【リレー連載】「自治体×デジタル」を考える 東西南北デジデジ日記

千葉大右・多田 功・山形巧哉・今村 寛

東西南北デジデジ日記 vol.65 今週の担当:【南】今村寛 ◆【自治体DX】デジタル化の取り組み、1年目、2年目、3年目~の心得④◆

地方自治

2023.02.02

「自治体×デジタル」を多彩な切り口からゆるっと考えてみる、現役&元自治体職員4名によるリレー日記。テーマは、前回に引き続き、「デジタル化の取り組み、1年目、2年目、3年目~の心得」です。役所には異動はつきもの。なれど所属する年数はまちまち。そんな経験を多数もつ、【南】今村さんからの1年目の心得です。(※本連載は毎週木曜更新です)

―――――2023年2月2日 Thu.―――――――

 

年を追うごとに段階を踏む?

今クールのお題は「デジタル化の取り組み、1年目、2年目、3年目~の心得」。
山形さん(vol.62)、千葉さん(vol.63)、多田さん(vol.64)とそれぞれにデジタル化の実務に取り組むうえで、年を追うごとに段階を踏んでギアチェンジして高みを目指していく、デジタル化職人のあるべき姿をご提示いただいています。

私自身はデジタル化を担当したことがなく、デジタル化の実務については同じような理想像を掲げることができませんので、私の特異な体験を踏まえ、少し皆さんと違った切り口でこのテーマにアプローチしてみたいと思います。

私の特異な体験とは「予期せぬ異動」です。

市役所入庁から32年近く経ちますが、これまでに配置された職場は15か所。1か所あたり平均の在籍年数は約2年です。
最長で5年在籍した職場もありますが最短は3か月。
これを含め、1年以内での異動も6回経験し、最近は毎年4月に辞令をもらい、毎年職場での人間関係構築と業務内容の上書き修正を行うのが定例化しています。
3年以上在籍し、1年目、2年目、3年目の心得を書けるほどに経験を積むことができたのは32年間でわずか4か所しかないのです。

そう。何が言いたいのかというと、年を追うごとに段階的に仕事の取り組みをギアチェンジしていくことは理想ではありますが、現実的には難しいということです。

 

安全運転が仇となり

私はこれまでのどの職場でも自分から早期の異動を希望したことはありません。

どの職場でも、着任したときには新しい職責、業務内容への期待に胸を膨らませ、新しい職場での人間関係構築を楽しみ、「よっしゃ、いっちょやったるで!」と心の中で頭のねじり鉢巻きを締めなおしていたものです。

しかし、その1年後、たった1年で異動になったときに感じるのは、当然ながら消化不良の欲求不満。
あれもやりたかった、これも手を付けていない、こっちは動き始めたばかりなのに、なぜ今自分が異動になるのかという恨み節しか出てきません。

1年目、2年目、3年目の心得を胸に秘めていたとしても、それがまったく自分の手で実現することができないことが当たり前のようにあるということも私たち宮仕えは覚悟しておかなければならないのです。

ある職場で、着任からたった1年で異動になったとき、私は悔しいという思いから大いに反省したことを思い出します。
その重要なポストに栄転となった私は着任当時かなり緊張を強いられました。

自分に務まるだろうか? 期待に応えられるだろうか?

私は知らず知らずのうちにフルスロットルで踏み込んで失敗することを恐れ、様子見をしながらの安全運転を心がけていました。
その職場に次年度も在籍することを当然のように前提とし、2年、3年かけてしっかり成果を出そうとしたのです。

しかし、1年での異動となったとき、そのスピード感を後悔することになります。
安全運転していることが、自信のなさ、能力の不足ととられたのではないか。
あるいは課題の重要性、緊急性への認識不足ととられたのではないか。

実際にもう少し早めに取り組んでおけば早期の成果につながったはず、というものもありました。

役所の平均的な異動サイクルを勝手に自分のサイクルにあてはめ、段階を踏んでギアチェンジしていこうと考えていたことが仇(あだ)となってしまったのです。

 

明日死んでも構わないように

人は、計画的に生きようとしても、その計画どおりには生きられない存在です。

行き当たりばったりだけでは無駄足や遠回りでロスが大きくなることも懸念されますが、何が起こるかわからないのが人生
計画は計画として必要な場合もあるものの、一方で明日死んでも構わないようにという気構えも必要。

時間とともに自分も周囲も変化します。
今日と同じ環境の明日はありません。

今日の楽しみ、今日やるべきことを明日に延ばすことでその好機を一生涯失ってしまうかもしれないのです。

今回、編集部からのお題に対してこんなアンチテーゼを突きつけることになってしまい、少し気が引けますが、組織的な対応であれば成長段階を踏むというのは大事なことですので、山形さん、千葉さん、多田さんの示す姿も意味のあるものと思っています。

しかし、自分個人の生き方、仕事の向き合い方としては、時間の経過とともに段階を踏もうとすることで失うものもあるということを、私の経験から述べさせていただきました。

異動したらそこに1年しかいられないつもりで、2年目、3年目はボーナスステージだというくらいの気持ちで最初から全力投球しましょう!

おあとがよろしいようで? デジデジ!

 

~次回の日記は2月9日(木)に更新予定です!~

 

★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885

★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/

★そのほか、自治体財政の話、対話の話など、日々の雑感をブログに書き留めています。
https://note.com/yumifumi69/

 

バックナンバーのご案内


バックナンバーはコチラから。

執筆陣のプロフィールはコチラから。

 

アンケート

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

すぐに役立つコンテンツ満載!

地方自治、行政、教育など、
分野ごとに厳選情報を配信。

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツ満載!

地方自治、行政、教育など、
分野ごとに厳選情報を配信。

無料のメルマガ会員募集中

千葉大右・多田 功・山形巧哉・今村 寛

千葉大右・多田 功・山形巧哉・今村 寛

閉じる