
寺本英仁の地域の“逸材”を探して
寺本英仁の地域の“逸材”を探して 第13回|地域の魅力を詰め込んだ野菜ジェラート【長野県信濃町】
NEW地方自治
2026.04.01
この記事は3分くらいで読めます。
出典書籍:月刊『ガバナンス』2026年4月号 【WEB限定連載】
◆地元食材の魅力を引き出す、新しい組み合わせ
今回は、長野県信濃町で、建設業のかたわら野菜ジェラート店「Centotto Gelato(チェントットジェラート)」を営む外谷豊さんを紹介しよう。


「チェントットジェラート」を営む外谷夫妻。

白を基調とした内装も、おしゃれで魅力的だ。
信濃町は長野県北部に位置する自然豊かな高原のまちで、観光・農業・歴史・文化がバランスよく息づく地域だ。標高が高く、涼しい気候が特徴で、四季折々の美しい景観が魅力となっている。
カヌーや遊覧船、釣りを楽しめる野尻湖や、登山愛好家や写真愛好家に人気の黒姫山・妙高山といった雄大な自然風景を有しており、アウトドア活動が盛んに行われている。有名なスキー場も多く、野尻湖ナウマンゾウ博物館や俳人の小林一茶の記念館もあり、県内だけでなく首都圏からも、年間を通して多くの人が訪れる日本有数の観光地である。また、移住者や、避暑地としての別荘も多く、注目度がひときわ高い自治体だ。
そんな信濃町で気になるものは、やっぱり“食”ではないだろうか。信州本場の蕎麦はもちろん有名だが、町でもう1つ代表的な食材が「とうもろこし」だ。
コロナ禍の2022年、外谷さんは、地域活性化と農業支援を目的に、とうもろこしを活用した野菜ジェラート店「チェントットジェラート」をオープンさせた。


町特産のとうもろこしと、そんなとうもろこしを使用したジェラート。

週末には行列ができるほどの盛況ぶりだ。
◆建設業と飲食業、2つの世界を結ぶ
インタビューを始めた時点で、外谷さんの考えはなんとなく理解できた。島根県邑南町が誇る「A級グルメ食材」にも、平成の大合併前後、将来の公共工事減少を見据えた建設事業者が、島根県と連携して異業種参入を進めた結果、生まれたものがある。チョウザメの養殖や、キャビア、サクランボ、ブルーベリーなどの特産品は、その象徴ともいえる。
こうした経緯から、建設事業者にとって、自社の強みである重機を活用できる農業分野は、新規事業としてマッチしているといえるからだ。

実は親和性の高い、建設×食・農。

「外谷建設」のみなさん。
ジェラート店の隣には、地域の野菜を取り扱う直売所「にのくらマルシェ」が併設されている。特産のとうもろこしのほかに、トマトやブルーベリー、えんめい茶、花豆、なつはぜなど、豊富な食材を使ったジェラートが提供できることも強みの1つだ。また、地域の生産者から余剰・規格外の野菜や果物を買い取り、ジェラートの原料として利用するなど、フードロス解消にも積極的に取り組んでいるそうだ。

左が「花豆」、右が「なつはぜタルト」のフレーバー。

ジェラートに練り込まれる、新鮮な地元野菜。
外谷さんは地元の建設事業者として、町内の方から話を聞くことが多かった。そうした中、後継者不足や販路の課題などを知り、「地域を盛り上げていきたい」という思いが芽生えたことが、ジェラート店立ち上げのきっかけになったという。
インタビューの中で「夏のハイシーズンしか売れないとうもろこしなどの食材も、加工すれば年中販売が可能になる。そうすることで農家の収入が少しでも安定すれば」と話す彼の熱い思いに感動した。そうした思いから、ジェラートに練り込む食材はできるだけ高く買い取ることにしているそうだ。まさに、建設会社から生まれた腕利きの地域プロデューサーだと評価したい。
日本有数の観光地である信濃町でさえ、人口減少問題を避けて通ることはできない。そうした現代において、行政だけが旗振りをしても地域の活性化は進まない。地域活性化をかなえるためには、地域の企業や外谷さんのような若きリーダーが存在しないと好転は見込めないのだと、彼の話を聞きながら感じた。
行政側にいる人間として、いかに地域のキーパーソンを応援していくかが今後のカギになる。その1つの方法として「ふるさと納税」の返礼品は大きな役割があると感じている。外谷さんのジェラートも信濃町の返礼品に採用されているが、まだまだ伸びしろがあると感じた。
信濃町の濃厚な牛乳と多彩な地元食材を練り込んだジェラートが全国各地に届くことで、外谷さんの町に対する思いが、ますます広がることを願っている。

期間限定ショップとして出店していた「ステーションビルMIDORI長野店」が、POP UP期間を経て常設店に。今後の展開にも注目だ。
●「Centotto Gelato」(信濃町本店)
住所:長野県上水内郡信濃町柏原3442-1
Mail:info@centotto.info
TEL:026-262-1077
営業時間:9:00〜18:00 ※年末年始(12/31~1/3)は休業
公式HP:https://www.centotto.info/
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著者プロフィール
寺本英仁(てらもと・えいじ)
㈱Local Governance代表取締役
1971年島根県生まれ。東京農業大学卒業後、石見町役場(現邑南町)に入庁。「A級グルメ」の仕掛け人として、ネットショップ、イタリアンレストラン、食の学校、耕すシェフの研修制度を手掛ける。NHK「プロフェショナル仕事の流儀」で紹介される。著書に『ビレッジプライド~「0円起業」の町をつくった公務員の物語』、藻谷浩介氏との対談本『東京脱出論』など。22年3月末で役場を退職し、㈱Local Governance 代表取締役に就任。海と食を旅する地方創生プロデューサーとして活動中。
★この記事は、月刊「ガバナンス」のWeb限定連載です。本誌はこちらからチェック!

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