月刊「ガバナンス」特集記事
月刊 ガバナンス 2025年7月号 特集1:地域を明るくする兼業・副業 特集2:世にも面白いナッジの世界
NEW地方自治
2025.06.27
●特集1 地域を明るくする兼業・副業
人口減少社会で地域の人手不足が一層深刻になっている昨今、全国の約6割の自治体が自治体職員の兼業・副業の許可基準を設けています。自治体職員の兼業・副業での経験は、自治体職員としての職務に還元すること、さらには職員の枠を越えて「地域人」として地域に生かすことが期待されています。
これまでも、日々の目の前の業務に勤しむだけではなく、自治体職員として地域に目を向け、地域に飛び出し、より深く、広く活動する、いわば「越境的」な職員は数多くいました。しかし、より人手不足、人材の流動性が高まり、自治体現場を取り巻く環境の変化もスピードが増している状況があります。
政府は、地方公務員の兼業・副業を弾力化する方針を示しました。そして、許可基準にとどまらず兼業を推進する条例をつくる自治体も出てきました。
兼業・副業は個人の成長だけでなく、組織の成長、さらには地域の発展にもつながる可能性を秘めています。今号はこれからの自治体職員の、地域での働き方について見つめます。
■「地域を明るくする自治体職員の兼業・副業」のための3つの処方箋/杉岡秀紀
■兼業推進時代の自治体人事の新たな役割について〜兼業推進を人材育成・組織力向上に活かす7つの視点/鳥羽 稔
■まちを醸す──レンタル何でもする公務員がクラフトビールにたどり着くまで/和田真人
■〈取材リポート〉全国初となる兼業推進条例を施行し、職員の兼業を後押しする──河内長野市職員兼業推進条例/大阪府河内長野市
●特集2 世にも面白いナッジの世界
人はつねに合理的で正しい選択をする……わけではありません。状況や感情しだいで、非合理的な行動もとる生き物です。そんな、説明のつきにくい人間の行動様式に焦点をあてた「行動科学」の知見が、企業のマーケティングや公共政策などに取り入れられています。
本特集では、行動科学の知見にもとづき人々の行動を後押しする「ナッジ」について、基礎知識や自治体での活用事例をご紹介します。
■人間の認知・感性の特性から行動デザインを考える──ナッジの可能性と問題/一川 誠
■地方自治体初ナッジユニットYBiTの「これまで」と「これから」/竹森庸陽
■行動科学を活用した地域創生戦略──ナッジ理論とゲーミフィケーションによる行動変容の設計/竹本拓治
キャリアサポート連載
■管理職って面白い!年上部下/定野 司 ■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
日本人の課題である主体性を育む教育とは…/後藤好邦 ■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇 ■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/中 麻優子 ■管理職なら知っておきたい!部下マネジメントの基礎知識/高嶋直人 ■今日から実践!すぐに役立つ!「公務員による研修」のススメ/塩浜克也 ■HOLG presents 本当にすごい公務員!のココだけの話/森田修平 ■カスタマーハラスメント対策Q&A/関根健夫 ■〈リレー連載〉Z世代ズム~つれづれに想うこと/青木悠太 ■ただいま開庁中!「オンライン市役所」まるわかりガイド/平田春奈・菊山 譲・尾形久美
●巻頭グラビア
□自治・地域のミライ
杉島理一郎・埼玉県入間市長
描きたいまちの未来から逆算して、共に今を創る

杉島理一郎・埼玉県入間市長(42)。「自分の持ちうるすべてのネットワークと知識や経験を入間市のために使い尽くすと決めてやってきた」と話す。
取材リポート
□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
百年樹の梨畑は壊滅したが、新天地で梨畑を再生させる──大熊町・梨親父のDNA(上)
原発事故、続く模索64
東京電力福島第1原発が立地する福島県大熊町は梨の産地だった。しかし、メルトダウン事故による全町避難で壊滅する。そうした中でただ1人、千葉県香取市の新天地で栽培を再開した人がいた。大熊に梨を定着させた農家の子孫に当たる故関本信行さん(2017年、55歳で死去)だ。自称「梨親父」。百年樹があった自慢の畑は放棄せざるを得なかったが、病気が蔓延していた梨畑を引き継ぎ魔法のように蘇らせた。その経営が軌道に乗ろうとしていた時、病魔に襲われた。
□自治体政策最前線──地域からのイノベーション
広島型地域運営組織「ひろしまLMO」
──多様な主体が連携して課題に取り組み市民主体のまちづくりをめざす(広島市)
広島市は、少子高齢化や単身世帯の増加などさまざまな要因で地域コミュニティの機能が低下する中、地域活動基盤の強化に向けて広島型地域運営組織「ひろしまLMO(エルモ)」の設立を促進している。地区・学区社会福祉協議会などが中心となり、地域の多様な主体が連携して地域課題の解決に取り組み、市民主体のまちづくりを推進することで、持続可能な地域コミュニティの実現をめざしている。また、国が創設した指定地域共同活動団体制度を全国に先駆けて導入し、LMOを同団体に指定する取り組みも開始した。
●Governance Focus
□震度7。建物が悲鳴を上げ、人が消えていく
──能登半島地震、石川県輪島市門前町(上)/葉上太郎
能登半島地震で最大震度の7を記録したのは2箇所の地震計だ。そのうちの一つは石川県輪島市役所の門前総合支所(平成大合併前の門前町役場)内に置かれていた。旧門前町の中心街は極めて激しい揺れに襲われ、商店街は壊滅的な打撃を受けた。同所は2007年に発生した能登半島地震でも最大震度6強を記録した地区である。「前回は何とか復興できたが、今回は厳しい。人さえいれば何とかなるのに、肝心の人が消えていく」と住民達は嘆く。
●Governance Topics
□地方自治・地方選挙をめぐる課題と展望を多角的に探求
──第17回日本自治創造学会研究大会
地方議会議員を中心に、首長や職員、研究者などが地域に根ざした実践的な研究や交流を行っている日本自治創造学会は、5月15日・16日の2日間、東京で第17回研究大会を開催した。今回のテーマは「変容する社会・地方選挙 〜地方自治のあり方を問う〜」。学識者らによる講演を中心に知見を深めた。
□先進的な地方政策と議会改革を学ぶ
──ローカル・マニフェスト推進連盟研修会
ローカル・マニフェスト(LM)推進連盟は5月9日に、都内で「地方政策と議会改革を学ぶ研修会『官民連携の最前線と、議選監査の役割と活用法』」を開催した。官民連携、DX、議会改革と多彩なテーマが用意され、会場とオンラインを併せて約120人が参加した。
連載
□交差点~国×地方/人羅 格 □職場を変える・心を整える「ひとさじの知恵」/咲良美登理 □「公務のトビラ」をひらく!対話と共創/大杉 覚 □自治体DXとガバナンス/稲継裕昭 □人がシホンの 人的資本経営ことはじめ/林(小野) 有理□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘 □自治体の防災マネジメント/鍵屋 一 □自治体法務と地域創生──政策法務型思考のススメ/出石 稔(関東学院大学地域創生実践研究所) □自治・分権改革を追う/青山彰久 □市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹 □地域経営シンカ論/中村 健 □生きづらさの中で/玉木達也 □議会局「軍師」論のススメ/清水克士 □「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭 □From the Cinema その映画から世界が見える
『選挙と鬱』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス』栗田シメイ]
カラーグラビア
□つぶやく地図/芥川 仁
伝統野菜を育てるサラリーマン農民──石川県金沢市打木町
□技の手ざわり/大西暢夫
鉄を鍛える。その1本に込める技と心意気──【和釘】白鷹刃物工房(松山市)
□本日開園中 FUN!FUN!動物園
須坂市動物園(長野県須坂市)
□風景から歌──旅先で聴いた声を運ぶ/瀬尾夏美
山の痛みはおれの痛み──宮城県伊具郡丸森町
【クローズアップ】
知られざる400年前からの先進性──滋賀県日野町「近江日野商人」が注目される理由
■DATA BANK 2025 自治体の最新動向をコンパクトに紹介!