政策トレンドをよむ
政策トレンドをよむ 第26回 グローバルサウスと地方創生 ― 地域企業の新市場進出と人材交流の可能性
NEW地方自治
2025.06.10
目次

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出典書籍:『月刊 地方財務』2025年5月号
【政策トレンドをよむ 第26回】
グローバルサウスと地方創生 ― 地域企業の新市場進出と人材交流の可能性
EY新日本有限責任監査法人FAAS事業部
ガバメントパブリックセクター プリンシパル
中務 貴之
※2025年4月時点の内容です。
グローバルサウスとは、南半球に位置するインドやベトナム、ブラジル、南アフリカといったアジアやアフリカ、中南米地域の新興国・途上国の総称である。明確な定義はないが、グローバルサウスは冷戦の文脈において、東西陣営のどちらにも属さない「第三世界」を表現するときにも使われてきた。近年、民主主義と権威主義の分断のなか、中立を貫くスタンスをとるという特徴で注目されている。また、2050年までに、グローバルサウスの名目GDPの合計が、アメリカや中国を上回ると予測されている。さらには人口面でも、グローバルサウスの国々で全世界の3分の2を占めるようになると予測されており、国際社会において経済的・政治的に注目が集まっている。
我が国の政府では、2023年10月に「グローバルサウス諸国との連携強化推進会議」が立ち上がり、翌24年6月に「グローバルサウス諸国との新たな連携強化に向けた方針」が打ち出された。同方針においては、
①連携を通じて活力を取り込み、国益の増進を図ること
②グローバルサウス諸国を共創パートナーと捉え、我が国自身もパートナーとして選ばれる関係を構築すること
③連携強化を通じて国際社会における分断と対立の動きを協調に導くこと
が掲げられている。トップ外交や官民でのフォーラム等によりあらゆる層において関係を強化することで、グローバルサウス諸国における課題克服と経済成長のみならず、その活力を取り込み、日本の課題解決と経済成長につなげることを一層推進していく姿勢がうかがえる。同方針を踏まえて、現在、様々な施策が打ち出され実行に移されている。
ご存じの方も多いと思うが、宮崎 ― バングラデシュ・モデルはICT領域において、地方や対象国の課題解決に向けて自治体、企業、大学、バングラデシュ国との連携により長年継続して取り組まれてきたものである。これまで7年間で、200名以上が日本へ就職し、そのうち70名以上が宮崎大学での留学を経て、宮崎県内のIT企業に就職しているとのことである。今後、宮崎で就職したバングラデシュ人がいずれ帰国して起業した際、双方の橋渡しをしていく、日本の企業もそれに合わせた海外進出等に広がっていくと思われる。
グローバルサウス諸国といっても、それぞれの国において、様々状況は異なる。政情や経済状況、自然環境、さらにはインフラ基盤や日本企業の進出状況、国民性、日本文化の認知度など、企業がビジネス展開をしていくうえで理解しておくべきことは多い。自社のビジネスモデルをどのように候補となる国にアジャストさせながら仲間(ビジネスパートナーだけでなく、広く支援をしてくれるようなプレーヤー)を作っていけるのかについて、現地国に赴き肌感覚を持って検討を進めていくことが重要になる。その際、当該国における法規制や市場状況を熟知している方々、さらには広く現地関係者とのリレーションを有するような方々と出会い、自社のビジネスに即した“生きた”情報を得られるかが第1段階ではポイントになる。
実際には、自社資金のみでこれらの検討等を行うことは、時間的にもコスト的にも大変な面もあり、まさに政府の補助金などをうまく活用していくことが現実的である。その1つとして、経済産業省において「グローバルサウス未来志向型共創等事業」(令和6年度補正予算)が組成され、すでに実行に移っているものもある。本事業は、大きく3つの事業
①グローバルサウス未来志向型共創等事業
②グローバルサウス市場開拓に向けた支援事業
③グローバルサウスとの連携強化に資する共創型技術人材交流事業
にて構成されている。詳細は別途、経済産業省の該当ページを参照いただければと思うが、様々なコンセプトで事業が構成されている。今後、順次公募等が行われる(すでに公募が行われているものもある)ことから、自治体管内のスタートアップ企業や地域企業の皆様が自社の状況に合わせて適する事業を選択し、応募していかれることを期待する。また、そのような企業のサポートも含めて、地方自治体には、今後の地域活性を見据えて長い目で戦略的に取り組んでいかれることを期待する。
〔参考文献〕
(1)内閣官房「グローバルサウス諸国との新たな連携強化に向けた方針」
(2)経済産業省「経済産業省関係令和6年度補正予算の事業概要(PR資料)」
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