議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第87回 議会のデフォルトは普遍的なものなのか?

地方自治

2024.02.15

本記事は、月刊『ガバナンス』2023年6月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 統一地方選挙が終わった時期でもあり、今号では特に新人議員が普遍的なルールとして認識しがちな議会のデフォルト(初期設定)について、その変換の必要性も含めて考えてみたい。

■「新人」であることのデフォルト

 議員は基本的にベテランも新人も同報酬である。もとより報酬は、自らの裁量で行った仕事の成果への対価とされているところから、法は新人にもベテランと同等の成果を期待している。その観点からは、報道でよくある「職責を果たせるようこれから勉強します」との新人議員のコメントは不適切ということになる。法は当選時点で議員としての職責を果たせる者が、選挙で選ばれているはず、との立て付けになっているからである。

 それは研修に関する法体系からも推察される。一般職の公務員には、地方公務員法(以下「地公法」)第39条で、研修を受ける権利が規定されている。だが、地公法の適用外となる特別職は、職責を果たす能力を有するものが任命される職との考えから、そのような規定はない。法は特別職である議員が、今さら研修を受けることなど想定していないのである。

 もちろん、研修など必要としない新人議員ばかりでないのが現実であろうが、立法趣旨以外にも、議員報酬の原資となる税金を払う市民の目線からは、新人にも同額の報酬を払うのであれば、任期当初からベテランと同等の働きを期待するのは当然で、「当選してから勉強されていたのでは困る」のである。

 議会(事務)局としても、公費から議員研修の費用を支出することは法的根拠がない以上、議会基本条例に根拠条項を設けるなどの根拠規定を整備しない限り、不当支出の誹りを受けかねないことに留意すべきであろう。

■「議員の仕事」のデフォルト

 一方で、多くの新人議員にとっては、直近の定例会での一般質問の調製が関心事であろう。実際、「一般質問をしたくて議員になった」と公言する議員は珍しくない。

 だが、確かに暴露型の一般質問が端緒となり、結果的に行政が正されることもあるが、それをもって一般質問が議員の主な仕事であるとは言えないだろう。

 一般質問は議員個人としての活動であり、機関としての議会活動の本質とまでは言い難いからだ。法的にも根拠はなく、それぞれの議会で定める会議規則(注)に根拠規定を置いて行われているものであり、法的には機関として必ず行わなければならないものではない。

(注)大津市議会においては会議条例

 議会に課せられた最大の義務は、議決機関として議決することであり、議員にとっては、合議制機関の構成員として、議案審議の過程で議論し、賛否を決めることが最も重要な仕事である。立法趣旨と議会の実態や議員の意識が、最も乖離している例ではないだろうか。

■議会のデフォルト変換の必要性

 だが、この誤解を全て新人議員に帰責するのは酷だろう。それは、議会運営に限って述べれば、多くの議会の「本会議」は議論の場としては形骸化しており、議案審議過程での議員間討議など想定されていないのが実態だからだ。

 議会としては、法が求める議事機関の姿を実現するために、機関の本質にふさわしい議会運営へのデフォルト変換が、今こそ求められるのではないだろうか。

 

第88回 『住民認知度向上に求められるものは何か?』 は2024年3月14日(木)公開予定です。

 

 

Profile
早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員・前大津市議会局長
清水 克士 しみず・かつし
 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長、局長などを歴任し、20233月に定年退職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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清水 克士

大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員

しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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