自治体最新情報にアクセス DATABANK
自治体最新情報にアクセス|DATABANK2024 月刊「ガバナンス」2024年10月号
地方自治
2024.11.01
目次
自治体最新情報にアクセス DATABANK
(月刊「ガバナンス」2024年10月号)
●庁内の助け合いをマッチングする制度を試行
前橋市(33万1800人)は、職員が庁内の所属の枠組みを超えて相互に協力し合う制度「たすけあい+(プラス)」の実証実験を7月から行っている。これからの市役所のあり方を考えるために若手・中堅職員有志で結成している組織横断型ワーキンググループ「ミライズWG」が中心となって進めた取組みで、繁忙期の業務平準化にとどまらず、職員個々の能力の相互活用や学び・スキルアップの機会の相互提供などを図っていくのがねらい。
具体的には、ニーズに合わせてアプリケーションを簡単に作成できるMicrosoft Power Appsを利用して職員が専用アプリ「たすけあい+」を内製。それを使って、各所属で能力や人的資源を必要とする業務が生じた場合に依頼を投稿する一方、他所属の助けになりたい職員に応募してもらい、両者をマッチングする。対象は、消防職員・技能労務職・保育士を除いた全所属の正規職員。他部署への応援は週4~5時間程度を上限としている。
実証実験は既に23年11月末から24年2月までの約3か月実施しており、窓口業務応援等の市民サービスへの従事、写真コンテストの展示作業等の趣味や特技を生かした業務、計画書やパンフレット作成等の企画立案業務などで助け合いが行われた。今回はそれに続く2回目の実証実験で、25年3月31日までの9か月間実施。将来的に職員数の減少が見込まれる中、組織における働き方の柔軟性や業務の生産性を高めて、住民サービスの向上に繋げることを目指している。
(月刊「ガバナンス」2024年10月号・DATA BANK 2024より抜粋)
●郵便局でオンラインも交えた巡回診療を開始
山口県周南市(13万8100人)は、医療機関のない和田地区で地元の高瀬郵便局のスペースを活用して7月から診療を開始した。16年に地元医院が閉院以降、医療機関のない状態が続いていた和田地区では、新たな診療体制を要望する声が高まっていた。今回の診療所の開設は、日本郵便㈱の協力を得て実現したもので、高瀬郵便局内の個室の相談ブースを活用して定期的に巡回診療を行う。郵便局を活用した診療の本格実施は全国初だという。
診療は市内の国民健康保険鹿野診療所の医師が看護師とともに出向いて、基本的に毎月1回、第3火曜日の午前9時から正午まで対面で行っている。健康に関する相談や予防接種なども行う。
また、対面診療に加えてオンライン診療にも取り組んでいる。具体的には、対面診療を行わない火曜日に郵便局内の巡回診療所と鹿野診療所をオンラインで結び、鹿野診療所にいる医師が画面を通して診察する。郵便局職員が機器の接続をサポートすることで、安心して診療を受けられる体制を整えている。オンライン診療の実施に当たっては、初回の診療は原則、対面診療とし、その後の診療については患者と相談しながら、症状に応じて医師の判断によりオンライン診療も可能としている。薬の処方については、薬局と郵便局内の巡回診療所をオンラインで結び、服薬指導を行った後、郵送で患者宅へ届ける方法も導入している。和田地区には約1000人が居住し高齢者が多いことから、利用者の負担軽減が図られると期待されている。
(月刊「ガバナンス」2024年10月号・DATA BANK 2024より抜粋)
●観光施設を兼ね備えた津波避難複合施設をオープン
静岡県伊豆市(2万8900人)は、24年6月、観光客や地域住民を津波の脅威から守る「避難施設」と、平常時には遊び、くつろぎ、交流できる「観光施設」とを兼ね備えた津波避難複合施設「テラッセ オレンジ トイ」をオープンした。こうした観光施設を兼ね備えた避難複合施設は、全国初という。
施設の正式名称は、「松原公園津波避難複合施設『テラッセ オレンジ トイ』」。「テラッセ」には、絶景を楽しめる「テラス」や、灯台のように生命を守り照らせるなどの意味、「オレンジ」には、土肥の海に映る美しい夕陽や、オレンジゾーン(津波災害特別警戒区域)の施設であること、名産のミカンのイメージ、「トイ」には、ヨーロッパの「toi toi toi」というおまじないから、幸運を祈る、応援するの意味が込められている。
鉄骨造・地上4階建て、避難スペースは3階以上(海抜14m以上)で、避難者約1200人の収容が可能。津波避難困難地域である松原公園周辺において、海水浴客、公園利用者、市民が安全に避難できる施設として整備した。平常時は市民や観光客の交流拠点として、物販、飲食の提供、観光情報等の発信を行うほか、防災備蓄庫としても活用する。
(月刊「ガバナンス」2024年10月号・DATA BANK 2024より抜粋)
●複数の降雨規模の防災電子ハザードマップを作成
大阪府東大阪市(48万100人)は、浸水の広がりをより細かな時間軸で示した日本初の防災電子ハザードマップを作成した。市では、既に想定最大規模降雨と呼ばれる概ね1000年に一度以下で発生する降雨を想定したハザードマップを作成しているが、市民により実感を持ってもらおうと取り組んだもの。比較的発生頻度の高い規模の降雨による浸水を想定し、10年に一度(東部大阪では1時間50㎜以上、24時間160㎜以上)、30年に一度(同60㎜以上、同200㎜以上)、100年に一度(同60㎜以上、同300㎜以上)の3パターンの確率規模降雨についての浸水の広がりから収束までの状況を時系列で確認できる。
従来は紙や静止画で作成していたのに対し、今回の防災電子ハザードマップでは時系列で浸水状況が確認でき、降雨が継続する中で道路冠水や雨水管のオーバーフロー等によって段階的に浸水範囲が拡大していくことが実感できるので、より避難行動に役立つものとなっている。
ハザードマップはWEBで公開。スマートフォンやタブレットでいつでも閲覧でき、また、見たい場所を拡大して確認できる。水害リスクを踏まえたまちづくりや土地利用の促進への活用も期待されている。
(月刊「ガバナンス」2024年10月号・DATA BANK 2024より抜粋)
●ウェルビーイング政策づくりで大学のゼミ生と連携
福井県(75万9800人)は、早稲田大学政治経済学部と連携し、ウェルビーイング政策づくりの実証を進めている。同県は、(一財)日本総合研究所による「全47都道府県幸福度ランキング」で5回連続(10年間)トップになるなど、医療、子育て、教育、産業などの面で総合的な評価を得てきたが、近年はこうした客観的な幸せ指標に加え、主観的な幸せの実感(ウェルビーイング)を高める取組みにも力を入れている。今回の連携もその一環で、自治体政策などを専門とする稲継裕昭教授のゼミと連携。同県小浜市と越前市をフィールドに、小浜市については「食のまちづくり×ウェルビーイング」、越前市については「伝統工芸等を活かした交流・関係(・定住)人口創出」を実証テーマとした。
協定に基づき、8月22日、フィールドワークの第1回としてゼミの学生13人が県庁を訪問。杉本達治知事と面談した後、学生は小浜市と越前市に分かれて各市長と面談したほか、市職員らにヒアリングを行った。今後、フィールドワーク第2回、中間報告を経て、25年2~3月頃に学生が各テーマに関するウェルビーイングの政策提言を行う予定。
(月刊「ガバナンス」2024年10月号・DATA BANK 2024より抜粋)
●「親子誰でも通園モデル事業」を実施
京都府(250万1300人)は、保育所等に保護者も一緒に通園し、保育士等から親育ち支援を受ける「親子誰でも通園モデル事業」を実施している。国の「こども誰でも通園制度」(以下「国制度」)を試行実施している保育所・認定こども園における国制度のオプションとして実施するもので、子育て世代の不安や負担の軽減がねらい。全国初の取組みで、京都市内4施設と宇治市内9施設の計13施設で25年3月末まで行う。
利用対象者は国制度を利用している保護者のうちの希望者。府は実施施設に対し、一緒に通園した保護者に対する乳幼児との関わり方を学ぶ機会の提供や保護者同士の仲間づくり、育児の悩み相談等への支援機能付加に必要な経費(専任保育士等の人件費等)を上乗せ補助する。府は国制度に親子通園(親育ち支援)を併せた京都府モデルの有効性を検証し、国への政策提案を目指していく。
国制度は26年度から新たな給付制度として実施。月の一定時間までの利用枠内で、就労要件を問わず全家庭の0歳6か月~2歳児が保育所等を定期的に利用できる制度となる予定。24年度は全国115自治体、府内では京都市と宇治市が試行実施している。
(月刊「ガバナンス」2024年10月号・DATA BANK 2024より抜粋)