議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第68回 オンライン本会議の実現が「本会議」を変えるか?

地方自治

2022.07.21

本記事は、月刊『ガバナンス』2021年11月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 大津市議会では9月16日に完全オンライン型で委員会を開催し、議案採決した。オンライン委員会の実績としては、5月の委員会条例改正直後に、議会運営委員会をオンライン開催している。これは委員の一人が新型コロナ感染症の濃厚接触者に指定されたため、急遽ハイブリッド型で開催したものであり、採決を含む議案審議をオンライン化したのは初めてである。

 オンライン委員会の運営自体は、何も問題なかったが、1月のオンライン模擬本会議との実務上の対比では、法的議論とは正反対に、実質的な議論が期待される委員会よりも、形式的な縛りが強い本会議のほうが、オンライン会議システムとの親和性は高いと感じた。

 さらに、今号では本会議をオンライン化する意義について、議会広聴の観点からも考えてみたい。

■議会広聴の本流とは

 議員は住民の代表として選ばれた存在ではあるが、選挙によって全てを白紙委任されたわけではない。したがって市民意見を的確に政策に反映させるためには、議会への市民参加は欠かせない。

 一般的には議会外での市民との意見交換会が、議会の広聴活動と思われがちだが、議決機関の本質的活動の場であり、公式会議録が残される本会議等への市民参加こそが、最も重要な議会広聴だろう。

 愛知県犬山市議会では、市民が議場で全議員を前に、犬山市政に関して5分間話せる「市民フリースピーチ制度」を実現している。

 制度を提案したビアンキ・アンソニー元議長は自著(注)で「会期中に市民が直接議会で発言ができる制度」は、「アメリカではどこでも当たり前に行っている制度」で、「外に出かける意見交換会よりも長い歴史を持つ、一番純粋な市民参加」であり、「他の取り組みよりも中心として最初に取り組むべき」としている。

注 『1人から始める議会改革』学陽書房、2021年。

 定例会中に行うものでありながら、必ずしも議案審議に関わる制度でないことや、発言記録を作成しないとしていることは今後の課題であろうが、日常的に使える議会広聴の制度としては、最も議事機関の本質に適うものと思う。

 一方、大津市議会でも議案上程前に市政の重要課題に関して、議場で市民意見を聴取し公式会議録に残す「市政課題広聴会」制度を昨年4月に創設した。その意義は、住民代表機関が市政課題を議論するにあたっては、議場において市民意見を求め、公文書である会議録に残すことが、議会広聴の基本だと考えたところにある。

■オンラインが本会議を変えるか

 だが、議会広聴に共通する課題の一つは、参加者の継続的な確保である。最初は盛況でも、新たな参加者がなく、参加者確保に苦労している例は珍しくない。まして議員でも緊張するという議場独特の荘厳な雰囲気は、必ずしも参加者増に貢献しないだろう。

 対策としては、オンラインフォーラム等の参加者動向に鑑みて、本会議を市民参加促進の観点からオンライン開催し、参加のハードルを下げることも考えられよう。

 これまで本会議における広聴機能は事実上機能してこなかったが、オンライン化は本会議を多様な市民意見を反映させる実質的な議論の場に変えるという、本会議のあり方自体をも抜本的に変える可能性を秘めているのではないだろうか。

 

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

第69回 「議会だより」は永遠に不滅なのか? は2022年8月11日(木)公開予定です。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士 しみず・かつし
 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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