民間出向中。|PART2 LINEに出向中。>>>2-2[対談]自治体職員×民間のホントのところ

地方自治

2023.01.12

 

出向での現時点での成長

――岸本さんは、出向されて1年8か月ほどですね。LINEに来て、身についたなと思うスキルは何ですか?

岸本
身についたスキルは、シンプルに言うと、ITリテラシーですね。DXに関する知識、スマートシティに関する知識とか、いろいろな仕事に携わったことで身についてきたかなと感じています。思考やマインドの点でいうと、先ほどの(佐藤)将輝さんが話されていたように、ユーザー目線で考えるところですね。
LINEの皆さんに当てはまるんですが、とにかく、ユーザー目線! 「ユーザーが求めていることって何なんだろう」とか、「ユーザーが改善してほしい点ってどこなんだろう」ということを徹底して考えています。
たとえば、行政手続きに関するソリューションを考えるとき、まず自分たちの目線から意見を出し合うところですね。自分の実体験から、「ここが不便だった」「こうなればいい」という視点で、サービスを検討していく。この視点を大事にしてるんだなあと感じました。これも繰り返しになりますが、ユーザーは、利用する人だけじゃなく、そのソリューションを扱う職員も当てはまります。加えて、LINEにはアンケート機能があるので、幅広くユーザーからの意見を聞くこともできます。実際に、新たな企画を検討する際、行政手続きについてどういったニーズがあるのかアンケートを取って進めたことがあります。そういったところが「やっぱりユーザーファーストだな」と実感しています。
ユーザー目線を行政に置き換えてみると、政策等に対する住民の意見はパブリックコメントなどで聴取していると思いますが、それ以外ではなかなか住民の細やかな困りごとや要望まで吸い上げることができていないと思うんですよね。
今、LINEで働いていてすごく実感できるのは、耳を傾けると、「ここをこうしてほしい」「ここが、もうちょっとこうなっていてたら便利なのに」といった細かい要望や声に、耳をしっかり傾ければ、最終的にはとても最良のサービスにつながるのを目の当たりにしていることです。その実感は、LINEに来たからこそ、得られた部分かなと思います。

 

――今後はどのようなスキルを身につけたいですか?

岸本
常に新しい情報をキャッチアップして、自分をアップデートしていくスキルです。今後、時代がますます急スピードで変わっていきますし、いろんなソリューションも登場します。自治体は多彩なソリューションを取捨選択して、自分の自治体に合ったものを選んでいかないといけない時代が来ています。だから、自分も常に新しい情報をどんどん取り入れていかなければと思います。先進企業であるLINEの皆さんは、情報のキャッチアップ能力がとにかく高い! Slackで各自が収拾した情報を投稿しあっていて、毎朝、それをランダムに確認していました。「この記事に興味がある」と誰かが言えば、「これに詳しい人を知ってますよ」と別の方がどんどんつなげていって。ものすごい早さで情報を入手してきて、ポンポンとアップされていくんです。「情報のキャッチアップは大事」とわかっていたとはいえ、全国に目を向けて情報を取ろうとまではならなかったので…、率直に圧倒されました。

 

佐藤
岸本さんは、大胆さを身につけたら最強だと思います。
岸本さんがLINEに来たばかりの頃、「自治体に帰ったらどんな提案したい?どんな取り組みをしたい?」をテーマにまとめてもらったんですよ。岸本さんは、「地域の団体さん向けに、デジタルツールの活用講座を開きます」とおっしゃいました。「地域コミュニティにデジタルをどんどん入れていくという取り組みを、市役所の職員担当として、社内・庁内を口説いていきます」と。岸本さんは、自分でロードマップを描いてみて、誰に何を言い、誰に稟議を通すか…といったことまで具体的に考えていて、レベルの高い自治体職員の方だなあという印象でした。その後も、スケジュールがタイトな仕事の遂行力や実行などが非常に鍛えられていきましたよね。
そんな岸本さんが大胆さを身につけたら本当に強い。「どこまで言っていいのか」と空気を探る雰囲気、正直、自治体職員の方によくあると思うんです。いい意味で空気が読めたり、状況を感知して出しどころを変えたりが上手だったりするので、それに少しでもいいから大胆さがプラスされて自治体に戻ったら、三田市の台風の目になるんじゃないかなって思ってます。台風がいいのかわからないですけど(笑)。

 

岸本
(佐藤)将輝さんはずっと面倒を見てくれていて。折を見て「こんなふうに成長してくれたら」ということも聞かせてくれているおかげで、自分でも「ここに向かおう」と進めていくことができています。
自分に何ができるかは、三田市に戻ってみないとわからない部分がありますが、今はモチベーションがどんどん上がってきています。そして、「そもそも、なんで自治体に帰ってからじゃないとできないと思っているんだろう」と行き着いているのが現時点です。LINEにいる段階から働きかけられることがあれば、むしろ、今からどんどん進めてみたいと思っています。当然、LINEの皆さんの許可ももらいつつ、自分の自治体のいろんな部署の悩みとか聞いては「こうやったらいいんじゃないかな」といった働きかけをするなど、行政の仕事も並行して進めています。その時点で、自分にとってはすごく成長できていると思います。

 

自治体と民間がスムーズに協働するには

――官民協働もすごく大事なテーマだと思いますが、行政機関と民間のどちらも経験された今だからこそわかる、官民協働をスムーズに進めるポイントはなんでしょうか。

佐藤
ポイントは2つあると思います。
1つ目は、自治体と民間どちらも、互いの状況と特徴を尊重することです。
たとえば、相手はどういう人か、スキルセットはどうか、得意・不得手な領域はどこなのかなどを開示しあうことですね。早い段階で、「どう補いあえば相乗効果を出していけるか」を建設的に話し合う場を持っておくのといいと思います。
2つ目は、心理的安全性を保てるような場所づくりです。仕事に対するモチベーションしかり、仕事の状況しかり、今自分がどういう状態なのかをお互いに自己開示して助けを求められる環境づくりは、特に民間側に求められていると思います。自治体の方がもっと自己開示してくれると、民間側も協力しやすいんだろうなと思います。

 

岸本
(佐藤)将輝さんとほぼ同じですが、お互いに歩み寄って、「正しく頼る」のが重要なのかなと思います。やっぱり、企業も行政も、得意な分野、不得意な分野はありますよね。その前提でお互いを理解し合い、「なぜそれをやる必要があるのか」と、「なぜそれが必要とされているのか」をしっかり確認したうえで、同じ温度感で進んでいくことがとても重要だなと思います。私のような自治体職員が民間企業に出向するのもすごく意味がありますし、民間企業と情報交換をする時間を設けようと取り組まれている自治体さんも多くあります。日頃の情報交換だけでなく、相手の懐を知るというか、関係性をうまく築いていくことが大切ですよね。その関係性は、どちらかが一方的に寄りかかるものではなく、「この部分は手伝ってください、頼らせてください」ということが言えるような関係性であるのが理想です。
そのためにも、前提として、取り組みを進める自治体の職員の温度感は重要ですよね。民間企業は、やる気のある行政に対しては乗ってきてくれますし、モチベーションの部分を今後どんどん盛り上げていければいいなと思ってます。

 

自治体DXの現在地って?

――最後に、自治体DXの現在地についてお聞かせください。富士山にたとえるなら、今、どのあたりなのでしょうか?

佐藤
5合目まで車で行った状態でしょうか。ここからがしんどいところなんです。DXをするための情報は持っている、システム標準化や窓口の改革などのワーキンググループも作っている…そんな状態のなか、では今後、「それをどう料理するか」というすごく難しいフェーズにいるのではないかと。5合目まではある程度ショートカットすることができたなか、今は「ここからどうやって登りますか?」っていう段階だと思います。

 

岸本
私も5合目ぐらいかなぁと思いつつ、ただ、その登っているツールが、自治体によって車なのか、自転車なのか、はたまた徒歩なのか、の速度の違いはありますね。本当は5合目まで上がる体力があんまりなかったものを、無理に登ろうとしたところもあり、それゆえ、5合目以降を登るのがとても険しい。だから、試行錯誤しながら取り組んでいる自治体も多いのではないでしょうか。今登っている自治体のなかでも、途中であきらめてしまうところも出てきてしまうのでは…と正直思います。

 

――最後に自治体職員の皆さんにメッセージをお願いします。

岸本
私自身もITについての知識がほぼない状態で、LINEという最先端の企業に来させていただいてわかったことは、DXは行政だからできない、行政だから遅いというネガティブな考えは必要ないということです。DXは2、3年経って成果が出るような取り組みかもしれませんが、その業務に携わっている、または関係する職員がモチベーションを保ち続けながら、自分の自治体にとってのメリット、デメリットを考えていく取り組みであり、無理に進めていけばいいものではありません。全員が同じ方向を向いて進めていければ、成果もしっかりついてくるかなと思うので、ポジティブに進めていきたいと思います。

 

佐藤
常々、「未来にやさしいDXしたいなあ」って思っていて。市民の方々はもちろん、最終的には未来の子どもたちに対して、自分たちがやってきたことが10年後、20年後、30年後に大きな影響を与えられるのが公共・自治体の取り組みだと思います。この視点をもったうえで、「今、デジタルを使ったら、世の中をどうよくすることができるか?」という軸をみんなでもって、活発なアイデア出しや意見交換ができるといいなと思います。

 

~ 終 ~

 

~次回、2-3 ウチならこう活用する!は1月19日公開予定です!~

 

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