【特別企画】政務活動費管理SaaS「セムカン」で議会DXを前進 ──政務活動費管理業務の効率化と「開かれた議会」の実現を目指す

地方自治

2024.06.04

『月刊ガバナンス』2024年6月号

 株式会社エイブルコンピュータは、地方議会議員の政務活動費の管理作業をWebで行える専用アプリ「政務活動費管理SaaS『セムカン』」を開発。議員や議会事務局の事務作業負担の大幅軽減と情報公開機能による「開かれた議会」の実現を可能にしている。2024年6月からの運用へ向けて実施した「セムカン体験会」には、大阪府議会と大阪府豊中市議会が参加した。

* Software as a Service

大阪府議会(定数79人) 操作容易性と利便性を体感

 大阪府議会の「セムカン」議員体験会は、2024年3月22日に議員や議員事務所スタッフなど70人以上が参加して開催。各自持参したパソコンやタブレットを使って「セムカン」体験版による政務活動費の支出登録から議会事務局への確認依頼と修正・再申請までの作業を行った。


大阪府議会での「セムカン」議員体験会の様子。70人以上が参加した。

 具体的には、ブラウザに接続してWebサービスである「セムカン」にアクセスし、体験版のIDとパスワードで自分専用ページを開き、支出登録作業を進めた。支出画面メニュー内の「新規作成」で支出の項目や細目を選び、カメラで撮影した領収書をアップロードして個人情報を「黒塗り」機能で塗りつぶして保存。次に「基本情報」で日付や金額、支払先などの支出データを入力し、「確認申請」ボタンをクリックして議会事務局側へ送信。体験用で用意されていた指摘事項を確認して修正し、再度確認申請して作業を終えた。

 一連の作業は、説明を受けながら進めたので約30分要したが、操作に慣れてしまえば5分程度で済み、また通信環境があれば、いつでも、どこでも作業できるのが利点。支出金額の按分や報告書の添付などの便利な機能の説明も受け、参加者は「セムカン」の利便性を感じたようだ。

 参加者は「セムカン」を初めて操作し、30分体験しただけであったが、体験会後のアンケートでは、回答者28人のうち7割以上が「使いやすい」と回答。また、利用意向については5割が「利用を希望」し、4割は「未定」としていたものの、「希望しない」と答えたのは2人だけだった。その結果から、「セムカン」に対する高い関心と評価が伺えた。

事務負担の大幅軽減が可能

 政務活動費を交付している地方議会は全国に946議会あるとみられる。その多くの議会の政務活動費管理事務は、①議員側でエクセル等で作成した支出の書類を議会事務局へ送り、②事務局側で目的や金額・按分等を確認し、③不備があれば議員側に戻して修正、④年度締め作業時には収支報告書等の帳票類を作成した上でPDF化して個人情報等を黒塗りし、再度PDFにして情報公開用サーバーに格納、⑤原本は別に保存――という流れでアナログ処理されている。事務局職員等の事務負担は過大で、エイブルコンピュータは議会全体で年間延べ60万時間が費やされていると試算している。

 開発された「セムカン」は、①入力・確認・修正・承認・印刷・スキャンの手間の大幅省力化、②ペーパーレス化、③年間作業の平準化、④クラウド化による働き方改革、⑤最高水準のセキュリティによるデータ保護などを実現したのが特徴。議員側は入力や修正、再申請が楽に行え、議会事務局側は集計や検算、黒塗り用スキャン作業が不要になるなど、業務効率化と大幅な事務負担軽減が図られるのがメリットだという。

図 政務活動費管理から議会DX に至る拡張性
※議員名簿管理SaaS「メイカン」は今夏リリース予定。詳しくは「セムカン」紹介ページで。

議会DX前進の大きな力

 会派及び議員に政務活動費が交付されている大阪府議会は、エイブルコンピュータが22年に行った「セムカン」の第1期実証実験に12人の議員が参加し1か月間体験した。その結果、書類作成時間が半減するなど有効性が認められたことから、3月22日の全議員対象の体験会に至った。

 政務活動費検査等協議会座長を務める紀田馨議員は、「当議会は議会の経費圧縮を主眼に議会改革を進め、この10年近くで議員定数の約3割を削減し、議員報酬も3割カット。議会DXとしてペーパーレス化を進め、オンラインによる委員会も行っています。ですから、デジタル活用による政務活動費の管理業務効率化は当然の流れとして受け止めました」と強調。操作が簡単でIT機器に不慣れな議員でも使いこなせ、書類作成時間が短縮され、ペーパーレスが進むことや、議会事務局職員の事務負担が大幅軽減されることに大きなメリットを感じたという。


大阪府議会議員・同議会政務活動費検査等協議会座長の紀田馨氏。

 また、「セムカン」は情報公開機能を備えている。収支報告書のPDFをWeb上に載せるだけでなく、データを活用して支出金額や割合のグラフでの表示や会派別・議員別・費目別等の絞り込み表示など、議会の公開情報のレベルに応じて分かりやすく開示することが可能となる。
「有権者が高い関心を寄せる政務活動費の使途の積極的な開示により、開かれた議会が前進することは間違いないでしょう。「セムカン」は議会DX前進の大きな力にもなるので、導入しない理由はないと個人的には思います」と紀田議員は導入へ向けて前向きに検討したいと話す。

大阪府豊中市議会(定数34人) 長年の慣行を見直す機会に

 大阪府豊中市議会も、20人以上の議員や会派のスタッフが参加して、3月29日に「セムカン」議員体験会を開催した。同議会では各議員にタブレットを支給し議案書等のペーパーレス化を図り、ビジネスチャットによる議員と議会事務局や議員間のオンラインでの連絡体制を整備。さらにオンライン会議の準備を進めるなど、議会DXを着実に進めている。

 そのような中、会派に交付されている政務活動費の管理は、領収書を紙に貼付し、必要事項を手書きで記入した支出書類を半年ごとに議会事務局に提出する方法で行ってきた。「長年の慣行による処理方法で進めてきましたが、紙資源の無駄という問題意識はありました。セムカンについての提案を受け、革新的な処理方法で議会DXが前進すると感じました」と藤田浩史議長は話す。


豊中市議会議長の藤田浩史氏。

 「セムカン」を体験した率直な感想としては、「シンプルで、使い勝手が良さそうだと感じました。ITは苦手だという議員も、慣れれば問題なく利用できるでしょう。ペーパーレス化と業務効率化が一気に進み、また、データの活用によって政務活動費の使途の分析や市民への分かりやすい開示が行えるのも大きな利点だと思います。各議員へアンケートを行い、会派の代表者会などで導入を検討していく予定です」と話す。

 エイブルコンピュータは、「セムカン」の本格運用に向けて24年6月に全国標準となるSaaS版の提供を開始する。導入の際は基本的に標準化された仕様に合わせる必要がある一方、各議会の管理方法等に合わせたカスタマイズも可能としている。

 また、議員や会派ごとの導入も可能だが、大阪府議会の紀田議員は「議会事務局の事務負担の軽減効果を高めて、情報公開までのフル機能を発揮させるには、議会全体での導入が望ましいと思います」と話す。

 エイブルコンピュータは、SaaS版の提供に合わせて26年3月まで費用負担なしで利用できる「導入支援プログラム」を用意している。その前段階として、まずは「セムカン」体験会への参加を働きかけている。

 

政務活動費管理SaaS「セムカン」紹介ページ
URL:https://semkan.jp/
「セムカン」紹介ページはこちら

 

【企画提供】 ㈱エイブルコンピュータ
URL: https://ablecomputer.co.jp/

 

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