自治体DXを知る第一歩は、住民課の業務を知ってみること!

遠藤 芳行

自治体DXを知る第一歩は、住民課の業務を知ってみること!

地方自治

2022.11.02

『住民課のシゴト ver.2』
編著者・住民窓口研究会 代表
遠藤芳行(東京都大田区職員)

はじめに――「書いたヒトたち」を簡単に

『住民課のシゴト ver.2』が2022年秋に発刊の運びとなりました。すでにお手に取ってくださった方は本書の「編著者紹介」でお気付きかもしれませんが、冒頭からお断りを申し上げます。

私は本書の著者陣に加わっておりますが、「住民課(当区では戸籍住民課)」の勤務経験はありません。こう書くと、「なんだ、素人が適当に書いた本なのか?」と思われるかもしれませんが、そこはご安心ください! 私以外の執筆陣は「住民課」での実績と豊富な経験を持つ職員であり、本書のほとんどの解説は彼らが執筆しています。

一方、私はと言いますと、情報システム部門在籍時に住民記録、戸籍等の住民課の業務システムの保守管理を担当し、法務省の戸籍システム検討会ワーキンググループに参加した経験をもつ者です。主に住民情報の下流(利用)部門である福祉分野の業務システムから住民課のシゴトにシステムを通して関わり、住民課から生まれる住民情報(住基や戸籍情報)を利用する立場から住民課を眺めてきた者です。

 

ナカの目とソトの目の両方の視点から

本書を執筆した私たち「住民窓口研究会」は、こうした業務知識と経験を持つ者と、住民課の業務をちょっと離れたところから見続けた者が一緒になって、 「住民課ってこうなってほしい」
「こんな知識と意識を持った職員がいてほしい」
という思い、特に、役所の顔、最前線の窓口を担うとともに、 住民、国民の「私が何者であるか」を証する最重要の台帳を管理する
部署の職員としての責任とプライド
を持ってもらいたい。

これに加えて、住民課の職員以外、特に住民情報を扱う部署の職員に対して、
「自分たちが利用する住民情報のデータは、住民課でこうやって出来上がっている」ということを知ってほしい という欲張りな願望で本書を構成しました。

本書の版元、ぎょうせいから「シゴト」と冠した自治体業務別の入門書が何冊か刊行されていますが、このような執筆陣とコンセプトを持った本書は、シリーズのなかで異色の存在かもしれません。
庁内における「住民課のシゴト」を俯瞰的に見る視点をより多く取り込むことができたと思っています。幸いにも読者の皆さんから「読みやすい」「わかりやすい」などとのご支持をいただいています。

 

自治体DXの基礎も学べる!

住民情報の利用部門の一員として、「自分たちが利用する住民情報のデータは、住民課でこうやってできあがっている」を知ってほしいとも申し上げましたが、近年、対応が求められているDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組むときに、われわれ基礎自治体職員としてデータを意識することは非常に重要な事項です。

たとえば、
・統計上で年齢や性別、居住地域ごとに処理するとき
・特定の住民を抽出してサービスの展開を図るとき
をはじめ、
あらゆる場面で想定する「住民」を特定する自治体内でのデータの源泉こそが住民情報です。

そもそも「住民」とは何を意味するのか?
続柄は?
国籍は?
本名とは?
その人をあらわす正しい表記とは?

もちろん、特定の業務ならではの条件はありますが、それらの根本データを生み出す部署、それを規定する業務こそが「住民課のシゴト」です。
このシゴトを知らずして住民データを正確に扱うことできません。
極端に言えば、正しいデータに基づかないデジタルなどあり得ないのです。

さらに、本書で住民基本台帳業務戸籍業務と並べての解説の柱としたマイナンバー業務。自治体DXの最重要ポイントであるマイナンバー制度、そのさらにその基礎となるマイナンバー番号付番、カード交付の事務といったマイナンバー制度に関わる本書の記載の解説は、自治体職員が最低限身につけるべき基礎知識ともいえましょう。

また、DXに関係する様々な施策形成にかかわる国や都道府県の職員にもぜひ読んでいただき、基礎知識を取得していただきたいと思っています。

 

本書の構成

さあ、どうでしょう?
「むむ、この本は自治体職員必携なのでは…」
な~んて気になってきてくれました?
そんな皆さんのために本書の構成を簡単にご説明しましょう。

この本では、「住民課のシゴト」を ①住民基本台帳業務
②戸籍業務
③住民課におけるマイナンバー業務
の3点に絞って解説しています。

第1章では、市区町村の最前線の窓口を担っている住民課について、業務内容や窓口の形態などのエッセンスを解説するとともに、役所内での位置づけや役割を紹介しています。

第2章では、市区町村の区域に住む一人ひとりの基本となる情報を作成する住民基本台帳事務と、日本国民の身分関係を登録し公証する戸籍事務を行うにあたって、それぞれの事務の法律的な位置づけを比較しながら、その事務を実施するときに注意すること、事務を勉強するときのコツ、心構えなどを紹介しています。

第3章は住民基本台帳事務。
(1)住民票に記載されている項目を一つひとつ解説し、 (2)その住民票に係わる手続き、 (3)住民票の閲覧事務と説明した後に、 (4)戸籍と住民票をつなげる戸籍の附票、 (5)住民票の全国ネットワークである住基ネットワークの解説 へと展開していきます。
そして、
(6)住民票とセットになった印鑑登録とその証明事務、 最後には、住民票の事務において近年ますます重要性の増してきた
(7)DV(ドメスティックバイオレンス)支援措置 について記載しています。

第4章では、その制度発足以来、住民課の大きな業務の一つとなっているマイナンバー対応について、
(1)マイナンバーの付番や住民への通知の仕組み、 (2)マイナンバーカードの申請や交付方法、カードに記載されている情報 などについて紹介しています。
マイナンバーやマイナンバーカードが住民課の窓口を通してどのように取り扱われているかがわかると思います。

第5章は戸籍業務。
(1)明治時代から続く戸籍制度の歴史から現代の戸籍の成り立ちと仕組みを紐解くとともに、 (2)想像以上に多種多様な種類がある戸籍の届出を一つひとつ解説し、戸籍の証明について請求方法や審査のポイント、そして種類の概要 を書いてみました。

最後に、付録として重要用語の解説を載せ、本書内に散りばめられたコラムは、ver.2で大幅に加筆訂正を加えボリュームもアップ!
様々な話題をやさしく解説してみました。

住民課の業務は、市区町村役場・役所の最前線です。いつもスマイル=笑顔で住民をお迎えする職員であることを願ってやみません。 本書が皆さんのこれからのスマイルをつくり出すことに、少しでもお役に立てれば幸いです。

 

書籍案内

『住民課のシゴト ver.2』

住民窓口研究会/編著(発行年月:2022年10月、定価:2,530円(税込み)

ご購入はこちら

 

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