月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2023年9月号 特集1:2024年問題と地域 特集2: 都市型水害にどう備えるか

地方自治

2023.08.31

●特集1:2024年問題と地域

長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現をめざして2018年に制定された働き方改革関連法。19 年から順次適用されていたが、5年の猶予期間が設けられていた自動車運転業務、建設業、医師について、24 年4月から時間外労働の上限規制が適用される。生産年齢人口が減少し、社会全体の人手不足が深刻な中で、労働環境の厳しさが指摘されてきたこれらの分野では、この規制強化によってさまざまな問題=いわゆる「2024 年問題」が起きることが予想され、業界のみならず、社会としてどう向き合うかが問われている。特にトラック輸送などの物流はもはや日本社会に不可欠なインフラであり、サービスの質や量の低下や価格の上昇は、他産業や人々の暮らしにも大きな影響を及ぼす。すでにそこまで迫っている2024 年問題に地域や自治体はどう対応していくのか。今月は考えてみたい。

■2024年問題と働き方改革/首藤若菜

首藤若菜
立教大学経済学部教授

物流などのいわゆる「2024年問題」は、近年進められている「働き方改革」の流れの中で顕在化してきたものだ。その背景には人口減少下における人手不足の問題などもある。こうした「2024年問題」の全体像やその中で自治体や地域に求められることなどについて、労働問題の視点から物流危機などを掘り下げてきた首藤若菜・立教大学教授に話を聞いた。

■物流危機で地域に何が起きるか/大島弘明

2024問題による「物流危機」で地域に何が起きるのだろうか。例えば、各地で「モノが作れない(原材料や部品が調達できない)」、「モノが運べない(生産品を流通業者や小売業者、消費者に届けられない)」、「モノを買えない(商品や購入品が届かない)」といった事態が起きる危険性は小さくない。2024年問題も含めたドライバー不足問題は、トラック運送事業だけではなく、産業界を含む我が国社会全体で真剣に目を向けなければならない課題なのである。

■持続可能な物流と地方自治体/矢野裕児

2024年問題に対し、政府は様々な検討を進めているが、地方自治体の対応は、一部を除いて遅れているのが現状である。民間企業が展開する物流活動が、地方自治体の施策展開に、直接結び付くものは少ないともいえる。だが、災害が起こるたびに、物流が経済活動、産業活動、そして我々の生活を支えているということが話題となり、さらに物流危機によって、物流の重要性に対する認識は高まってきているのである。

■建設業の2024年問題をどう乗り越えていくか/蟹澤宏剛
建設業の2024年問題は、建設業に対する改正労働基準法の施行(2024年4月)を指すものであるが、広義には消費税インボイス制度開始( 23 年10月)を含む。後者は、建設業に特有のものとされ、長年、根本的な解決を回避してきた一人親方問題が関係しており、また、これらの問題は複雑に絡み合っているからである。建設業の労働問題は複雑で分かり難いが、本稿ではできる限り噛み砕いて解説してみたい。

■医療の働き方改革と自治体病院/伊関友伸
24年4月の医師の労働時間導入は待ったなしの状況にある。現実に何が起きるかは分からない。大きな混乱が起きる可能性の中で、各病院・地域は、先を読んだ着実な準備を行う必要性がある。

〈取材リポート〉
■ITを活用した共同輸配送サービスの実現で2024年問題に対応/岐阜県
岐阜県は2022年度に、国のデジタル田園都市国家構想推進交付金を活用して、「サスティナブルな地域物流モデル事業」を実施した。同年3月に策定した岐阜県デジタル・トランスフォーメーション推進計画に基づく取り組みの一環。製造事業者からの出荷情報と運送事業者からのトラック空き情報をマッチングし、共同輸配送を実現するとともに、倉庫バースの予約機能を提供することでトラックの待ち時間を削減する仕組みだ。共同輸配送については荷主企業・運送事業者ともすでに100社以上が契約するなど、順調に推移している。その一方、荷主側の商慣行など、越えるのに時間がかかりそうなハードルも残されている。

 

●特集2:都市型水害にどう備えるか

今年も記録的な大雨による災害が相次いでいる。7月上旬から中旬にかけて九州北部や北陸地方を中心に梅雨前線や線状降水帯などにより、浸水や土砂災害が発生。さらに、7月中旬には、秋田県を中心に東北地方で大雨が続き、多いところで総雨量400㎜を超え、河川の氾濫などが相次いだ。特に、秋田市では氾濫した川から離れた中心市街地でも、内水氾濫による大規模な浸水が起き、甚大な被害が出ている。気候変動が進む中で豪雨災害は全国各地で発生しており、リスクは全国どこの地域にもある。特に河口部や低地に大都市が集中する日本では「都市型水害」はどこで起きてもおかしくはない。こうした都市型水害にどう備えるか考えてみたい。

■2023年7月秋田豪雨で何が起きていたか/渡邉一也
7月中旬に発達した梅雨前線の影響で記録的な大雨となった秋田県。県内各地で河川が氾濫し、県都の秋田市では内水氾濫も発生した。市内の浸水家屋は過去最多の5000世帯を超え、県内の住宅被害は8月15日時点で15市町村の計6613棟に上っている。被災地域の調査を行っている渡邉一也・秋田大学大学院准教授に現地の状況について聞いた。

■「都市型水害」への自治体の備え~トップの役割とタイムライン/鍵屋 一
危機時はトップダウンで、とよく言われる。本当だろうか。自治体では多くの場合、トップは危機管理のプロではない。それが、法制度上、その地域における災害対策のトップとなるのだから、危うい制度であることを自覚しなければならない。経験あるトップに学ぶことが重要だ。

 

●キャリアサポート連載

■管理職って面白い! コンフリクト(葛藤)/定野 司 ■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
若いうちからの「貯縁」は将来必ず役に立つ/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇 ■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/瀬田恵子 ■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭 ■自治体職員なら知っておきたい!公務員の基礎知識/高嶋直人 ■そうだったのか!!目からウロコのクレーム対応のワンヒント/関根健夫 ■自治体法務と地域創生──政策法務型思考のススメ
/釼持麻衣(関東学院大学地域創生実践研究所)
■キャリアを拓く!公務員人生七転び八起き/堤 直規 ■〈リレー連載〉Z世代ズム~つれづれに想うこと/中西咲貴 ■ただいま開庁中!「オンライン市役所」まるわかりガイド/佐藤麻紀 ■地域の“逸材”を探して/寺本英仁

 

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
斉藤 猛・東京都江戸川区長 人口減少社会を見据え、「ともに生きる」地域をつくる

斉藤猛・東京都江戸川区長(60)。職員として福祉に携わってきた経験から「本当に大変な人は声を上げることができない」と考え、ひきこもりの全数調査など積極的にアウトリーチする行政を展開する。

 

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
「美味しいのに安い」という不当な扱い【汚染処理水放流(8)福島米】
原発事故、続く模索42

福島県の農産品で今も風評被害が深刻なのは桃、牛肉、そして米だ。米は全国有数の産地として知られているのに、原発事故後は価格が低迷。市場では「美味しくて安い米」という不当な扱いが定着してしまった。これでは農家の暮らしが成り立たない。県は新しいオリジナル品種「福?笑い」を起爆剤にして転換を図りたい考えだ。果たして風評は吹き飛ばせるだろうか。

□自治体政策最前線──地域からのイノベーション
起業志民プロジェクト
──ICT起業家の育成を推進し地域課題解決と新産業創出を図る(岩手県八幡平市)

岩手県八幡平市は、ICT関連の職を求める若者の転出に歯止めをかけるため、新たなビジネスの創出をめざした「起業志民プロジェクト」を進めている。無償でプログラミング言語が習得できる短期集中の「スパルタキャンプ」を開催し、その後も事業化を支援して起業家の育成を図る取り組みだ。市内に十数社が立ち上がり、産学官連携で遠隔医療等に取り組む「メディテックバレープロジェクト」が始動するなど、活発な動きが展開されている。

 

●Governance Topics

□関東大震災から100年を経て、人々には何が受け継がれてきたのか──第54回『都市問題』公開講座 公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所は7月22日、都内で第54回『都市問題』公開講座を開催した。今回のテーマは「関東大震災100年││ひとびとは何を受け継いできたのか」。今年9月で関東大震災から100年になるが、大震災からの復興は地域の人々の中に何を残し、どのように受け継がれているのか、議論した。

□3市の団体が連携し、休眠預金を活用したローカルアクションを支援──「ローカルな総働で孤立した人と地域をつなぐ」事業成果報告会 7月10日、都内で「『ローカルな総働で孤立した人と地域をつなぐ』事業成果報告会」というイベントが開催された。休眠預金を活用した支援事業の報告会で、主催は同事業の資金分配団体である「東近江・雲南・南砺ローカルコミュニティファンド連合」。休眠預金活用事業の中でも先駆的でユニークな取り組みで、今後の展開が注目される。

□縮退局面の中山間地域の未来をどう展望するか──中山間地域フォーラム設立17周年記念シンポジウム 「中山間地域」を支援するNPO法人中山間地域フォーラム(会長/生源寺眞一・東京大学名誉教授)は7月8日にシンポジウムを開催した。テーマは「ポストコロナ期の集落の未来~ローカルコモンズの役割は何か~」。コロナ禍での3年を経て、中山間地域の人口減少、高齢化が進むなか、現状を捉えながら未来の集落像や政策へのアプローチなどについて議論が交わされた。

 

●連載

□自治・分権改革を追う/青山彰久 □新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之 □市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照 □地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚 □“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘 □地域経済再生の現場から~Bizモデルの中小企業支援/藤田敬太(ゆざわ-Biz) □自治体の防災マネジメント/鍵屋 一 □市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹 □公務職場の人・間・模・様/金子雅臣 □生きづらさの中で/玉木達也 □議会局「軍師」論のススメ/清水克士 □地方議会シンカ論/中村 健(早稲田大学マニフェスト研究所) □「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭 □From the Cinema その映画から世界が見える
『福田村事件』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『客観性の落とし穴』村上靖彦]

 

●カラーグラビア

□つぶやく地図/芥川 仁
声を聴き祈る、藍への敬い──岡山県久米郡美咲町
□技の手ざわり/大西暢夫
素材から作る使い続けられる箒──【松本箒職人】米澤資修さん(長野県塩尻市)
□わがまちDiary──風景・人・暮らし
大自然が織り成す絶景 山の稜線を流れ落ちる滝雲(新潟県魚沼市)
□本日開園中 FUN!FUN!動物園③/鶴岡市立加茂水族館(山形県鶴岡市)
【特別企画】 ■幕張メッセに日本のデジタル化をリードするキーパーソンが集結!──地方自治情報化推進フェア2023
■JTBの地域交流事業
地域・旅行者・社会の「三方よし」目指す

 

■DATA・BANK2023 自治体の最新動向をコンパクトに紹介!

※表紙写真は「枝折峠の滝雲」
*ザ・キーノートは休みます。

 

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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