議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第73回 新任議会(事務)局職員に 求められるものは何か?

地方自治

2022.12.22

本記事は、月刊『ガバナンス』2022年4月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 自治体では4月は定期人事異動の季節である。初めて議会(事務)局(以下「議会局」)に配属された人も多いだろう。異動の受け止め方は千差万別であろうが、今号では筆者の経験をもとに、議会の世界で仕事をするにあたっての雑感を述べたい。

■局職員の既存イメージ

 2月末の「議会制民主主義のあり方を改めて考える」をテーマとした滋賀大学公共経営イブニングスクールで、「議会制民主主義の本音と建前」と題して講演した。その概要は、本会議の花形と思われている一般質問の位置づけなど、「建前」としての立法趣旨と、「本音」が具体化した実態との乖離、それを補正するための大津市議会の議会改革事例を紹介したものである(注1)

(注1) 詳細は、清水克士「議会の『常識』は真理なのか?」(北海道自治研究2018年2月№589)を参照。

 提中富和・滋賀大学産学公連携推進機構プロジェクトアドバイザーからは、従来の本会議のあり方を抜本的に変えるという意味で、「ちゃぶ台返しの論」だと評された。もっとも、既存の議会運営も、議会の主役である議員にとっての利点があればこそ全国で定着しているのであり、議事機関の本質との乖離は、局職員だからこそ客観的に論じられるところもあると思う。

 一方、主宰する石井良一・滋賀大学名誉教授にとっては、既存の局職員像との乖離があったようで「議会事務局における職員イメージは、あがりのポストであり、口うるさくない人や従順なタイプが配置されるとの印象がある。だが、改革を進めようとするならば、議員と同じ目線で考えようとする職員が必要になる。大津市議会局にはどうしてそんな職員が配置されるのか?清水さんは希望して配属されたのか?」と問われた。

 私は議会局への異動を希望したわけでもなく、前所属での仕事に魅力を感じていたこともあり、正直なところ失意の中での着任であった。だが、議会内の合意形成にリーダーシップを発揮してくれる議員の存在もあり、「チーム議会」の一員として議会改革に参画できた実感が、モチベーションアップにつながったことなどを話した(注2)。

(注2) 詳細は、清水克士「行動する議会(事務)局」の役割とは何か?~大津市議会局での実践~」(議員NAVI2022年3月10日)を参照。

■置かれたところで咲くために

 だが、一般的には「自分から配属を望まなかった職員にとっては、議員との付き合いは苦痛である」(注3)とされる。議員と局職員のフラットな関係性を前提とする「チーム議会」の成否は、最終的には議員次第であるが、局職員も最初から議員を忌避していては何も始まらない。

(注3)大森彌『自治体議員入門』(第一法規)。

 私の職場外での知人の多くは、他議会の議員や元議員である。個人的には議員のほうが、個性豊かで魅力的な人が多いとさえ思える。せっかく議会の世界に配属されたのだから、食わず嫌いをせず、議員とのヘビーな人間関係を楽しんでみてはどうだろうか。

 もちろん最初は自分の所属する議会からであるが、慣れてきたら外部での人脈も重要である。それは、自治体議会はスタンドアロンの存在であればこそ、外界に触れようとしなければガラパゴス化が必至となるからだ。内向き思考では、自分達の常識が世間の常識とは限らないことに気づかなくなるので、常に全国の動向や時代の変遷による価値観の変化にアンテナを張っておくことが求められる。

 いずれにしても、置かれたところで花を咲かせられるかは、本人の気の持ち方次第である。新任局職員諸氏の今後の活躍に期待したい。

 

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

第74回 オンライン議会実現までにできることはないのか? は2023年1月19日(木)公開予定です。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士 しみず・かつし
 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員

しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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