寺本英仁の地域の“逸材”を探して

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寺本英仁の地域の“逸材”を探して 第12回|日本で一番美しい村【岡山県新庄村】

地方自治

2026.03.01

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出典書籍:月刊『ガバナンス』2026年3月号  【WEB限定連載】

◆小さな村の役場職員

 僕が各地で開催しているビレッジプライド研修は、冬期には気象状況を配慮し、オンラインで行っている。晴れの国として知られる岡山県に雪のイメージはないかもしれないが、今回の舞台となる岡山県新庄村では26年2月現在、70㎝の雪が積もっているそうだ。

 新庄村は岡山県の西北端に位置し、美しい山々に囲まれている。「日本で最も美しい村」にも認定される、人口約800人の小さな村だ。古くは出雲街道の宿場街「新庄宿」として栄え、旧出雲街道は今も当時の面影を残す風情のある通りになっている。明治時代から一度も合併することなく村政が続いているそうだ。

 今回は、ビレッジプライド研修の受講生でもある、新庄村役場産業建設課で商工観光を担当している岩佐佳奈さんをご紹介しよう。

新庄村のまちなみの写真
新庄村のまちなみ。

岩佐佳奈さんの写真
新庄村産業建設課の岩佐佳奈さん。


 岩佐さんは、結婚を機に夫の生まれ故郷である新庄村に移住し、役場職員になった。村は約30人という非常に少ない人数で自治体運営をしている。人口が少ないから役場職員も少ないのだが、業務内容はほかの自治体とほぼ変わらないので、1人あたりが担当する業務は非常に多くなり、職員たちは毎日忙しく仕事をこなしている。

 商工観光を担当する岩佐さんの事務所は、役場から少し離れた新庄村のメイン通りにあり、日々の業務の中でも多くの村民とふれあう機会があるためか「村の人の現状をよく理解している職員だなぁ」といつも感心させられている。

◆四季の美しさと村民の温かさが魅力!

 新庄村のメイン通りの「がいせん桜通り」には、1906(明治39)年の日露戦争の凱旋を記念して、約130本の桜が500mにわたり植えられている。雪深い季節が終わると、樹齢100年を超えるソメイヨシノが街道の両側に咲き誇り、桜のアーチとなって、一年で一番美しい景色をみせてくれる。この風景を目にしようと、日本中から多くの観光客が訪れる。

がいせん桜通りのソメイヨシノの写真

新庄川の堤防沿いのヤエベニシダレの写真
がいせん桜通りではソメイヨシノが、新庄川の堤防沿いではヤエベニシダレが咲き誇る。


 この時期に開催する「がいせん桜祭り」も、岩佐さんが担当しているのだ。祭りには地元住民による出店が並び、村の美味しい食材がふるまわれる。

餅つきの写真
祭りでは、餅つきも開催。

出店の写真
魅力的な出店が立ち並ぶ。


 特に、新庄村はブランド餅米「ひめのもち」の産地として有名だ。小さな村が一点突破型のブランド戦略に成功し、道の駅にも「ひめのもち」の多岐にわたるこだわりの商品がラインナップされている。

 僕も、新庄村に行ったときには毎回、道の駅に寄り、大量に餅を買い込んで帰っている。実は、僕の父親は大の餅好きで、朝食には餅を食べるのが定番だ。ある日、おみやげで新庄村の「ひめのもち」を買って帰ったら、それ以来、新庄村の餅しか食べなくなるほど病みつきになってしまっている。「美味しいものは不幸の始まり」なんて言ったりもするが、新庄村に向かう朝は、いつも父親から催促をされる。

「冬のふるさと小包」の写真
「冬のふるさと小包」として、「ひめのもち」をはじめとする村のふるさとの味を全国各地に届けている。


 祭りでは、餅だけでなく特産品の販売やがいせん桜祭りでしか味わえない食の提供もあり、観光客を喜ばせている。また最近では、移住した若者が祭りに合わせて特設リンクを組み、プロレスの興行が開かれるなど、新しい取り組みにも柔軟に対応しているようだ。

プロレスの写真
青空の下、プロレスの熱い闘いを楽しむことができる。


 そんな中でこの祭りをPRする岩佐さんは、“村の人の魅力”が一番の売りだと僕に話してくれた。いつも村民のことを第一に考え、悩みながらも仕事に向かう彼女の一生懸命さを、研修を通して感じる。移住してきた彼女がそんな気持ちになるのも、温かい村民の気質と、なんといっても、日本の中ではほぼ失われてしまったといわれる原風景が残っているからだろう。

 桜の季節だけでなく、銀世界の冬、静かで涼しい高原の里を感じさせる夏、黄金色と静寂の秋――四季折々のすべてが、この村に存在している。そんな「日本で一番美しい村・新庄村」を岩佐さんがどのようにPRしていくか、これからも注目していきたい。

●新庄村 関連SNS

Instagram(ひめっ子/新庄村公式):
https://www.instagram.com/himekko_shinjo/
ひめっ子/新庄村公式InstagramへのQRコード

Instagram(がいせん桜プロレス):
https://www.instagram.com/shinjopw/
がいせん桜プロレスInstagramへのQRコード

note(がいせん桜祭り):
https://note.com/shinjo_gaisen
がいせん桜祭りnoteへのQRコード

寺本英仁氏の写真

著者プロフィール 寺本英仁(てらもと・えいじ)
㈱Local Governance代表取締役

1971年島根県生まれ。東京農業大学卒業後、石見町役場(現邑南町)に入庁。「A級グルメ」の仕掛け人として、ネットショップ、イタリアンレストラン、食の学校、耕すシェフの研修制度を手掛ける。NHK「プロフェショナル仕事の流儀」で紹介される。著書に『ビレッジプライド~「0円起業」の町をつくった公務員の物語』、藻谷浩介氏との対談本『東京脱出論』など。22年3月末で役場を退職し、㈱Local Governance 代表取締役に就任。海と食を旅する地方創生プロデューサーとして活動中。

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㈱Local Governance代表取締役/ちよだ地方連携ネットワーク地方連携特命官。1971年島根県生まれ。東京農業大学卒業後、石見町役場(現邑南町)に入庁。「A級グルメ」の仕掛け人として、ネットショップ、イタリアンレストラン、食の学校、耕すシェフの研修制度を手掛ける。NHK「プロフェショナル仕事の流儀」で紹介される。著書に『ビレッジプライド~「0円起業」の町をつくった公務員の物語』、藻谷浩介氏との対談本『東京脱出論』など。22年3月末で役場を退職し、㈱Local Governance 代表取締役に就任。

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