【特別企画】関係人口拡大に寄与するプログラム「放課後企業クラブ」 北海道北竜町 地方自治体と民間企業のフラットな関係で新たな価値を創出──

地方自治

2024.01.31

(『月刊ガバナンス』2024年2月号)

一般社団法人つながる地域づくり研究所(つな研)は、地方自治体と民間企業をつなげ、テーマを持って対等な立場で共創する「放課後企業クラブ」を実施している。職員や社員などが意見やアイデアを出し合い、関係を深めながら新たな価値を創出するプログラムだ。北海道北竜町と花王グループカスタマーマーケティング株式会社(KCMK)の取り組みを紹介する。

課題を分析して施策を提案

 2023年12月21日、北竜町役場において、町職員やJAきたそらち職員、KCMK社員などが「放課後企業クラブ」で進めてきた検討結果の発表会が行われた。会場には佐野豊町長や高橋利昌副町長をはじめ、JAきたそらち北竜地区代表理事の永井稔さんやKCMK執行役員の大森豊さんなどが出席し、職員たちのプレゼンテーションに耳を傾けた。

 検討したテーマは、「ふるさと納税で、ひまわりライスの寄附額を増やすには」。北竜町は特産品である低農薬栽培・特Aランクのコメ「ひまわりライス」などを返礼品にしてふるさと納税に力を入れている。だが、寄附金額は20年度の5億9989万円をピークに減少していることから、寄附額向上とひまわりライスの認知拡大に向けた施策案を検討。課題等を分析した上で、ふるさと納税サイト刷新による訴求力向上や毎年夏に開催している「ひまわりまつり」など様々なイベントでのPRの仕掛け、イベント時のふるさと納税の現地決済サイトの導入、ひまわりライスの特色を強調したリーフレットの作成、都市圏でのひまわりライスの販路拡大の戦略などにより、26年度の寄附目標金額4億6740万円をめざすことを提案した。

 発表を受け、佐野町長らは「若い職員の発表の姿を見て頼もしく思い、企業と意見を出し合うプログラムは職員研修としても有意義だと感じた」「町の課題は多岐にわたっているので、今後も継続していければ」と述べ、JAは「ひまわりライスの販売戦略やリーフレットの工夫など気づかなかった提案を受けたので、可能なものから実行に移したい」と高く評価。KCMKも「参加社員が町の課題を自分事として考えた成果。今後も様々な側面から町を応援したい」との声を寄せた。


12月21日の発表会。立場の異なる関係者が約4か月間にわたり共に練り上げた成果を報告した。その場で新たな提案も飛び出すなど、予想を超えて有意義な場となった。

 

自治体と企業をつなぐ

 放課後企業クラブは、地方創生やまちづくりの伴走支援などを行っている現場支援組織のつな研が、内閣府の関係人口創出・拡大のモデル事業に採択されて21年度から進めている取り組みだ。
「まちづくりの現場を回っていると、官民連携に取り組みたいが民間企業との接点やつながりがないという自治体の声を耳にします。対して都市部の企業からは、社員のキャリア開発・キャリア自律支援に向けて社外との交流機会、特に越境体験を提供したいという要望があります。そこで自治体や地域と企業をマッチングし、地域について共に考える仕組みを考えました」とつな研代表理事の一井暁子さんは話す。


北竜町企画振興課課長補佐・森千晶さん。

 放課後企業クラブの特色は、自治体と企業を組織と組織でつなぐこと。自治体職員や地域住民、社員などが参加し、対等な立場で対話を重ねて一緒に創り上げるセレンディピティプログラム®により、双方の関係構築のきっかけを創出する。同プログラムは、主にオンラインで実施し、現地視察も交えながら隔週で4回程度のセッションを重ねていく。両者の関係を深化・拡大させることで協働事業や企業人材の派遣まで発展する事例もある。つな研は、これらのマッチングからファシリテート、関係性の深化・拡大の過程まで支援している(参照)。

図 「放課後企業クラブ」概念図

 

企業の視点が大きな刺激

 北竜町では22年度に引き続き、23年度も9月から12月まで実施した。

「庁内だけでは限界があって外のアイデアも聞きたいとの思いから、今年度のプログラムのテーマはふるさと納税寄附額の向上にしました。JA職員や生産農家も参加し、それぞれの立場から意見を出してもらいました」と窓口を務めた企画振興課課長補佐の森千晶さんは振り返る。


つながる地域づくり研究所代表理事・一井暁子さん。

 プログラムには北竜町職員3人をはじめ、JA職員と生産者各1人、KCMKの社員5人が参加。1泊2日の現地交流と3回のオンラインセッションを重ね、5回目の12月に提案内容を発表した。

「企業からは様々な視点や指摘を提示され、参加した職員には大きな刺激になったようです。特に、マーケティング手法について学ぶ機会が得られ、新しい視点からふるさと納税を考えることができたと話していました」と森さんは手応えを話す。

 一井さんは、「大手企業が参加しており、企業の社風と自治体の置かれた状況などを踏まえてマッチングしています。セッションを進めていくうちに引き続き関わっていきたいという企業側の気持ちが強くなり、次のステップへ進んでいくケースも少なくありません。それが広がれば地域活性化や関係人口創出につながり、地方が元気になると確信しています。放課後企業クラブは自治体側に特別な予算は必要ないので、ぜひ参加してください」と話している。

表 全国に広がる「放課後企業クラブ」主な実施事例 50件以上(24年1月現在)

 

企業の参加者に聞く(花王グループカスタマーマーケティング㈱:KCMK)──気づきや学びを自らの成長につなげたい

川田諒介さん(39歳)
日常業務にはない発想や気づきが得られるのではないかとの思いから参加しました。プログラムを通じ、町やJAは公平性や手順を大事にしていることや、将来を担う若い世代に期待していることを感じました。自分も若い世代として仕事に向き合っていかなければと思いました。

立花康佑さん(33歳)
自分のキャリアのプラスになればというのが参加の動機です。様々な立場の人たちと議論を重ねながら提案をまとめていく中で、変化や成果をもたらすには周囲を巻き込む力が不可欠であることに気づきました。今後も、ひまわりまつりなどを通じて町と関わっていくつもりです。

坂下尚治郎さん(27歳)
北竜町を訪れるのは初めてで、ワクワクしながら参加しました。行政の仕事やふるさと納税の仕組み、農業について知る絶好の機会になりました。学びながら提案したことをきちんと受け止めてもらえ、自信と達成感を得ました。その経験を今後の成長に活かしたいと思います。

【企画提供】 一般社団法人つながる地域づくり研究所
URL:https://tsunaken.net/
TEL.086-206-6224

「放課後企業クラブ」HP
https://houkago-club.net/

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