
【リレー連載】「自治体×デジタル」を考える 東西南北デジデジ日記
東西南北デジデジ日記 vol.39 今週の担当:【東】千葉大右
地方自治
2022.07.14
「自治体×デジタル」を多彩な切り口からゆるっと考えてみる、現役&元自治体職員4名によるリレー日記。前回vol.38の【北】山形巧哉さんに引き続き、今回の【東】千葉さんも、新たなお題を投入します。(※本連載は毎週木曜更新です)
―――――2022年7月14日 Thu.―――――――

特別編の評判は?
先々週にお送りしたvol.37特別編はいかがだったでしょうか。
  
  ご覧いただいた方からは「わかりやすい」「刺さった」といったお言葉をいただきましたが、よくよく考えてみると、高尾山の話は後藤さんのお話ですし、他団体の真似の話は庄司先生のお話でした。
  お二方にはこの場を借りてあらためて御礼申し上げます。
  振り返って、人に刺さるオリジナルの話を増やしたいと思った今日この頃です。
今回のお題は「推進」
前回(vol.38)の「業者」に続き、今回のお題は「推進」です。
民間でも使いますが、行政での登場率が尋常じゃなく、もはやお役所言葉だと思ってます。例えば、部署名。民間企業の部署名にはあまり冠されませんし…。
え、そうなんですか。
  4月に課名を「デジタル行政推進課」にしたばかりなんですけど。
  (ちなみに昔在籍していたときの課名は「電子行政推進課」でした。電子がデジタルに変わっただけなのは内緒ですよ。)
  
  で、調べてみたら、本市で「推進」がつく課室は5つありました。
  
  デジタル行政推進課、市民安全推進課、地域包括ケア推進課、ゼロカーボンシティ推進室、クリーン推進課
  
  市民の安全を推進したい! 地域包括ケアを推進したい!
  わかりやすくていいじゃないですか。
なぜ「推進」なのか
「推進」をつけたくなる気持ちはわかります。だって公務員だもの。
  
  それはさておき、なぜ「推進」なんでしょう。
  国は「デジタル庁」です。
  「デジタル推進庁」ではない。
  それなのに、自治体では「デジタル推進課」や「デジタル行政推進課」になってしまう。
  
  これは私見ですが、「目的意識」が影響しているのではないでしょうか。
  デジタル庁は、行政機関では珍しい「ミッション・ビジョン・バリュー」(いわゆるMVVモデル)を掲げています。
    *デジタル庁ホームページ
    https://www.digital.go.jp/about/organization/
  
  これによると、ミッションは
  「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」
  であり、「一人ひとりの多様な幸せを実現するデジタル社会を目指し、世界に誇れる日本の未来を創造します。」との説明がついています。
  
  「推進」はどこにも出てきません。
  逆に言えば、ミッション(とビジョンとバリュー)がはっきりしていれば、「推進」をわざわざ掲げなくてもいいということなんですね。
行動指標と成果指標
似たような話に、「行動指標と成果指標」があります。
  
  計画を策定するとき、指標を設定します。
  例えば「デジタルデバイドの解消」を掲げたとき、指標を「スマホ教室の開催数」とするとそれは行動指標です。
  指標を「オンライン申請数(の増加)」とすれば「成果指標」となります。
  
  今回はこれらの違いに詳しくは触れませんが、行動を目的とするのか成果を目的とするのかの「意識の違い」に通じるものがあるように感じます。
  
  予算を取り、事業を実施すればよかったかつての役所では「行動指標」ばかりでした。
  その反省から成果指標が注目されるようになったわけですが、成果指標の設定って本当に難しいです。
  各種計画の策定に携わり、ここに苦労された方も多いのではないでしょうか。
それでも私たちは「推進」する
最後にもうひとつ、計画の名称を見てください。
  
   自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画(総務省)
   船橋市DX推進計画(船橋市)
   
  そうなんです。
  国が「推進計画」を作り、自治体がそれをもとに「推進」する。
  この構図こそが「推進」が頻出する根本原因なんですね。
  
  国が決めた計画には補助金がついたりもしますので、自治体としては「推進」しない選択はほぼないのです。
  とはいえ、事業の実施だけを目的とせず、なんのためにその事業を実施するのか、「目的意識」を常に持って事業に取り組む必要があります。
  
  今週もきれいにまとめてしまいました。らしくないですな。
  それではまた来週。デジデジ!
  
  
  ~次回の日記は7月21日(木)に更新予定です!~
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