3ステップで学ぶ 自治体SDGs
【新刊】「基本・実践・事例」の3つのステップでSDGsを理解しよう!『3ステップで学ぶ 自治体SDGs』
地方自治
2020.10.27
『3ステップで学ぶ 自治体SDGs』発刊
法令出版社(株)ぎょうせいはこのたび、『3ステップで学ぶ 自治体SDGs』全3巻を発刊します。全自治体がSDGsにどのように取り組み、どのように進めていけばよいのかについて基礎から実践までわかりやすく解説した書籍で、地域ならではの取り組みを検討していく自治体職員、自治体と連携して地方創生SDGsビジネスへの事業展開を検討していく民間企業・金融機関の方々に手軽にお読みいただける実践書です 。
ここでは『3ステップで学ぶ 自治体SDGs 第1巻 STEP1 基本がわかるQ&A』から「はじめに」を全文掲載します。『3ステップで学ぶ 自治体SDGs』の狙いとその射程をまとめています。ぜひ自治体関係者の方、SDGsに関心をお持ちの方は、ぜひご一読ください。(編集部)
(書籍の詳細はコチラ)
自治体×「SDGs」
「SDGs」(エス・ディー・ジーズ)という言葉を見聞しない日はなくなりました。SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年国連サミットで世界193か国の合意により策定されました。2030年に向けた17目標からなる、持続可能な社会づくりの羅針盤といえるものです。
例えば、新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)はSDGsとどう関係するのでしょうか。SDGsの17目標のひとつに3番「健康」があり、「感染症への対処」や世界的なパートナーシップが明記されています。今はパンデミックからの「より良き回復」に向けてSDGsの羅針盤機能が注目されています。
パンデミックでは自治体の役割がクローズアップされています。都道府県はもちろん、市町村・特別区の対応が市民から高い関心を集めています。我々は、グローバル化の中で、やはりローカルの一員であると改めて気づいたのです。どの国に住んでいるか、どの自治体に住んでいるか、が重要になりました。
今回の新型コロナウイルスの世界的流行によって、SDGsがリスク管理でも機能することが、いち早くSDGsに取り組んできた関係者に再認識されています。
予期せぬ世界危機が身近に影響を与える時代に、SDGsが果たす羅針盤機能をどう生かすべきでしょうか。もともと、SDGsは、地球規模の困難な課題をどう乗り越えるかという危機感が根底にあってつくられました。SDGsを盛り込んだ国連文書のタイトルは「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。まさに「変革」に役立つように策定されたものです。
新型コロナウイルスによる「グレート・リセット(大変革)」は社会の大きな変革を伴います。SDGsは、ますます不可欠な羅針盤になっていくと思います。これを理解しないと、世界から、日本から、いつの間にか「置いていかれる」ことになりかねません。
そして、SDGsは完全に政策そのものになりました。それも政策の「主流」です。主流というのは、単なる参照事項や枕言葉ではなく、SDGsの推進自体が重要な政策になったのです。
その象徴が「スーパーシティ構想」という最新のシティ政策です。規制緩和と最新技術の組み合わせで異次元の「まるごと未来都市」をつくる構想です。2020年6月に規制緩和部分の国家戦略特別区域法の一部を改正する法律が成立しました。注目すべきは、この構想はSDGsの実現をねらうことです。スーパーシティのマークにはSDGsのロゴも入り「J-Tech challenges SDGs」がキャッチフレーズです。
政府は全閣僚をメンバーとする「SDGs推進本部」をつくり、SDGsの重点分野を、Society5・0、地方創生、次世代育成・女性活躍の3つにしています。関係者にSDGsの推進を呼びかけ、ようやく最近では自治体はもちろん、関係者に広がり「主流化」しつつあります。
政府は「ジャパンSDGsアワード」表彰で、2017年度からの3年間に自治体を含め約40組織を選定しました。また、内閣府地方創生推進事務局が先駆的な取り組みを選ぶ「SDGs未来都市」制度をつくり、2018年度からの3年間で94 自治体を選定しました。全国で47ある都道府県のうち10、1741ある市町村・区のうち84です。
経済界では、対応が早かった世界企業に対し、スロースターターであった日本企業もようやくSDGsを明確に打ち出し始めています。地方創生では、次世代通信技術の5Gをはじめとして企業の創造性とイノベーション力を使わなければ対応できない課題が増えています。これからはSDGs企業を呼び込むにはSDGs自治体が圧倒的に優位に立つでしょう。
大学も含めたSDGs教育で、ポストミレニアル世代がSDGsを自在に使いこなす「SDGsネイティブ」として育っています。地方での人材確保にも関連してきます。
このように、SDGsは、地方創生を取り巻く「まち」「ひと」「しごと」の全てに関連します。
SDGsを「理解・実践・事例」から紹介
ところが、SDGsは世界の共通言語であり重要な羅針盤であるにも関わらず、日本での認知度は低いと言わざるを得ません。英語で外来の概念だということが大きいです。また、日本には「和の精神」などがあるので外来の概念は不要だという雰囲気が根強いからです。しかし残念ながら、日本の考え方がそのまま世界に通用するわけではありません。
このような中で、 SDGs未来都市制度は、自治体間に競争原理を働かせました。なぜあの自治体がSDGs未来都市なのか、なぜ自分の自治体は選ばれていないのかという議論が沸き起こりました。
意識の高い首長はSDGsを使った新たな行政体系の構築に興味を持ち、推進する部局である総合企画や戦略部局も頑張っています。しかし、役所の縦割り構造の弊害で制度や予算の権限を持っている既存部局は、なぜ今更そのような外来の概念が必要なのかと、SDGs推進を阻害していないでしょうか。庁内でコンセンサスがないと、SDGs責任部局は首長からの指示と現場との間で「サンドイッチ」になってしまうわけです。企業の現場でも同じような状況が見られます。
そこで、SDGsの最新情報と関係者への浸透のコツを伝えることが本書のねらいです。
かくいう私は、31年間農林水産省に勤務し、中山間地域活性化推進室長などで地方行政も経験しました。その後、株式会社伊藤園で取締役などとして11年間ビジネスに身を置き、現在は千葉商科大学で教壇に立っています。結果的に、一人で「産官学」の3つを経験しています。
この経験の集大成として、『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版・2019年10月)を出しました。これも生かし本書では、行政と企業の「橋渡し」や地方創生ビジネスの視点も入れます。
この第1巻では、SDGsの本質を理解いただきます。一問一答の形でどこからでも読めます。第2巻ではSDGsを実践するためのメソッドをお伝えします。そして、第3巻では私が実行委員長を務めている「未来まちづくりフォーラム」などの経験も活かし、 SDGs未来都市を中心に事例からヒントを抽出します。
この「理解」「実践」「事例」の三部作は「未来まちづくりSDGs」への羅針盤です。
本書が、自治体をはじめ、SDGsビジネスを考える企業・地域金融機関、大学、メディア、NPO/NGOなどの方、そして政策推進者にとって参考になれば幸いです。
令和2年10月
千葉商科大学基盤教育機構・教授 笹谷 秀光
●執筆者Profile
笹谷 秀光(ささや・ひでみつ)
1976年東京大学法学部卒業。 77年農林省(現農林水産省)入省。 中山間地域活性化推進室長等を歴任、2005年環境省大臣官房審議官、06年農林水産省大臣官房審議官、07年関東森林管理局長を経て08年退官。同年(株)伊藤園入社。取締役、常務執行役員を経て19年4月退職。2020年4月より千葉商科大学基盤教育機構・教授。現在、社会情報大学院大学客員教授、(株)日経BPコンサルティング・シニアコンサルタント、PwC Japanグループ顧問、グレートワークス(株)顧問。日本経営倫理学会理事、グローバルビジネス学会理事、NPO法人サステナビリティ日本フォーラム理事、宮崎県小林市「こばやしPR大使」、未来まちづくりフォーラム2019・2020・2021実行委員長。著書に、『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版)ほか。企業や自治体等でSDGsに関するコンサルタント、アドバイザー、講演・研修講師として幅広く活躍中。
■著者公式サイト─発信型三方良し─
https://csrsdg.com/
■「SDGs」レポート(Facebookページ)
https://www.facebook.com/sasaya.machiten/