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自治体最新情報にアクセス|DATABANK2024 月刊「ガバナンス」2024年4月号
地方自治
2024.05.02
目次
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(月刊「ガバナンス」2024年4月号)
●ガバメントクラウドを活用して「書かない窓口」をオープン
和歌山県紀の川市(6万人)は、2024年1月16日、デジタル庁が推進するクラウドサービス「自治体窓口DXSaaS(Software as a Serviceの略)」を活用し、ワンストップでの申請手続きが可能な「書かない窓口」をオープンした。同クラウドサービスを利用した書かない窓口の運用は全国初という。
「自治体窓口DXSaaS」は、政府が整備・運用する、政府機関と自治体のための共通のクラウドサービスの利用環境であるガバメントクラウド上で、複数事業者による窓口DXに資する機能(アプリケーション)を提供するもの。自治体にとっては、自前でシステムを用意する必要はなく、自団体の課題やニーズに応じて機能を選択して利用することで、窓口DXに取り組みやすくなるような環境の提供が目指されている。
同市では、2023年4月に策定した「市DX推進計画」において、「書かない、待たなくていい市役所」として窓口のデジタル化の推進を打ち出した。今回いち早く自治体窓口DXSaaSを活用した「書かない窓口」の導入に踏み切ったのもその一環で、住民の利便性の向上とともに、職員の負荷軽減、さらには業務の効率化を進めていくことを目指している。書かない窓口とは、各種手続にあたり、職員が必要なことを聞き取ることで申請書の作成を支援するもので、来庁者は作成された申請書の内容に間違いがないかを確認し、署名するだけで希望する手続きが完了する。1月16日から住民票など各種証明書の交付申請がスタートし、2月6日からは各種ライフイベント(転入、転出、転居、結婚、出産等)に関わる手続きも可能となった。「書かない窓口」オープン初日には、岸本健市長が住民票の発行を体験する様子が披露された。市では今後も住民サービスの利便性向上を図るため、書かない窓口のワンストップ化を推進していくとしている。
(月刊「ガバナンス」2024年4月号・DATA BANK 2024より抜粋)
●高齢者支援に「出かける役場推進室」を新設
鳥取県江府町(2600人)は、健康を維持し、なんとか自活できているものの日常の移動手段を持たない高齢者を支援するため、2024年4月から総務課内に「出かける役場推進室」を新設し、町職員が高齢者宅へ出向いて生活上の支援などを行うサービス提供の検討を開始した。支援の谷間にいる高齢者の困り事などを迅速に解決して生活の質を高めるのがねらい。同室には専任職員2人を配置。高齢者からの依頼を受けて高齢者宅を訪問し、行政手続きの代行や買い物代行、通院支援、デジタルデバイスの利用促進などの支援を行うことを想定している。
また、町は2024年2月に公益財団法人日本ヘルスケア協会(JAHI)とプラネタリーヘルス推進協定を締結した。プラネタリーヘルスとは、人と地球のすべてのシステムは相互に依存し合い密接につながっているという考え方を前提に、人を含む地球の全体最適化を目指す最も統合的なヘルスケアの概念。町とJAHIは協定に基づく連携協力の下で、両者の資源やノウハウを活用してプラネタリーヘルスを推進していく。その一環として、移動診療車(モバイルクリニック)を活用した医師同乗による生活総合診療の実施を目指している。
(月刊「ガバナンス」2024年4月号・DATA BANK 2024より抜粋)
●いじめ反対の意思表示として「ピンクシャツDAY議会」を開催
大阪府八尾市(26万2000人)は、ピンクシャツ運動の一環として、2月28日に「ピンクシャツDAY議会」を開催した。ピンクシャツ運動は、ピンク色の衣服等を身に着けることで、「いじめ反対」の意思表示をするカナダ発祥の取組みで、毎年2月の最終水曜日をピンクシャツデーとしている。
同市では2023年度から同運動を実施。こども総合支援センターの職員がピンク色のシャツを着用したり、生涯学習センターをピンク色でライトアップするなど、さまざまな取組みを行った。同市議会でも、2月最終水曜日にあたる28日に出席者全員がピンク色のTシャツを着用する「ピンクシャツDAY議会」を開催。いじめ防止の取組みに関する活動報告を行うなど、いじめ問題に取り組む市議会の姿勢を発信した。
田中慎二議長は、「多くの方々に市のいじめ防止の取組みを知っていただき、自身の行動を見つめ直していただくきっかけとなることを期待したい。今後も引き続きいじめ根絶のための提言等を行っていく必要があると考えており、本例会の最終本会議で市議会として『いじめ反対』の決議を行い、改めて『いじめを許さない』という姿勢を示していきたい」と抱負を語った。
(月刊「ガバナンス」2024年4月号・DATA BANK 2024より抜粋)
●犯罪被害者支援の専門組織を新設
鳥取県(54万6600人)は、2024年4月に、犯罪被害者支援の専門組織として「犯罪被害者総合サポートセンター」を知事部局に新設した。都道府県が犯罪被害者支援の専門組織を設置するのは全国初。
県は2023年7月に被害者遺族や有識者などで構成する「犯罪被害者に寄り添う支援のあり方検討会」を設置。被害直後から中長期にわたって犯罪被害者に寄り添った支援が行えるよう、相談体制の強化や支援策の拡充について検討が進められ、2024年2月に議論のとりまとめが行われた。犯罪被害者総合サポートセンターはその内容を受けて新設したもので、専門職員を配置してケアマネジメントの手法を取り入れた支援のコーディネートを行うほか、個別事案を調整する支援調整会議の設置、市町村のサポートなどの機能を担う。専門組織は、県庁のほか、県中部の倉吉市と県西部の米子市にも事務所を設置。県と警察が一体となった体制を構築し、情報を共有して迅速な支援を提供する。また、専門組織の執務室に民間支援団体「とっとり被害者支援センター」も入居し、連携して犯罪被害者支援にあたるようにするなど、被害直後からワンストップで支援や相談を行う体制の拡充・強化を図った。
一方、犯罪被害者への支援施策の充実では、経済的な支援として、被害直後の緊急医療と緊急宿泊の支援を拡充するとともに、家事・介護・配食・一時保育等の生活支援を新設した。また、犯罪被害者への直接的な支援として、カウンセリング、法律相談を拡充し、ファイナンシャルプランナー(FP)相談を新設したほか、医療機関や警察、市町村などへの付添い支援を行っていく。
さらには、国の犯罪被害給付制度の抜本的強化の検討を勘案し、2024年度中に県独自の経済的支援を検討していくとしている。
(月刊「ガバナンス」2024年4月号・DATA BANK 2024より抜粋)
●改正民法による新制度で所有者不明の空き家を売却
東京都日野市(18万7300人)は、2023年4月1日施行の改正民法の規定による「所有者不明土地・建物管理命令」を活用した空き家の解消に乗り出している。所有者不明土地・建物管理命令とは、所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地や建物について、管理の必要性があるときに、裁判所が管理人を選任し、その建物の管理を命令する処分制度。選任された管理人は、裁判所の許可を得て土地や建物を売却することができる。
市は2023年6月13日に、所有者不明の築後約50年の木造の空き家と敷地について地方裁判所に所有者不明土地・建物管理命令の申し立てを行った。その結果、同年10月27日付けで裁判所より管理人(弁護士)が選任され、所有者不明の空き家状態を解消するために売却などを進めている。同命令の申し立ては全国自治体で6番目、東京都内の自治体では初の取組みとなる。
市では、改正民法の規定を活用した空き家対策の他、空き家になる前の周知啓発や、空き家になってからの売却処分の支援や空き家利活用のマッチングなど総合的な施策を展開。処分と利活用の両面から空き家対策を推進している。
(月刊「ガバナンス」2024年4月号・DATA BANK 2024より抜粋)
●環境に貢献する事業を3段階で評価
静岡県磐田市(16万7500人)は、新年度の主要事業における環境価値を明確にするため、環境に貢献する事業を3段階で評価する取組みを行っている。市は、2017年度に「第2次磐田市環境基本計画」を策定し、2021年6月には50年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を表明。2022年度に策定した「第2次磐田市環境基本計画後期計画」では、消費エネルギーの削減や再生可能エネルギーの利用促進に関する施策などを掲げ、脱炭素社会の実現に向けた取組みを推進している。
環境に貢献する事業の評価は、従来の必要性や費用対効果などの予算査定に加え、新たに「環境対効果」指標を盛り込んで、脱炭素につながる「投資」であることを市民や市職員に明らかにするのがねらい。2023年度の予算策定時から評価を開始して、市内外に公表している。具体的には、新年度における主要事業のうち、二酸化炭素の削減が見込まれるなど環境に貢献する事業を3段階で評価し、その事業に環境マーク(1~3)を付与している。
2024年度の主要事業では、以下の事業が環境に貢献すると評価された。▷環境マーク3の「CO₂が50%程度削減するなど著しい環境効果が見込まれる事業」として、豊岡支所庁舎の整備、消防庁舎の整備推進、向陽学府小中一体校の整備推進、「書かない・行かない」窓口の本格運用、▷環境マーク2の「CO₂の削減が次年度以降も見込まれる又は他課へ水平展開が望める事業」として、磐田市立総合病院にソーラーカーポ-トを設置、省エネ家電買替促進キャンペーンの実施、▷環境マーク1の「単年度においてCO₂の削減が見込まれる事業又は中長期的に確実に見込まれる事業」として、海岸堤防の整備推進、中小企業のDX・脱炭素投資への支援、若者、子育て世帯の移住定住を支援。
(月刊「ガバナンス」2024年4月号・DATA BANK 2024より抜粋)
●観光と医療を結びつけた「医療版ワーケーション」を展開
広島県福山市(46万700人)は、医師不足の解決に向けて、MRT㈱ と㈱JTBと連携し「医療版ワーケーション」の取組みを進めている。
同市では、医師の働き方改革と地域に不足している小児科医の確保という社会課題の解消を目指して、2022年度に全国に先駆けて「医療版ワーケーション」の取組みをスタートした。医師に市を訪れてもらい、同市を含む備後圏域6市2町(広島県福山市、三原市、尾道市、府中市、世羅町、神石高原町、岡山県笠岡市、井原市)の観光地をめぐり、美しい景色と地元のグルメを堪能しリフレッシュしてもらった後、福山夜間小児診療所で短時間の勤務を行ってもらうもので、いつもとは異なる医療環境の中での仕事を通じて新たな出会いや交流を生み出し、参加者同士が互いに学びを得る機会にしようという取組み。
これにより、将来的に医師の移住や2拠点勤務、オンライン診療などの可能性を探る一方、地域の医師の労働負担軽減などの課題解決にも貢献することが期待される。全国初の試みとなった2022年度に続き、23年度も複数回実施。24年度も「医療版ワーケーション」の継続実施を予定している。
(月刊「ガバナンス」2024年4月号・DATA BANK 2024より抜粋)