地域の助け合いが自分と家族の命を守る第一歩!~「地区防災計画」の作り方~
地域の助け合いが自分と家族の命を守る第一歩!~「地区防災計画」の作り方~ 第5回 地区防災の実際の作り方と得られる効果③
地方自治
2023.07.31
東日本大震災・原子力災害 伝承館 常任研究員・株式会社 いのちとぶんか社 取締役
葛西 優香
1.地区防災計画作成の7ステップ(再)
今回の投稿においても、地区防災計画を作ろう!と思ってからどのように工程を進めればいいかわからない、と困っている方々と一緒に地区防災計画作成の工程を共に進んでいけるように、地区防災計画作成を始める前に整える7つのステップを提示する。前回は、STEP3~5について事例をベースに詳細を提示した。今回は、STEP6,7の内容を提示したい。改めて、地区防災計画作成のステップは以下である。
STEP1 計画を作成するチームを構築する(この時点で多世代が関わっている10~15名のチームを形成する) STEP2 誰とどの範囲の計画を立てるかを決める(例:町会範囲、小学校区範囲、一棟のマンション範囲) STEP3 話を聞きたい人(協力者)リストを作成する STEP4 計画の範囲に存在する人の属性を整理する STEP5 属している人にできるだけ多く声をかける STEP6 計画の最終形態(目次)を示す STEP7 いつまでに完成をさせるか大枠のスケジュールを決める
2.STEP6 計画の最終形態(目次)を示す
STEP1でチームを結成し、チーム内でSTEP2の計画の作成範囲を決定した(第3回)。次に、対象地域内で「STEP3 話を聞きたい人(協力者)リストを作成」し、「STEP4 さらに地域内にはどんな人が住んでいるのかを改めて把握する」、どんな人がいるかわかったら「知っている」だけではなく、「STEP5 声をかける」ことにより、思い込みで会話が進んでいなかった多世代との交流が生まれてくる(第4回)。
では、次の行動として、「STEP6 計画の最終形態(目次)を示す」に進みたい。地区防災計画の中に提示すべき項目も自由に決められる。誰に指定されるでもなく、自分たちで必要だと思う項目を含める。しかし、防災計画にどんな項目を入れれば良いかはなかなか想像がつかないであろう。そのために各自治体では、地区防災計画のテンプレートがホームページに掲載されている。テンプレートを参考に、自分たちの地域ではどの内容の優先順位が高いかを決定し、第一弾の作成として無理のない目次を設定する。「無理のない」目次が大切なポイントである。テンプレートのまま、全てを作り上げるぞ!という意気込みは素晴らしい。地域のために動く住民の方々の姿勢にはいつも感銘を受ける。しかし、地域で生活することは継続的に行われること、またチームで作成という点から、一人一人が携わるうえでのモチベーションを保ち続けることも非常に重要である。「負担」を感じてしまうと離れていってしまう人もいるかもしれない。また、防災対策として全てを一気に解決することは難しい。地域の特性とそこで生活している人の属性に合わせて、まず自分たちにはどんな内容を考えておくことが重要かをチーム内で話し合って、無理のない目次を設定する。
花畑団地においても足立区のテンプレートを参考にし、作成を進めている。花畑団地では、今、住んでいる人が何名くらい災害時に活動できるかを洗い出し、その方々がどのような行動を具体的にすることで助け合いが生まれるかという体制づくりを優先度高く決めることとした。「8名が2か所の避難所運営に動員されて、その人たちの役割や誰が行くかは決まっていない」など、災害時に自身のいのちを守ることができた後に自治会として動員などの行動が決められているが、具体的に誰が何をするのか決まっていないという地域団体は存在していないだろうか。よく聞く言葉は、「動員」である。「区役所から言われて、自治会から避難所に〇〇名派遣することは決まっている」「区役所から言われて、災害時の組織体制の提出はしている」、という話を聞いたことがある、又は、ご自身が発したことはないだろうか。区役所にはなぜそのようなことを言われて、何のためにどんな役割を具体的に担うために、人を派遣し、一度、派遣(動員)された方々は交代できるのか、また組織体制を行政に提出しているものの、提出した人以外の自治会役員はどんな体制を提出しているのか把握していない、という現状が広がっていないだろうか。地区防災計画は、「言われた」から作成するのではない。自分たちの町に必要なことを自分たちで考えて、優先順位も決めて目次を設定し、その目次を一つ一つ検討しながら作成を進めていくのである。
3. STEP7 いつまでに完成させるか大枠のスケジュールを決める
目次が決定したら、次の「STEP7 いつまでに完成させるか大枠のスケジュールを決める」に進む。決定した目次をどのくらいのペースでいつまでに決定するかを決めて、そのスケジュールに沿って作成作業を進める。「大枠」と提示したことにも意味がある。「いつまでに〇〇しなければならない」と義務感を背負うことはお薦めしない。締切が迫ってくると焦ってしまい、議論が深まらないままに結局、チームの誰かが「決めてしまう」という状況が生まれるのである。一方で、いつまでも作成に時間をかけていても、災害は待ってくれない。無理のないスケジュールで完成の目標は決めて、作成を始めていきたい。
地域で活動する際に非常に重要になることは、「同じ目標(ゴールイメージ)」を持つことができているか」だ。誰かが推進している時、その誰かの中には「目標(ゴールイメージ)」があるかもしれない。しかし、その頭の中のイメージは他のチームメンバーと同じものになっているだろうか。イメージのすり合わせを怠るといつまでも違う方向に向かって突き進んでしまい、何か話が嚙み合わない、なかなか完成に近づかないなど行き違いが発生してくることを経験したことはないだろうか。チームメンバー全員で、目標(ゴールイメージ)を共有し、話し合いを進めていく。完成の大枠スケジュールに沿って、地区防災計画の目次を一つずつ決定していく。この地道な作業を積み重ね、自分のいのち、大切な人のいのちが救われる可能性が少しでも高まるように作業を進めることで、あなたが住んでいる地域独自の魂のこもった地区防災計画が作成されるのである。
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