民間出向中。|PART2 LINEに出向中。>>>2-2[対談]自治体職員×民間のホントのところ

地方自治

2023.01.12

民間企業に出向中の公務員のみなさんに、出向して見えたことや気づきから、官民協働のコツまで、アレコレ紹介していただきます。PART2・LINE、第2回は【出向中の自治体職員】と【出向先のLINE担当者】による対談をお届けします。(聞き手:連載担当)

 

<このふたりが対談しました>

\三田市からLINEに出向中/
岸本博樹さん

2018年度三田市役所入庁。協働推進課に所属後、2021年4月からLINEに出向中。
★兵庫県で好きな食べ物は「三田牛(ぜひご賞味ください)」、東京で好きな場所は「押上にあるプラネタリウム天空」

\LINEの担当者/
佐藤将輝さん

マーケティングソリューションカンパニー 公共事業推進室 公共企画チーム マネージャー 兼 ビジネスデザイン室 室長
★LINEの事業開発組織にて、新しいサービスや企画を日夜考案中。
東京で好きな場所は「LINEの四ツ谷オフィス」、好きな食べ物は「お寿司とおそば」


岸本さんはITの知識はいかほど?と尋ねた瞬間、ニヤリとするLINEの佐藤さん(写真右)。それを見た岸本さん、「…(佐藤)将輝さんの表情のとおりです(苦笑)」。

 


――兵庫県三田市からLINEに出向中の岸本さん、LINEに対する当初のイメージを教えてください。

岸本
人事から「LINEに出向してみない?」と出向の話をいただいたとき、はじめはこのLINEだと結びつかなくて…(笑)。LINEといえば自分にも身近なアプリですし、もちろん社名は知っているのですが、日本の人口の約7割(9300万人)が使っているコミュニケーションアプリとなると、実際の業務内容が想像つきませんでした。
出向当時、三田市にはまだLINE公式アカウントがないときで、LINEでの知識を三田市で生かすことと、いろいろな企業とのつながりをつくってくることがミッションとして与えられていると認識しています。

 

――「IT」に対してはどのようなイメージでしたか?

岸本
お恥ずかしながら、出向当時は「行政DX」のDXのことを最初ずっと“デラックス”と呼んでまして……。ITについてはそれくらいのリテラシーレベルでした。当時に比べると、だいぶ成長したんじゃないのかなと個人的には思っています。最初は不安しかありませんでしたが、わからない点は社員の皆さんが教えてくださり、不明点をすぐ潰していける環境のおかげで成長につながっていると実感しています。
LINEでの働き方も、出向初日と2日目だけ出社し、それ以降はすぐにテレワークに切り替わりました。三田市にいたときはテレワークの経験は1、2回ほどでしたので、最初は、業務をスムーズに進められるか不安がありましたが、実際には、とても過密にオンラインミーティングが組み込まれ、1日のうち、誰かと話していない時間がないくらいで(笑)。出向最初の1週間でこのようなスケジューリングだったので、すぐに不安が払拭されました。知らないことはすぐ相談できる環境のおかげだと思います。

 

佐藤
岸本さんとは物理的にいえば3カ月ぐらい会っていないですよね。
出向の目的の1つは、出向先の環境にちゃんと溶け込んで自分の力を発揮することと認識しています。テレワークの経験があまりない方に対しては「まずやってみましょう」と伝えていましたが、みなさん慣れるためにさまざま創意工夫されていたようです。ミーティングが少ない日には先輩に1on1を入れたりもしていて、自然と慣れていかれていますよね。

 

岸本
出向1年目のとき、私と同じように各自治体から出向されている職員が、私を含めて8人いたんですが、空いている時間を見つけては「話し足りない部分があるから話そう」といった時間を設けていました。他自治体から出向されている優秀な仲間と、毎日のように業務に関する相談や情報交換をしていたので、テレワークであっても、日々刺激を得て自身の成長につながる環境がありました。

 

――出向して働き方もがらりと変わられたんですね。

岸本
三田市にいた時もテレワークに対して前向きな雰囲気がありつつも、当初はどこに弊害が生じて、何の業務が止まってしまうのかがなかなか整理しづらかったのかもしれません。続けていくうちに「この課は窓口業務が多いから、人数をあまり減らせないね」という塩梅がわかってくるのですが、このようなことがわかる前のテレワークは自治体にとって結構しんどいものがあったのではないでしょうか。部署によって特色が違うので、無理にテレワークを進めることが却って職員の負担になってしまえば本末転倒で、結果的にテレワークをやめようという流れになってしまいかねません。
「この部署はテレワークができる」「ここはできない」という取捨選択をしっかり行うとともに、紙書類の電子化や各セキュリティ面の強化を進めることで、行政のテレワークも進んでいくと思います。

 

行政と民間の違いって?

――行政と民間、それぞれ違いがあると思いますが、どんなイメージですか?

佐藤
自治体職員の方は、個人のスキルを発揮する場所が普段あんまりないですよね。定型の業務をきちんと果たすことが重要で、その推進においては、きっと、あまり個性を出すなと言われているのかもしれません。でも、普段同じことをやってるからこそ気づきがたくさんあるはず。実際、LINEに来てくださっている方に「これについてどう思いますか?」と意見やアイデアを聞いてみると、もう、4つ、5つといろんなアイデアを出してくれます。「能力隠してるだけでしょ」と思うくらい、本当に優秀な方ばかりですよね。「工夫をしていいよ」と言われることがないから個性を出しづらいのかなと感じています。

 

岸本
(佐藤)将輝さんがおっしゃるとおり、個人のスキルを出して行政の業務に取り組むというのはまったくないわけではありませんが、場面としてはだいぶ少ないと思います。アイデアを仮に出せたとしても、それが実現につながるかはなかなか難しい部分がありますし…。LINEに来て、意見を何でも受け止め、積極的に挑戦していく社風や意見を出しやすい環境がベースにあったので、私も市民目線で、「日頃こうなればいいのにな」と感じていることを伝えることができましたし、「それ、やってみたらいいんじゃない?」と直接、着地につながる感覚を体感できて、とても新鮮でした。
また、新しい事業へのチャレンジに対する積極性については、自治体と民間でまったく違うなと感じます。行政も、いろいろチャレンジしていこうとする意識はありますが、環境や制度などどこかで難しい面があり、ストップがかかってしまうことが多々あります。課題を洗い出してやるべきことをやってみて、途中で難しいと思ったらその時に考えよう、だからいろいろ提案してみよう――そんなスピード感や積極性はLINEこそかなと感じています。

 

――LINEのイイところで、「自治体に持って帰りたい!」と思うのはどんなところですか?

岸本
自治体に持って帰りたい点は多々ありますが、特に挙げるとすれば、「意見の言いやすい環境」です。自治体にもアイデアを持っている職員がたくさんいるので、アイデアや意見をどんどん出しあい、それらを受け入れる場づくりの醸成が進んでいくといいなと思います。

 

佐藤
岸本さんがおっしゃったような環境づくりは、サービスをつくるうえで必要ですよね。自身の原体験をはじめ、ユーザーのニーズが何かを探るのはみんなで発言しあいながら進めていかなければなりません。LINEが大切にしている考え方のひとつに、まさに今お話ししたような「全ての原点は、ユーザーニーズ」というものがあります。さまざまな人の意見を取り入れて反映するという価値観が社内にはあるので、議論の場では、岸本さんの意見も他の人の意見も同じ声の大きさで扱われるのが、組織としての強みです。私自身も、このおかげで今まで成長できていると思います。

 

「使える」サービス構築のためのコツ

――「意見の言いやすさ」は、ひいては、みんなが使いやすい行政サービス構築につながっていく、ということですね。

佐藤
サービスを運用する自治体の職員の方々のこともきちんと念頭に置くことも非常に重要ですよね。自治体も民間も、市民向けに何をするべきか、市民が何を求めているかはもちろんがんばって考えているんですが、それを優先するがために、意外と自治体の職員の方たちのオペレーションの点がないがしろにされているケースがままあるように思います。つまり、職員の方がいかに簡単に処理できるか、業務が効率化されるか、モチベーションを維持できる処理方法か、の点です。サービスを世の中に広げていくうえで、中間である自治体(の職員)がネックになってしまうと、世の中に広まっていきません。そこで、メリットを提供できるものを一緒につくっていくのが重要で、その議論が最近ようやくできはじめているのかなあと感じているところです。市民の立場だけでなく、職員・従業員としての立場として「この仕組みは使いづらいからやりたくないな」と感じてしまうと、使わないじゃないですか。ここ数年でようやく表立って出てきたサービスデザインやデザイン思考はまさにこのようなことだと思います。

 

岸本
使いやすいサービスをつくるためには、自治体が「何がわからないか」「何をするべきか」を事前に整理してると、取り組みが非常にスムーズです。
私自身がITへの知識が乏しいなかでLINEに出向して気づいたのは、自治体向けにサービス紹介をするときに、言葉が伝わりづらかったり、噛み砕いて話しているつもりがITに触れていない人にとっては理解しづらかったりすることが多々あるなあということです。
自治体の職員は日々の業務で忙殺されていますし、ITに関する知識に乏しいのは当たり前だと思います。そのような状態で行政DXを推進しようとする自治体も多く、民間企業の多くはそれに応えたいと思っています。そこをもう少しだけうまく嚙み合わせるために、自治体側は、課題や目標を整理しておくと、すごくスムーズなんじゃないかと。私もさまざまな自治体にLINEのサービスを紹介するなかで、「その課題を解決したいから、これをやりましょう」と話がつながっていく様子を体感し、LINEの立場として自治体と話をするときも、まず課題は何か、ゴールはどこかを確認しながら進めています。
この考えに至ったのは、出向1年目の冬ぐらいでした。今日ご一緒している(佐藤)将輝さんはじめLINEの社員の皆さんが自治体向けにお話しされている場に参加させていただきながら、「こういうふうに説明をすると、こういうレスポンスがあって、こういう組み立てができるんだな」と学ばせていただきました。

 

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ぎょうせいオンライン編集部

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