【特別企画】地域の自然を誇りに変える――「自然共生サイト」で広がる自治体の可能性

NEW地方自治

2026.03.31

★この記事は、月刊「ガバナンス」2026年4月号に掲載されています。本誌はこちらからチェック!

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地域の自然を誇りに変える

――「自然共生サイト」で広がる自治体の可能性

2022年12月に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、ネイチャーポジティブ(生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる)の実現が世界目標として掲げられた。23ある行動目標の1つ「30by30」は、2030年までに陸と海の30%を保全するというもの。この目標達成に向け、日本でも「自然共生サイト」の認定制度がある。自然共生サイトとはどのような制度なのか、本制度を自治体が活用することで、地域づくりにどのような効果やメリットが期待できるのかなどについてレポートする。

環境再生保全機構の皆さんの集合写真
(左から)環境再生保全機構自然共生部審査課長の多賀 洋輔さん、
計画促進課課長代理の上村亜由美さん、審査課主事の田中藍子さん、
計画促進課長の本城宏行さん。

自然共生サイト認定制度とは

 まず、自然共生サイトとはどのようなエリアを指すのか。認定審査運営業務を行っている独立行政法人環境再生保全機構(以下ERCA)に尋ねた。審査課長の多賀洋輔さんが答える。

 「自然共生サイトとは、簡単にいうと『民間等の活動によって生物多様性の保全を図る計画の実施区域』です。例えば地域の森で市民の有志が集まり、手入れや管理をすることで多種多様な野生の動植物が生息生育しているエリアがあります。このようなエリアについて、本制度が定める一定の基準を満たし、国が活動計画を認定した場合、そこが自然共生サイトとして認められます(図1参照)

 場所は森林、里地里山、都市の緑地、海、沿岸域などどこでも対象になります。活動主体は個人でも団体でも企業や自治体でも構いません」

「自然共生サイト」の認定スキーム

 認定制度には2種類ある。1つは「増進活動実施計画」で、企業や自治体など単体での申請が可能だ。もう1つの「連携増進活動実施計画」は市町村のみが申請できる制度で、2025年に新設された。計画促進課長の本城宏行さんが概要を説明する。

 「連携増進活動実施計画は市町村が取りまとめ役となり、地域の企業・団体・個人等と連携して活動を行っていくものです。各々の能力や立場に応じた適切な役割分担を行うことで、市町村が抱える社会的自然的な課題に取り組み、地域づくりに役立てることも可能です」

多賀洋輔さん写真
審査課長・多賀洋輔さん。

地方公共団体による認定は約2割

  現在登録されている569か所(令和8年3月時点)のうち、約半数は企業による認定だ。地方公共団体は約2割に留まる(図2参照)。この数字の偏りについて、本城課長は次のように分析する。

 「企業による申請が活発な理由は、自然関連を情報開示することによって投資家からの投資を呼び込もうという流れがあるからだと考えられます。一方、自治体で申請が少ないのは、役場の人手不足で申請業務に人員を割きにくいことや、認定を受けるメリットが十分に理解されていないこと、そもそも本制度の認知度が低いこと等があります」

 自治体によっては関係する課が兼務で申請業務を担当していたり、一人の職員が申請にまつわる全業務を行っていたりするが、一方で、庁内全体で取り組む自治体もあると、計画促進課課長代理の上村亜由美さんは話す。

 「北九州市では公害を克服した歴史的背景も踏まえて市長がネイチャーポジティブ宣言を発出しました。滋賀県でも地域戦略に『自然共生サイトの認定促進』と明記しています。首長が積極的な姿勢を示し、具体的な目標や計画があると取り組みが進みやすい印象です」

申請主体別の認定計画割合
   (R5~R7年度累計)

本城宏行さん写真
計画促進課長・本城宏行さん。

上村亜由美さん写真
計画促進課課長代理・上村亜由美さん。

認定のポイントは「人の活動」と「生物モニタリング」

 自然が豊かで多くの動植物が生息生育している場所は全国に数多あるが、申請すればすべてが自然共生サイトになれるわけではない。ポイントは「生物多様性を増進するような人間の活動があること」だ。そのため、審査では活動計画とその実施が重視される。地域によっては高齢化や過疎化で活動人員が減り、保全活動ができなくなるリスクもある。いかに人員確保し、保全活動を安定的に継続していくかが課題だ。

 また、生物多様性があることを証明するための生物モニタリングもポイントの1つ。当該エリアに今どんな生物が生息しているのかを調査・観察し、生物種の特定や生態系を明らかにする必要がある。学術的な知識が不可欠のため、有識者のサポートが欠かせない。

 場所によっては申請地の所有権が複雑なことがある。河川法や森林法など法律上の調整が必要なケースでは、より慎重さが求められる。

サイト登録による効果とメリット

  では、自然共生サイトに認定されると、地域や自治体にはどんな効果やメリットがあるのか。

 最大のメリットは、地域の人々が地元の自然の素晴らしさを再認識し、誇りに思えることだ。身近に自然があるのが当たり前で、自分たちが守ってきた森や海が特別なものだと気付いていないことも多い。それが実は唯一無二の宝だと知り、自然風景を守りたい気持ちが芽生え、誇りとなり、地元への愛着を育む。

 サイトに認定されたことがきっかけで保全活動を知った人や企業が、「活動に協力したい」と申し出てくる事例もあり、活動人員の不足という課題解決の一助にもなっている。

 また、地域のブランド化にもなる。例えば某サイトでは里山の田んぼで作った米を「自然共生サイト米」と銘打ち、販売している。

 サイトが観光資源になるケースもある。サイト認定をPRに活用することで、県内外からの観光客誘致に繋がる。ある自治体では自然の中でのキャンプや自然観察など、サイトを軸にしたエコツーリズムを企画し、話題を呼んでいる。

 財政的なメリットとしては、サイトの活動に対して環境省の交付金が受けられたり、市町村が土地所有者等と生物多様性維持協定を締結すれば長期安定的な管理につながる。

申請に困ったらERCAへ相談を

  こうした多くの効果やメリットが期待できるが、自治体職員が自分たちで申請手続をするにはハードルの高い面もある。書類作成の煩雑さや生物モニタリングなどが課題になりやすい。この点についてはERCAに相談するのが近道だ。審査課主事の田中藍子さんは、全国の自治体職員に向けこう呼びかける。

 「申請書類の書き方については、弊機構で助言や指導ができます。地域に専門的知見を持った有識者が見つからない場合も、弊機構の有識者マッチング制度を通じて紹介が可能です。それ以外にもお手伝いできることはたくさんありますので、気軽に相談ください」

田中藍子さん写真
審査課主事・田中藍子さん。


▼制度・相談・受付について
(環境再生保全機構ホームページ)

https://www.erca.go.jp/nature
環境再生保全機構ホームページQRコード

【企画提供】
独立行政法人 環境再生保全機構
〒212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310 ミューザ川崎セントラルタワー
TEL:044-520-9543
E-mail :30by30@erca.go.jp


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