議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第69回 「議会だより」は永遠に不滅なのか?

地方自治

2022.08.11

本記事は、月刊『ガバナンス』2021年12月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 「議会だよりなんて、誰も読んでいないんですよねえ」

 これは前議員任期の議会活動について外部評価を受けた際に、有識者が呟いた率直な感想である。

 大津市議会では、議員任期4年間の実行計画「ミッションロードマップ」を任期当初に策定している。

 今任期の「ミッションロードマップ2019」では、テーマの一つとして「広報のあり方検証」を掲げ、議会広報全般を抜本的に見直そうとしている。その原点は、冒頭の「議会だより」(以下、「議会報」)に対する厳しい評価にある。

■議会報の現在

 議会人にとっては、議会広報=議会報発行との固定観念があり、広報改革というと、紙媒体である議会報の編集技法の議論に終始してきたことは否めない。だが、読まれなければ売れなくなる有料出版物とは異なり、議会報は無料であるがゆえに、どれだけの人に読まれているのかさえわからない。

 したがって、最初に議会広報全般に関して、無作為抽出方式による市民アンケート調査を行った。その結果、議会報を「いつも読んでいる」と答えた市民は、70代が38%、60代が23.7%、50代が15.1%、40代が15.2%、30代が12%、20代が10.3%、10代が2.3%、全体では18.7%であった。全体的には意外に読まれていると感じたものの、現役引退世代と選挙権のない世代との差は17倍弱にも及び、年代による差が顕著であることが大きな課題と思われた。

 もう一つ特徴的だったのは、30代以下の自由記述欄での意見が、予想外に多かったことだ。多くは印刷や配布にコストを要する紙媒体の発行自体に批判的であり、内容的にも文字が多く読む気にならない、若者に伝えたいなら動画や写真、短文を特徴とするSNSを活用すべきとの論調であった。

 もちろん、50代以上では紙媒体の議会報を支持する意見も多く、回答者全体の約5分の1が「いつも読んでいる」と回答し、自由意見の内容も勘案すると、現状での議会報廃止は時期尚早と感じられた。

■議会報の未来

 一方で、長期的には議会報を発行する議会のほうが少数派になるかもしれないとも感じた。

 30代以下の意見は、単に紙媒体の議会報を電子化すれば読むといった主旨ではなく、文字よりも動画等を主体とした伝え方を望んでいる。そのような世代が歳を重ねたからといって、習慣が突然変わるとは考えにくく、情報発信手法の抜本的変革が求められている。

 30〜40年後には紙媒体を支持する世代の多くはこの世を去り、SNSで育った世代が社会の中核を占める。その時代には、紙媒体の議会報は自然消滅を免れないのではないだろうか。

 取り越し苦労との反論もありそうだが、果たしてそうだろうか。音楽市場では、CD売上がピーク時から20年で半減し、デジタルダウンロードが増加した。だが、今では概念が全く異なるストリーミング(注)が主流となるなど、一旦変化が始まれば劇的な勢いで変革を求められるのは、分野を問わず必然であろう。

注 従来のように楽曲を所有せず、利用するサブスクリプション方式による音楽配信。

 議会でも、短期的には議会報を改善しつつも、長期的には旧来の固定観念から脱却し、次世代のための変革を実現する広報戦略を確立しなければ、市民との距離はますます広がるのではないだろうか。

 

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

第70回 地方議会は国会のアナロジーなのか? は2022年9月8日(木)公開予定です。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士 しみず・かつし
 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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