキュリティも対策強化が進んでいます。この問題は世界各国の共通関心事ですが、公共機関への攻撃が増加しています。米国やEUではゼロトラストモデルの導入が進み、セキュリティ分野等デジタル人材の育成も重要課題になっています。

 このほか、国連「SDGs2030」の達成目標は、残り4年となり目標の実現に向けてさらなる努力が求められています。デジタル政府については具体的な実現目標の対象ではありませんが、デジタル社会の形成こそSDGsが目指す平等や貧困の撲滅、格差解消等の観点で解決すべき社会課題になることから、その重要性は高まりつつあります。

 表-2は、世界デジタル政府ランキング・トップ10の20年間の歴史的推移です。

表-2 世界デジタル政府ランキング・トップ10の20年間の歴史的推移
ランキング一覧②

 次に、ランキングをスタートしてから20年を経て、日本の課題と構造的問題点に対し、次のように総括できます。まず、司令塔機関として創設され5年目に入ったデジタル庁は官民連携に基づく組織体制の構築の成果が見え始めています。政府クラウド共通化、マイナンバーカードの利便性、社会全体のデジタル改革そして各省庁連携の開発、運用が進みつつある点が評価対象となりました。しかしながら、重複投資の温床となる官庁間の縦割りの弊害の打破にむけて引き続き取り組む必要があります。さらに、効率性の観点では、利活用する職員の目線も視野に、サービス・アプリケーションの開発と実装にスピード感を持って進める必要があります。

 高齢化、人口減少、少子化の影響は年々深刻さを増しています。効率性追求、人手不足を解消するはずのAIを必要とする小規模自治体での財政、デジタル格差は、行政運営の機能や継続性に影響を及ぼします。一時しのぎの支援策ではなく、サステナブルに自治体をどう運営していくか、特に地方独自の課題解決が急務です。生成AIの導入により急増するサイバーセキュリティ・トラブル対策及び関連するリテラシー向上のための国民各層への啓蒙や教育訓練は引き続き不可欠です。

日本のデジタル政府への提言

 これらの課題をうけて、日本のデジタル政府の最優先事項として次の5項目の提言が挙げられます。

①過去20年間、東日本大震災をはじめとする多くの自然災害やCOVID-19など世界的リスクを乗り越えて、デジタル政策は急激な変革を遂げ、生成AIがさらに進化を加速させました。AIの効用とリスクヘッジをデジタル政策の課題に据え、慎重かつダイナミックに進めていく必要があります。将来のデジタル社会をどのように構築・展開すべきか、総合的に検討する時期に来ています。

②時系列分析から得た貴重な歴史的変遷を鑑みるに、経済成長とデジタル政府の進展との相関関係がみられます。これまでデジタル化の促進がGDP成長率や労働生産性の向上、さらに技術の社会実装が経済成長を牽引する要因となっています。デジタル政策の根幹を見直し、経済の構造的な底上げや持続可能な成長に直結する重要政策手段としての最適戦略を講じ、実装すべきです。

③理想の電子政府は行財政改革の中核です。現在の日本はAI革命によって、官庁のあらゆる無駄、非効率を排し、財政健全化実現目標を達成したい。そのためのビジョン、戦略、最適なデジタル投資が求められます。

④デジタル政府は将来AI、データ、DX、イノベーションが融合する第5世代AI―ロボット協働政府に発展していきます。そのための準備として実際の活動のシミュレーションなどを早期に策定する必要があります。

⑤最後に少子高齢化人口減少社会による“縮む日本”像から脱皮し「誰一人取り残さない、人間中心のデジタル社会」に向けて総合的かつグローバルな課題解決型国家を目指すべきです。

 詳細な報告書は当研究所のHP※)に掲載中の報告書にまとめています。報告書は、日本語版、並びに約300頁の英語版を公開しており、後者は国別評価レポートを含め各国の諸課題を多面的に分析しています。

※)早稲田大学電子政府・自治体研究所
https://idg-waseda.jp/ranking_jp.htm

 

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