民間出向中。|PART1 ヤフーに出向中。>>>1-2[対談]自治体職員×民間のホントのところ

地方自治

2022.10.31

民間企業に出向中の公務員のみなさんに、出向して見えたことや気づきから、官民協働のコツまで、アレコレ紹介していただきます。PART1・ヤフー、第2回は【出向中の自治体職員】と【出向先のヤフー担当者】による対談をお届けします。(聞き手:連載担当)

 

<このふたりが対談しました>

\山口県庁からヤフーに出向中/
船山拓哉さん

2017年山口県庁入庁。県税事務所、県議会事務局を経て、2022年4月から出向中
★山口県で好きな場所は「秋吉台」、東京で好きな場所は「浅草、浅草寺」

\ヤフーの担当者/
兵藤安昭さん

Yahoo!地図やYahoo!カーナビを経て現在データソリューションの自治体向け営業やサポートを担当
★よく使うヤフーのサービスは「Yahoo!乗換案内」、東京で好きな場所は「清澄白河」


兵藤さん(写真左):「船山さん、今日はぜひ、山口弁で話してくださいね」、船山さん(写真右):「うわー、それ、難しいなあ…」

 


自治体と民間、お互いのイメージ

――船山さんはヤフーに出向されて半年経過したところだと思います。まず、自治体職員の船山さんから見て、ヤフーに対する当初のイメージはどんなものでしたか?

船山
ヤフーといえば一流企業。決裁には押印は不要で、ペーパーレスで仕事をしている…そういったイメージをざっくりと持っていました。出向のミッションの第一に、ヤフーでいろんな人との関わりをもって、そのパイプを太くしていくことが求められています。そして、山口県庁に戻ったら、出向での経験を生かして県政に反映させていきます。
ヤフーは働き方が自由(*1)。リモート勤務の方がほとんどで、すべて対面で接しているのは兵藤さんのみです。オンラインやチャットなどつながっている状況ではありますが、傍から見ると兵藤さんとしか会っていないんじゃないか、人脈構築は大丈夫か――そんな心配があるかもしれませんが、実際、あまり課題に感じていません。私自身、お互いの腹を探りながら話すことが好きなので、リアルの場が大事だと思っていました。でも、実際にオンラインやチャットで仕事をしてきていて、十分、コミュニケーションをとれるのだと実感しています。対面や非接触の状態でもなくとも、つながれていけますね。

(*1)ヤフーの働き方について船山さんからもうすこし。
ヤフーでは、場所にとらわれずに働くことができる「どこでもオフィス」という制度を設けており、自宅でもカフェでも海でも山でも、インターネットに安定して接続できる環境があれば、会社に通勤せずとも、そこを職場とみなしています。
場所に縛られない働き方を実現することで、社員の才能と情熱を解き放ち、びっくりなサービスを生み出すことを目的としており、個々人が最も創造性豊かに、生産性高く仕事に取り組める場所を自由に選んでいいよ!という環境を整えています。
また、勤務時間はコアタイムなしのフレックスタイム制度を採用しており、1カ月の総労働時間が所定の時間を満たすことを前提に、毎日の始業と終業時間は個人の裁量で決めることができるとされています。私的な用務や育児・介護など、十人十色にさまざまな方の生活環境がある中で、自治体ではここまでの勤務環境整備はなかなか実現が難しく、公務員人生で非常に貴重な働き方を経験させていただいています。

 

兵藤
コロナ禍で感染者数が増大したときは出社は一週間に3回ほどに控えましたが、せっかく来ていただいたのでずっとオンラインではなく話しながら業務を進めていました。対面で、仕事はもちろん、趣味の話などでお互いのことをいろいろ話ししているうちに、完全に相談役みたいになってきています(笑)。東京という街の話もしていますね。仕事ばかりというよりは、1年間、楽しく過ごしていただけるといいなあという思いでいます。

 

――ヤフーさんで自治体職員を迎えられるのは船山さんで何人目ですか? 事前に、どんな方が来られるかという事前情報はありますか?

兵藤
私たちデータソリューション事業部としては今年で2年目です。来ていただく側の我々としては、それだけでもありがたいお話でして、担当部署ではどのような方が来られるかの事前情報はありません。私の印象では、当社には2年連続ですばらしい方にいらしていただいており、自治体側にかなりの配慮をいただいているのだと思います。期待されている方ばかりなのではないでしょうか。

 

――「ああ、ここが公務員らしいな」と感じるところはありますか?

兵藤
公務員イコールまじめという印象で、おそらく世間一般にそのイメージがあると思います。私もまさに同じくですし、昨年来てくださった方も、とてもまじめな方でした。それはどこに顕著に見られるかというと仕事の仕方なんですよ。とにかく、すごく丁寧。普通だったら、「これくらいでいいかな」とある程度ものさしを決めて仕事をする方が多いなか、公務員の方は特に細部を突き詰めて仕上げていく印象です。ただ言われたことをやるのではなく、「自分だったらこうしたほうがいい」という考えもしっかり盛り込まれているんですよね。

当社ではだいたい毎月1回セミナーを自治体職員向けに開催しているんですが、船山さんに登壇してもらったときのことです。船山さん、資料作成だけじゃなく、その資料の下に自分が話す内容を細かくぜんぶ書いたものを用意してたんですね。それぐらい丁寧でものすごく一生懸命です。これを見て、私自身も本当に勉強になりました。

また、こうしてセミナーに登壇いただくのもとてもありがたいことなんですよ。「私は山口県から来ています」と前置きして話していただくと、視聴される自治体の方は非常に親近感を持ってくれているようです。船山さんのセミナーシリーズはもっと続けていきたいなと思います。

 

船山
初めて登壇したのが6月末でした。4月に出向してまだ2か月後で、無茶ぶりだ~! と思いましたね。自治体の場合だと、開催の数か月前に打診があるのが普通ですよ(笑)。

 

――自治体から出向されて、「自治体と民間、ここが違う」と真っ先に思ったところはどんなところですか?

船山
シンプルに言うと、価値観です。公務員は公共の利益を追求するのが業務なのですが、その目的がゆえに、プロセスが複雑です。いろんな人の承認を得なければいけなかったりします。もちろん、ヤフーでもいろんな人の承認を得ますが、自治体はその過程が3倍ぐらい長い。

ヤフーの皆さんは、一人ひとりが前向きな変革意識を強く持っていると感じます。自治体だと及び腰になりそうな取り組みも、ヤフーは「何それ? いいじゃん、おもしろそうじゃん。やってみようよ」というポジティブなマインドがすごい。もちろん課題もあるだろうけど、なんとかすれば解決できるもんだよ、と考える。ポジティブかネガティブかで考えると、ヤフーと自治体は真逆だと思います。

 

――船山さんが感じるヤフーのイメージは「前向きに挑戦する」。これに対して、ヤフーさんはいかがですか?

兵藤
まさにそのとおりですね。ヤフーの創業者の言葉に「ならず者」があるんですが、我々のスピリットとして当然あるんですよね。やはり、よりよいサービスをいち早くお客さまに届けるという思いは全員にあると思いますね。「ヤフーで働くんだからやりたい」が強い。

我々は、ユーザーであるお客さまのことを考えて、どんなサービスなら使ってくれるかを一番に考えて、最良のサービスを提供します。自治体と仕事をするときもそうです。自治体が対象にするのは住民ですよね。一方で、ヤフーの社員も住民であり、ユーザーでもあるわけです。じゃあ自治体にとって何がいいんだろうっていうのはいつもすごく考えます。

これは自治体が悪いのではなく仕組み上、仕方がないんですが、まだ押印が必要なんです。ぶっちゃけますと、これがホントめんどくさい(笑)。でも、押印をなくす自治体も徐々に増えてきているし、変えようと思っている自治体も多い。だから我々も一緒に変えていくことを心がけています。

「これってこういうふうだったら簡単になるんですけど…無理でしょうか?」と提案してみたり。で、却下されたとしても、「わかりました。では、こういう方法はどうでしょう?」と引き下がらない。「実際にやってみたら結構ラクでした」と言ってもらえることもよくあるんです。だから、繰り返しますが、お客さまにとって何がいいかは常に考えています。諦めない姿勢も、前向きに挑戦することなんだと思います。

6月のセミナーでは、ふるさと納税や観光、防災、加えて県産品PRといったさまざまなジャンルの事業に照らして、データ分析をどのように行っていけばいいのかを提案させていただきました。各事業について調べたり、何を必要としているのかを探ったりするのは非常に大変ですが、公務員人生においても非常によい経験になっています。今は出向して半年なので、これからもっともっと深掘りして考えていこうと思います。

 

出向で身に付くスキルって?

――ヤフーで身に付いたと思うスキルと、出向期間中に身に付けたいと思うスキルを教えてください。

船山
難しい質問ですね。まず、身に付いたかなと思うスキルは、データ分析能力が4月時点で比べてみると格段に上がったのかなと感じています。以前は、ニーズやトレンド、観光旅行客の動線などを鑑みた施策展開など観光分野の知り合いから人流について話を聞くこともありましたが、そういう施策立案は30代後半以上の公務員経験を長く積んだ人たちがやるものと考えていました。DXなら、デジタル分野の知識のある人たちがやっていくんでしょう? と。でも、ヤフーで、データ分析で施策を考えることをしてきたことで、データ分析能力は大きく身に付いたんじゃないかと実感しています。

もう1つは、いろんなことを掛け合わせる能力でしょうか。いろんなジャンルの事業に触れてきたことで、「教育分野でこういうことをやっているから、商工分野でも役立ってくるよね」とAジャンルのやり方をBジャンルでも展開させていく発想転換ができるようになってきたと思います。自治体での経験だけだったら、観光政策課配属なら観光分野でしかものを考えなかったのかもしれません。異動でいくつかの部署を経験していたら考えられるのかもしれませんが、私は県庁では今で3部署目ですし、施策立案に携わったことがないので、未経験のことでした。

ヤフーでは兵藤さんなどから毎月のように新しいミッションを与えられます。それがすごく刺激になっていて、これからどんな能力を身に付けられるのかっていうのが楽しみですね。その点からも、これから身に付けたい能力が想像つかないところもあります。兵藤さん、どんな能力が身に付くと思いますか?

 

兵藤
毎月、「今月、ここまでやりましたね。来月はどうしましょうか?」とチェックする時間をもうけるようにしていますから、どんな能力を身に付けるか意識しながらやっていきましょうか。「すごくいろいろやれたな。覚えたな」という実感を持って自治体に戻っていただきたいですし、「1年でコレを勉強した」という成果は残したほうがいいですね。

データ可視化ツールの「Tableau」を使って、データを入れて実際にデータ分析をやってみたり、社内のオンラインのトレーニングシステムで勉強してみたりするのもいいかもしれません。ヤフーには社内の勉強ツールがたくさんあるんですよ。エンジニアが使う言語の勉強など、1つ2つ、最後までやってみると力になるんじゃないかなと思います。前任の方は、ITパスポートの勉強をしていましたね。

 

――自治体が使用するソリューションを効率されるとき、どんな視点を大切にされますか?

兵藤
我々のツールのユーザーは、基本的には企業のマーケティング担当者や新商品の開発担当者が多いです。その点、企業か自治体かの違いだけで、ユーザーが個人ではない点は同じわけですが、もっとも違うのは、自治体の後ろには住民がいることですね。

企業なら自社の利益をあげることを考えればいいのですが、自治体が求めるのは住民の利益になることで、つまり住民の一部である我々に関係することでもあります。直接、ユーザーを見るか、自治体を通じてユーザーを見るかの違いであり、また、住民の一人でもある自分たちにも直結することだから、すごくやりやすい仕事だと思います。

コロナ禍に突入した初めの頃、密回避のため、人流制御が行われたじゃないですか。あんまり人が集まってはいけないと、我々のソリューション「DS.INSIGHIT」(*2)を使って、自治体が見える化をしました。「DS.INSIGHT」なら、実際に、自治体が「あんまり来ないでね」と呼び掛けている場所に人流の画像を表示させることで、「人が集まっていませんよね」と示すことができます。結果的に、住民にも「みんな意識して家にいたから密になっていないね」と実感してもらうことができます。

このように、住民のためになることを自治体が実現するために、我々が少しサポートしているという具合ですが、住民のためイコール自分の身近なことでもあるので、考えやすいと思います。我々のツールをいろんな自治体に使っていただくことで、社員一同、少しでも住民のためになればいいなあという思いでいます。

(*2)次回記事で、船山さんによる「DS.INSIGHT」活用方法をご紹介します。

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