ガバナンスTOPICS【イベントレポート】
女性議員のなり手をテーマにフォーラムを開催/イベントレポート
NEW地方自治
2025.06.24

出典書籍:『月刊ガバナンス』2025年6月号
【ガバナンス・トピックス】
女性議員のなり手をテーマにフォーラムを開催
──「小さくとも輝く自治体の担い手を育てよう」公開交流会
議員としてのやりがい、きっかけを、活躍する女性議員から聞こう──。「第2回住民自治を語る信州フォーラム〈公開交流会〉小さくとも輝く自治体の担い手を育てよう」(主催=住民自治を語る信州フォーラム実行委員会)が、4月3日に長野県朝日村で開催された。県内で活躍する女性議員らが登壇し、思いや経験を語った。
女性議員が半数を占める村で開催
今回の公開交流会は、「第2回住民自治を語る信州フォーラム」、また2025年5月に長野県泰阜村で開催された「第29回全国小さくても輝く自治体フォーラムin泰阜」のプレ企画として開催。住民自治の要となる議員のなり手不足、その中でも女性議員をテーマに、定数10人中5人を女性議員が占める長野県朝日村を会場に議論が交わされました。
冒頭、同村議会の北村直樹議長が「この10年ほどで議会を取り巻く環境も変わってきた。これまでは比較的年配の男性議員が多かったが、いまは若い議員、女性議員の進出が多くなっている。当議会に限らず、議員はいろんな思いを抱えながら活動をしている。交流会を通じて、各自治体の仲間の発展につながる場になれば嬉しい」とあいさつした。
それぞれの議員としてのキャリアを紹介
県内各地で活躍する女性議員らが登壇した。
第1部は、「紹介します。私たちの実践、悩み、地域のようす」と題し、県内で活躍する女性議員らが登壇。自身の議員としてのキャリアや議会でのようすなどを紹介した。案内人は、元飯綱町議会議長の寺島渉さんが務めた。寺島さんは議長時代の2017年に議会改革の取り組みが評価され、第12回マニフェスト大賞グランプリを受賞。現在は、地域政策塾21を主宰し、議員養成や地方自治、地方議会について学ぶ学習討論会などを開催している。
まず、富士見町議会の渡辺葉(よう)議員が登壇した。2023年4月の町議会議員選挙(定数11)で15人の候補者中で最高得票の1284票を獲得。1期目ながら副議長も務める。
※ 肩書はイベント時のもの。渡辺氏は、2025年5」月16日に議員辞職し、任期満了に伴う富士見町長選(7月29日告示、8月3日投開票)への立候補を表明した。
横浜市出身の渡辺さんは、高校、大学時代はアメリカに留学。帰国後に都内で働いたのち、2016年に地域おこし協力隊員として富士見町に移住した。東京からのアクセスも良く、東京でやってきた仕事などが続けられる環境だったこと、さらには同町に移住していた知人がいたことが後押しになったという。移住後には2人の子どもを出産。全国で初めて地域おこし協力隊員として育休を1年間取得した。
渡辺さんが、町議選に立候補したきっかけは、議員になる以前の総合計画の審議委員の経験。「子育て世代が議員になる必要性を感じた」という。さらには、現職議員からの薦めなどもあり、「政治がしたかったというよりも、住民自治に共感し、実践したいと思った」そうだ。
また、「留学時代は少人数教育で、『あなたはどう思いますか?』という問いを常に聞かれた。一つの答えを出すことだけが目的ではないという感覚が養われた」と振り返り、「議会で多面的な観点をどう民主的な対話によって引き出すのかというプロセスは、自分の教育経験と重なり、議員という職業に共感した」と立候補をした当時のことを語った。
選挙は集落の人々に応援してもらいながら、地元のやり方で行った。「まちをより深く知る機会になり、好きになった」そうだ。
議員になって2年間で行ってきた議員間対話の増加や、多様な住民の声の聴取・発信、政策提言の実行などの議会改革について紹介した。
渡辺さんは、「地域コミュニティが育む心理的安全性から子育てをしたいと思うように、一人ひとりの住民の手によって作られる集落の暮らしこそが住民自治の基本であり、小さな自治体の魅力だ」と話し、「『声を届ければ変わるかも』という、議員や議会に対する信頼や期待値を上げたい。ポジティブに参画してもらえるような環境にすることができれば」と抱負を語った。
続いて、開催地の朝日村議会から3人の女性議員が発表した。同議会は、2023年4月の町議選で、女性議員の割合と60歳以下の議員の割合がともに半数になった。
まず、同議会最年長の豊田恵美子議員が発表した。「自分たちの宝物である村の自然をもっと大切にして、未来ある子どもたちに手渡していこうという思いだった」と立候補した理由を紹介。村内での小水力発電に関するエピソードを挙げながら、村への思いを語った。
次に古池(こいけ)美佐江議員が発表。朝日村生まれだが、生後すぐに親の転勤などにより村外で育った。2015年に農業を本格的にしようと村に移住。議員に関心を持ったきっかけは、議会モニターとして議会を傍聴した経験だったという。「議員として様々なことを自分で勉強するのは当然だが、議会としても新人議員を育てるような仕組みがあってもいいのでは」と経験も交えて提案した。
三人目として発表した、清沢敬子議員も朝日村出身。県内の金融機関に勤めたのちに上京し、その後30歳手前でシングルマザーとして村へと戻ってきた。当時を振り返り、「不安を抱えながらの帰郷だったが、穏やかな時の流れと人のあたたかさに支えられ、美しい風景が心に沁みた」という。
村の補助金で立ち上げた、暮らしをサポートする村民どうしの助け合い事業に関わる中で、村への恩返しをしたいという思いから議員になった。住民の声の大切さを感じ、声を上げにくい住民の声を拾うために「ご意見箱」の設置を提案し、実現に至った事例などを紹介した。「村に住み続けたいと住民の満足度が上がっていくように努めたい」と意気込みを語った。
最後に、飯綱町議会の瀧野良枝議員が「政策サポーターから議員へ」と題し、発表した。
議会政策サポーター制度は、合併により町域が広くなった一方で、議員定数が減ったため、より幅広い住民の知恵も借りて政策づくりを協働で進めるために公募、推薦の住民が議論する制度。同議会の議会改革の歴史を語る上で特筆すべき取り組みだ。
瀧野議員は、3人の子育てをしながら議会政策サポーターを経て、町議会議員になった。サポーター制度を通して、それまでの地区で通例となっていた意思決定の仕方や見えていなかった課題が浮き彫りとなり、「町政を自分ごととして考えるきっかけになった」と話す。
子育てをしながら町議会議員になったことで「ロールモデルになれているのではないか」と実感を込めた。また、田舎特有の選挙運動のシステムについても言及。「ファーストムーバーとして、ハードルが下がり、自分も議会で活動してみたいと思ってもらえたら嬉しい」と議会の将来を見据えた。
事例発表のあとは、会場参加者を交えて討論。県内外から議員を中心に多くが集い、質問や議論が交わされた。案内人を務めた寺島さんは「議員は多様な価値観、政治信条を持っている。議員になったからといって自然に議論をする能力が身につくわけではない。その能力を獲得するためには、学び合いと自由討議が不可欠だ」と述べ、闊達な議論を締めくくった。
平日にもかかわらず県内外から参加者が集い、会場は熱気に包まれた。
会場には、元阿智村村長の岡庭一雄さん、元望月町(現佐久市)町長の吉川徹さんも参加。自身の経験を交えて、小規模自治体の希望についてコメントもした。これからの住民自治をどう進めていくか、その気持ちを高める交流会となった。
(本誌/浦谷 收)
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