民間出向中。|PART1 ヤフーに出向中。>>>1-3[ウチならこう活用する!]DS.INSIGHTに見る山口県

地方自治

2022.11.02

民間企業に出向中の公務員のみなさんに、出向して見えたことや気づきから、官民協働のコツまで、アレコレ紹介していただきます。PART1はヤフーに出向中の山口県庁の船山拓哉さんがご登場。ラストは、自治体職員プレゼンツ・ヤフーのソリューションの活用例です。

 

「DS.INSIGHT」とは

ヤフーでは、検索やメディア・ECなど多岐にわたる事業を通じて蓄積してきたビッグデータをAI技術で分析し、自社サービスの改善に活用しています。
そして、ヤフー独自のビッグデータを活用し、企業や自治体のあらゆる事業活動をデータソリューションサービスとして、DS.INSIGHTというデスクリサーチツールを展開しています。

山口県においても今年4月から導入を開始しているDS.INSIGHTとは、ヤフーの保有する検索や位置情報などの行動ビッグデータを分かりやすく可視化するものであり、データ分析という観点から、自治体のDXを支援していくツールとなります。


DS.INSIGHTの2つの機能 PeopleとPlace

 

機能としては大きく分けて2つあり、1つが上図左手のPeopleというもので、検索のデータを活用した人々の興味関心、トレンド、ニーズを可視化するものです。
右手がPlaceというもので、ヤフーのアプリで位置情報の許諾をいただいている方の人流データをベースに人流や場所、その場所別の関心ごとを可視化するツールになっています。

 

なぜデータ分析が重要なのか

 

■重要な理由1・求められるEBPM

いま、自治体においては、EBPM活動(証拠に基づく政策立案)、施策の企画をその場限りのエピソード(事象)に頼るのではなく、施策目的を明確化したうえでエビデンス(根拠)、合理的根拠に基づいて立案することを推進しているところが非常に多いところだと認識しています。

ですが、なかなかこのEBPMを適用させていくことは難しいところです。

行政が実施する施策・事業が単なる前例踏襲によるものなのか、十分に検討を加えた上で、エビデンスに照らした上で、前年度の執行方法と同じであることがベストであると判断した結果によるものなのかによって、その意味合いは大きく異なり、「実効性に欠けるかもしれないと疑われる慣例的な施策」に対して、合理的な根拠を添えることができます。

 

■重要な理由2 継続施策と役所の将来

「継続施策の精度を高める」ということで、「前年度と同じ」ものでも、EBPMが重要であると言えます。

データに裏付けられた施策の根拠、施策を論理的に説明することができるということは、行政において必要なことです。

近年の行政サービスの広範化、複雑化に対して、各自治体における歳入の減少、社会保障関連の歳出の増加が見込まれている中、人口減少や働き方の多様化といった社会情勢の変化によって、従来のような考え方・手法を持って資源を配分し続けることは困難となることが予想されています。

職員数の減少や、財政的資源の減少といった将来的なリスクを最小化させつつ、限られた資源の効果の最大化を念頭に、行政への信頼性向上を図ることが、データ分析の最も大きな役割であると思っております。

 

DS.INSIGHTで山口県を見る

前述のとおり、山口県においては今年度よりDS.INSIGHTを導入しています。このデータ分析ツールがどのような形で活用できるのかを試行錯誤している段階です。
具体的な施策に組み込まれているものではありませんが、私なりに考えた簡単な一例をご紹介したいと思います。実際の施策ベースでの深掘り分析ではありませんので、その点はご了承ください。

 

■シティセールス

山口県の県産品を取り扱う部署における可能性から見ていくと、どのようなインサイトが得られるのかをご紹介したいと思います。

 


山口県の県産品である冬の味覚「ふぐ」、地元では縁起をかつぐ意味で幸福を呼ぶ存在として「ふく」と呼ばれています。
山口県の県産品の多くはこのコロナ禍によって需要が大きく落ち込みました。
現在その需要喚起策として多くの施策が実施されていますが、その中で、私がご紹介したいのは、データ活用によって「ふぐ」を起点として人々の関心を把握し、セールスのターゲットを抽出します。そして効果的なセールス展開を実施するというものです。

 


こちら、DS.INSIGHT Peopleを使って、昨年1年間で「ふぐ」と検索したユーザーの方のさまざまな割合を示しております。

この内容を分析してみますと、性別割合的にはほぼ同等です。
若干女性が多いところです。
この中で上から2つ目の年代別割合を見てみますと、40代が最も関心が高いと出ています。

では、男女ではどうなのか。
割合的には20~40代の女性割合が高く、40代の割合は最も高い27%です。

以上のことから、ふぐのセールスターゲットを「40代女性」と設定いたします。
上図内の左下グラフは40代女性の方が「ふぐ」と検索した推移を示しています。

旬の時期であるということもありますが、過去4年間、9月から翌年1月にかけて関心が高まりを見せていますので、ここをPR期間に設定いたします。

そこから、40代女性をターゲットとする雑誌や、特設サイト、SNSを活用してプロモーションを展開していきます。これらに県漁協や商工団体と連携し、他の山口県産高級魚と併せて販売を促進していきます。

考慮できていない部分も大いにあると思いますが、データ活用の一例としては、読者の皆様の中で、想像が膨らんだところがあるのではないかなと思います。

 

データの分析と活用にどんどん挑戦

簡単にシティセールスを例として、ヤフーのDS.INSIGHTから山口県での活用可能性を見てみました。

実際に施策の担当者となった場合には、これよりもさらに分析の深掘りを行ってみたり、同じテーマでも異なる角度から分析してみたりするなど、工夫の余地は大いにあると思います。

私自身、ほんの数か月前までデータ分析とは無縁の職場に従事していました。
知識も経験もない中でのヤフー出向、そしてデータ分析でしたが、自分が想像しているよりもハードルは決して高くはありません。

ヤフーのDS.INSIGHTがそれほどまでに初心者でも扱いやすいツールであることは間違いありませんが、まずは気軽にできることからデータ分析と業務への活用を始めてみて、なんか少しおもしろいかもと多くの公務員に思ってもらえたらなと思っています。

 

◆執筆者Profile
船山拓哉
2017年山口県庁入庁。県税事務所、県議会事務局を経て、2022年4月からヤフーに出向中。

 

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ぎょうせいオンライン編集部

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