東西南北デジデジ日記 vol.69 今週の担当:【南】今村寛 ◆【自治体DX】デジタルサービスをつくったあとは…④

地方自治

2023.03.02

「自治体×デジタル」を多彩な切り口からゆるっと考えてみる、現役&元自治体職員4名によるリレー日記。今ターンはサービスの広め方をテーマにお届けしています。マイナンバーカードを取得したときの経験をきっかけに「広め方」を考える今回。サービスを作った側、そのサービスを周知(営業)する立場からできることがありそうです。(※本連載は毎週木曜更新です)

―――――2023年3月2日 Thu.―――――――

 

今回のお題は「広め方」

今回のお題は「広め方」だそうです。

自治体ががんばってDXに取り組んでも、使ってもらえないと意味がない。
使ってもらうには、知ってもらわないと。
だからやっぱり「広め方」だ! という話のようで、山形さん(vol.66)は「デジタル施策をするなら、デジタル広報力もちゃんと高めていこう」、千葉さん(vol.67)は「ちゃんと周知して、これまでに投資したデジタル化予算の効果を最大化しましょう。」多田さん(vol.68)は「行政の持つ旧来型の「広める」手法が時代に合っていない」とのご意見でした。

いずれも私は大賛成なのですが、行政施策の周知に関して以前書いたコラムを思い出しました。

 

率先垂範ではなく

これはちょうど1年くらい前に、遅ればせながら私がマイナンバーカードを取得したときの感想をつづったものです。

https://note.com/yumifumi69/n/n548f9aabd0b4

申請手続きが面倒だと思っていたけど意外に時間もかからずスムーズでしたし、その後確定申告での活用やワクチン接種証明書の取得などで利便性も体験することもでき、結局ただの食わず嫌いだったのだと合点がいったという話です。

がしかし、そこで私が気になったのが、国や地方自治体では職員に対して行われているマイナンバーカード取得の推奨(干渉?)。

国、自治体が国民、市民に対して取得するよう推奨しているのだから、そこで働く公務員として率先垂範すべきということなのですが、改めてこの「一般市民の模範となるための取得推奨」について疑問を感じたことを綴っています。

たぶんどこの自治体でも職員のカード取得率を調査し、未取得者に対して働きかけが行われていると思いますが、「公務員だから」という理由で取得させても、その姿を模範として一般市民が追従するのかという問題意識です。

カードを取得した本人が「便利だ」「手続きが楽だ」といった実質的な理由を見いだし、そのことを発信しなければ公務員以外の取得率向上には寄与しません。

職員向けにカード取得をアナウンスするのであれば、同じ公務員同士だから率直な意見を伺いやすいという距離感を利用し「なぜ取得しないのか」を聴取してその障壁を取り除くとか、すでに取得した職員に、取得に至った最終的な動機付けや手続き、利便性への満足度を聴取し、未取得者への推奨に活用するなど、公務員を対象としてテストマーケティングを行い、そこで得た情報を活用して一般市民向けにサービスの改良を進めるほうが効果的なのではないでしょうか。

 

むしろ覆面調査員として

ひとりの公務員としても、模範を示す「率先垂範」ではなく、先に試してみて評価を述べるテストモニターの役割を果たすことができます。

公務員はその職務を通じて一定程度の行政リテラシーを培っており、行政の行う施策事業の企画された意図を広報資料や報道から読み取って理解する能力を持っています。

また、エンドユーザーとして手続きの簡便さ(あるいは煩雑さ)やサービスの品質について評価できる立場も兼ね備えており、行政サービスの評価者として率直な意見を聴きやすい立ち位置にいます。

公務員が読んでわからない広報資料が一般市民にわかるわけがない。
公務員ですら面倒な手続きを一般市民が苦痛に思わないわけがない。

公務員がその意義を感じないサービスを一般市民が好んで利用するわけがないのです。

自分の担当する仕事を市民に説明する資料や説明方法を顧みて、わかりにくい点がないか、違うフロアの職場の職員にチェックしてもらう。
自分が受けた行政サービスに疑問点や不備な部分があれば担当課に伝え、改善に役立ててもらう。

公務員は、行政サービスの提供において覆面調査員として互いにモニタリングを行い、その良し悪しを伝えあうことで、それぞれのサービスをよりよく磨き上げていくことができる存在であり、そのことを互いに意識し合うべきなのだと改めて思った次第です。

 

ポイントは対公務員戦略

振り返って、自治体DXの周知ですが、公務員がまず率先垂範でサービスを使ってみるということに尽きるのではないでしょうか。

その際には、担当している本人がその周囲の職員やその家族にどれだけ利便性を理解してもらえるか、それを大きな声で語ってもらえるか、が鍵になるでしょう。
逆に、便利でないとしたら、どこに改善ポイントがあるのかを行政に精通した公務員としての目線と一般市民の目線を併せ持つ公務員ならではの鋭い目で見極めてもらい、そっと耳打ちしてもらって改善の糸口とする、という関係性も職員同士、公務員同士ならあり得ます。

つまるところ、「広め方」のポイントは、行政のプロとして目線と一般市民の立場を兼ね備えた公務員に対する戦略にかかっていると私は思います。

おあとがよろしいようで? デジデジ!

 

~次回の日記は3月9日(木)に更新予定です!~

 

★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885

★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/

★そのほか、自治体財政の話、対話の話など、日々の雑感をブログに書き留めています。
https://note.com/yumifumi69/

 

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