自治体の防災マネジメント

鍵屋 一

自治体の防災マネジメント[73]避難所外避難者の支援を考える① ──災害関連死を防ぐ

地方自治

2022.12.21

※写真はイメージであり、実際の土地とは関係ありません。
本記事は、月刊『ガバナンス』2022年4月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

熊本地震と関連死

 2016年4月14日と16日、震度7の激しい地震が熊本県を襲った。その熊本地震から6年になる。特に被害の大きかった益城町では、人口約3万3500人のうち、最大で約1万6000人が避難者となった。

 私は同年4月20日から5月6日まで、主に益城町避難所支援チームの業務支援を行った。その後も、仮設住宅での棚の取付けや企業からの寄付品を届けるなどのボランティア活動を仲間とともに行った。

 しかし、災害直後に、本当に支援すべきは避難所や仮設住宅だったのだろうか。熊本地震では、高齢者を中心に223人もの災害関連死が発生している。直接死50人の4.4倍以上に上る。本誌21年4月号でも述べているが、非常に重要なデータなので再度、共有したい。

図1 熊本地震での震災関連死内訳
図2 熊本地震での震災関連死内訳

2021年3月末時点218件(更新)
出典:熊本地震の発災4か月以降の復旧・復興の取り組みに関する検証報告書、2021.4.9 報道発表。
熊本地震震災関連死 死亡時の生活環境区分

出典:熊本地震の発災4か月以降の復旧・復興の取り組みに関する検証報告書、2021.4.9 報道発表。

 この図表からは、明らかに次のことが言える。

・死亡時の年代は、高齢になるほど増える。90代になると下がるが、元々の人口が少ないから当然だ。

・亡くなった時期は、発災後、1週間や1か月以内という早い時期が多い。発災直後の避難生活が、高齢者にとって、いかに過酷かを示している。

・亡くなった場所で最も多いのは自宅で約4割、そのほかに自宅等から病院等に搬送されて亡くなったのが24%あり、この両者で6割を超える。一方で避難所で亡くなったのは5%未満である。すなわち災害関連死のリスクの高い人は、避難所の外にいた。

 これを見る限り、関連死を防ぐためには、「在宅の高齢者」を「災害直後」から「避難生活支援や保健・医療・福祉支援、あるいは緊急搬送」などで守ることが必要である。

自治体の避難所外避難者の支援体制

 さらに、コロナ禍により自治体は、避難所の密を防止するために、むしろ自主的な避難所外避難を推奨している。

 写真は2020年の熊本水害で、球磨村の住民を受け入れた人吉市内の避難所である。人吉市は自ら大被害を受けた上、隣接の球磨村民を受け入れ支援していた。コロナ対策の臨時給付金により、事前に段ボールベッドやパーティションを購入していたため、避難所環境を迅速に向上できたという。


熊本県人吉市内の避難所(2020年7月18日、筆者撮影)。

 しかし、多くの住民が避難所に集まると、このような良好な環境は作れないことに留意する必要がある。すなわち避難所で多くの被災者を収容することと良好な避難環境とはトレードオフになる。

 (一財)日本防火・危機管理促進協会は、2021年度に「避難所外避難者の支援体制に関する調査研究」を実施し、この3月に報告書を作成した。私も、外部顧問として質問作成などでお手伝いをさせていただいた。

 この種の調査は国内でも初めてと思われる。全国の1741市区町村のうち560市区町村から回答を得た(回収率32.2%)。

 ここでは、指定都市、中核市、施行特例市、特別区を大規模(回答数61)、その他の市を中規模(同222)、町村を小規模(同277)としている。

⑴ 避難所外避難者の支援体制にかかわる計画・体制
 「全体的な支援計画がある」のは大規模が16.4%、中規模が8.1%、小規模が6.5%である。「特に計画や体制がない」のは大規模が44.3%、中規模で63.5%、小規模で71.8%である。残りは自宅、車中泊避難など一部の支援計画があるものだ。

 この結果を見ると、避難所外避難者への支援に関しては自治体の取組みが遅れていると言わざるを得ない。ほとんどすべての自治体が指定避難所を設定しているのとは対照的だ。自治体は避難所に来る被災者は支援するが、避難所に行かない、行けない被災者への支援が弱い、と言える。

 私も、被災自治体職員からは、「避難所外までは、とても手が回らない」と何度も、何度も言われてきた。それは支援体制の計画が存在しないからだ。仮に計画があっても、抽象的な規定にとどまっていて、「いつ、だれが、どこで、どうするか」という具体的なものになっていないからだ。

⑵ 避難所外避難をしている要配慮者の見守り
 「特に実施方法が決まっていない」が最も多く、どの規模でも6割〜7割程度である。残りは、自治会・自主防災組織と社協・保健所・地域包括支援センター等の関係団体に依頼するとなっている。なお、3自治体が、早期(発災3日以内)に「支え合いセンター」等を立ち上げて計画的に見守り支援をする、と回答している。

⑶ 避難所外避難をしている要配慮者の避難先把握方法
 「特に把握方法は決まっていない」が最も多く、大規模が45.9%、中規模が48.8%、小規模が57.8%である。

 次が「避難者またはその家族等に役所・最寄りの指定避難所等へ避難先を自己申告してもらう」で大規模が31.1%、中規模が34.7%、小規模が26.4%であった。なお、「関係団体・関係者や住民団体が個別訪問して確認する」「自治体職員が被災世帯を個別訪問して確認する」も1割〜3割程度あった。

関連死を防ぐ計画、体制づくりを

 災害時に自治体が求められているのは、第1に人命を守ることだ。だとすれば、関連死の防止は最優先事項でなくてはならない。しかし、アンケート結果を見ると、関連死を防ぐことは難しい。

 今後、自治体は早期に在宅等の避難者の見守りができる計画を作成し、実施体制を作ることが必要だ。関連死に至るような要配慮者が、自ら支援を求めに来られるはずがないという想像力を働かせてほしい。

 要配慮者、特に高齢の方は事前に把握できるのだから、見守りは制度化しやすいはずだ。平時から見守り活動をしていれば、なおさらだ。ここでも役所内での福祉と防災の連携が求められる。

 

 

Profile
跡見学園女子大学教授
鍵屋 一(かぎや・はじめ)
1956年秋田県男鹿市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、東京・板橋区役所入区。法政大学大学院政治学専攻修士課程修了、京都大学博士(情報学)。防災課長、板橋福祉事務所長、福祉部長、危機管理担当部長、議会事務局長などを歴任し、2015年4月から現職。災害時要援護者の避難支援に関する検討会委員、(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事、(一社)防災教育普及協会理事なども務める。著書に『図解よくわかる自治体の地域防災・危機管理のしくみ』(学陽書房、19年6月改訂)など。

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鍵屋 一

鍵屋 一

跡見学園女子大学教授

(かぎや・はじめ) 1956年秋田県男鹿市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、東京・板橋区役所入区。法政大学大学院政治学専攻修士課程修了、京都大学博士(情報学)。防災課長、板橋福祉事務所長、福祉部長、危機管理担当部長、議会事務局長などを歴任し、2015年4月から現職。避難所役割検討委員会(座長)、(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事、(一社)防災教育普及協会理事 なども務める。 著書に『図解よくわかる自治体の地域防災・危機管理のしくみ』 (学陽書房、19年6月改訂)など。

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