事例紹介▶︎東京都 区市町村のBPRをサポートする東京都の取り組み 〜東京全体のDXに向けて〜

地方自治

2023.03.17

この資料は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊J-LIS」2023年2月号に掲載された記事を使用しております。
なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。

事例紹介▶︎東京都 区市町村のBPRをサポートする東京都の取り組み 〜東京全体のDXに向けて〜
(特集 多様化する窓口改革の今と未来)

東京都デジタルサービス局戦略部区市町村DX支援課

月刊「J-LIS」2023年2月号

1 はじめに

 東京都は、基本計画である「『未来の東京』戦略ビジョン」1)において「スマート東京」を掲げ、東京全体のDXに向けた取り組みを推進しています。

 東京全体のDXの推進にあたっては、都庁だけではなく、都内区市町村と連携しながら取り組みを進める必要があります。今回は、その一つの取り組みとして2021年度から区市町村と協働しながら実施している「行政手続等デジタル化推進事業」2)について、これまでの取り組み状況、今後の計画を紹介いたします。

1)https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/12/27/07.html
2)2021年度は「行政手続等デジタル化モデル事業」の名称で実施。

2 事業実施の背景

 日本の高齢者人口は2040年にピークに達するといわれており、少子高齢化による人口減少や労働力不足は社会的な問題になっています。自治体内部においても職員数の減少や税収の減少、技術やノウハウの継承など様々な問題が懸念されており、これらを補うために、紙ベースの手続きや複雑な内部事務処理などが多い行政手続きのデジタル化は以前から課題として挙がっていました。

 こうした中で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機に、自治体のデジタル化の遅れが表面化したことを受け、都としても行政手続きのデジタル化を徹底するべく、「東京デジタルファースト条例」を制定し、書面で行うことを前提としてきた行政手続きを大きく転換させ、いつでもどこでもデジタルで手続きを完結できる環境を整えてきました。

 行政手続きのデジタル化に取り組むためには、まず、業務プロセスを抜本的に見直すことがとても重要になります。新たなシステムを導入して一気にデジタル化を目指すのではなく、まず現状の業務フローを把握し、業務プロセスの見直しから行います。これが、いわゆるBPR(Business Process Re-engineering)と呼ばれる方法です。すでに独自で取り組みを行っている自治体もありますが手をつけられていないところも多く、東京都には広域自治体として、基礎自治体と協働でBPRを推進することで東京全体のデジタル化の底上げを図っていく役割が求められています。

3 これまでの取り組み状況

(1)事業の概要
 本事業では、2021年度に5事業、2022年度に10事業を選定し、BPRサポートを行いました(表-1、表-2)。対象事業の選定にあたっては、単に個別の自治体におけるBPRをサポートするだけでなく、類似の事業を持つ他の自治体への横展開の可能性の高さを基準に地域や事業が偏らないように考慮しました。

表-1 2021年度サポート対象とした5事業
表-2 2022年度サポート対象とした10事業

 また、BPRサポート実施と同時に、BPRについての知識や実施方法の解説、五つの事業で行うBPR事例を映像コンテンツにまとめ、BPRのノウハウを都内の全区市町村へ広く展開しました。

①DXマインドセット(管理職向けに自治体DXの必要性やマインド改革の必要性を解説した映像。部下から相談を受けた際の心構えや判断ポイントも解説。) ②BPRの回し方(BPRを必要とする背景やBPRの概要、得られる効果や手法を説明、実際にBPRを進める手順についても解説。) ③SaaSツール導入のコツ(SaaSツールの概要、活用のメリットを解説。さらに実際のツール導入における心構えも解説。) ④自治体DXの進め方(本事業に参加した五つの自治体が実際に取り組んだBPRのフローなどを解説。取り組みに対する職員のコメントも紹介。)

 作成した映像コンテンツは、東京都デジタルサービス局のホームページ3)上に公開し、区市町村の職員の皆さんがいつでもBPRを学べるようにしています。

3)https://www.digitalservice.metro.tokyo.lg.jp/dxshien/digital.html

(2)東京都としての具体的な支援
 BPRについては、本事業以外でもICTに関する勉強会などでその必要性を伝える取り組みを行っていましたが、こうした勉強会の対象は各自治体の情報担当やDX担当の職員が主になります。そのため、実際の事務を所管する職員までマインドチェンジを促せていなかったのが現状です。そこで本事業では、それぞれの自治体の事務所管担当と頻繁にワークショップを開き、以下の流れで現状フローの洗い出し、課題抽出、改善計画の策定、実行・評価までを伴走型でサポートしました。

 まず、現行の業務マニュアルや手順書を参考に、参加自治体の職員へヒアリングを行い、フローのたたき台を作成しました。そのたたき台を参加自治体の職員が確認・修正を行い、フローの可視化を行いました。続いて、可視化したフローを基に深掘ヒアリングや、ワークショップを行い、ムリ・ムダ・ムラの観点で課題を抽出した上で、各課題に対する原因・分析を行い一覧化し、具体的な改善策を検討しました。Can-Beフロー、To-Beフローについても整理し、実行に向けた改善計画を策定しました。作成した改善計画に基づき、様々なデジタルツールを導入して実証事業を実施し、KPIの達成状況やアンケート等フィードバックデータの分析と今後に向けた検討事項の整理を行いました(図)

図 2021年度業務改善計画スケジュール

 2021年度に参加した自治体からは、「業務処理時間が短くなり、残業時間が短くなるだけではなく、RPA導入により、細かいチェック、確認に追われていた職員の心理的な負担が小さくなる効果があった。」「DXやITツールの導入に対する心理的ハードルがあったが、実際に導入して業務負担が減りそうだというところが見えたので、前向きに取り組んでいく土壌ができた。」「今回BPRを経験し、業務改善の流れを学ぶことができたので、今後は他の業務のBPR、デジタル化も進めていきたい。」等の好意的な感想をいただきました。

4 本事業を通じて見えてきた課題

 本事業の実施を通じ、区市町村の行政手続きのデジタル化、BPRを進めるためには次の点が重要であるとの示唆を得ることができました。

①現状の可視化による検討の具体化:As-Is / Can-Be / To-Beフローなど業務プロセスを可視化し、作業時間等を明確化することで、改善効果を定量的に測ることが可能になります。また、複数名で議論する場合に業務イメージを関係者で共有し合うことが可能になり、課題抽出や解決策の検討に役立ちました。可視化を丁寧に行い、解決策を検討することで、当初想定していた解決策と違う施策の方向性を見出せたケースもありました。

②部門を超えた横連携:多くの場合、ツール導入時には庁内セキュリティ等の障壁をクリアにする必要があります。そのため、事業所管部門が主体的に取り組みながらも、適宜、情報システム部門が一定のフォローを行うことが、BPRをスムーズに進めるためには重要になります。本事業から横連携効果を実感し、継続的に推進するための検討会を立ち上げる動きも見られました。

③ツールに実際に触って試してみる:本事業で初めてクラウドツールに触れた自治体の職員も多かったのですが、実際に触ってみると思っていたより簡単に使うことができるといった感想を多くいただきました。研修などで実際にツールに触れる機会をつくり、心理的ハードルを下げることが、BPRやデジタル化につながるという気付きを得ることができました。

5 今後の展望

(1)区市町村に対する支援のあり方 現在、区市町村においては、自治体DX推進計画に基づき、行政手続きのオンライン化や基幹業務システムの標準化・共通化などに取り組んでいます。本事業では、区市町村が自ら進んで事業に参画したことに加え、委託事業者のサポートもあり、一定の成果を挙げることができましたが、今後、すべての区市町村でBPRを進めるためには、本事業のような支援や研修の他に、多忙な職員でも効率的に取り組める環境の整備が必須です。例えば、フローの可視化を進めるための雛形ツールや、BPRの推進方法が分かるハンドブック、空き時間で学べる映像コンテンツ等が有効だと考えています。また、BPRやツール実装経験がある職員を徐々に増やし、各区市町村でノウハウを共有し合って底上げを図ることも重要です。こうした取り組みを通じて成功体験を共有し、事業所管部門を含むすべての職員が自治体DXの推進に向けて積極的に参画するための機運醸成や組織づくりのきっかけにしていくことも、本事業の大きな役割であると認識しています。

(2)区市町村とのさらなる連携の強化 〜GovTech東京設立構想について〜
 今後、区市町村と協働した取り組みをさらに発展させ、区市町村も含めた東京全体のDXを力強く推進していくため、都は昨年9月、「東京のDX推進強化に向けた新たな展開」をとりまとめました。その中で、行政と民間が協働して斬新でイノベーティブなサービスを生み出す新たなプラットフォームとして、新団体“GovTech東京”設立構想を打ち出しました。

 GovTech東京は、都デジタルサービス局との協働体制を構築し、①都庁各局DX、②区市町村DX、③デジタル基盤強化・共通化、④デジタル人材確保・育成、⑤データ利活用推進、⑥官民共創・新サービス創出の六つの機能を発揮していきます。

 ②の区市町村DXでは、GovTech東京が多種多様なデジタル人材を確保することにより、区市町村のニーズに応じて人材をシェアリングする取り組みを進めていきます。また、東京のスケールメリットを活かし、デジタル機器やソフトウェアなどを区市町村と共同調達する新たな枠組みを作っていきます。

 今回ご紹介した「行政手続等デジタル化推進事業」は都と区市町村との協働の一例ですが、今後は、GovTech東京と区市町村、都の強力な連携により、オール東京でのさらなるDXを推進し、都民が生活の質(QOL)の向上を実感できる社会を実現するための取り組みをいっそう強化していきます。

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