東西南北デジデジ日記
東西南北デジデジ日記 vol.52 今週の担当:【西】多田功
地方自治
2022.10.13
「自治体×デジタル」を多彩な切り口からゆるっと考えてみる、現役&元自治体職員4名によるリレー日記。DX推進における民間事業者とのかかわりはマストこそ、大事なポイントがあります。(※本連載は毎週木曜更新です)
―――――2022年10月13日 Thu.―――――――
「お金」と「公務員」
10月に入ってから、急に寒くなってきましたが、季節の変わり目とともに今年度の折り返しを迎えましたね。
前回の日記(vol.48)以降、個人的にも大きな変化がありましたので、溶けるように9月が過ぎ去っていきました。
このフェーズでは、天の声から「お金」というお題が投げ込まれましたが、プライベートでもお金と向き合うことがことさら多いひと月を過ごしました。
来週は専門家でもある今村さんの回(2022年10月20日更新予定)がありますので、うかつなことは書けませんが。。。。
先週(vol.51)、千葉さんから「公金ではないお金」の話がありましたので、今回は「公金」の観点で書きたいと思います。
「公金」とは
ウィキペディアによると、
―ウィキペディア「公金」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E9%87%91)より一部抜粋
と書かれています。
「その目的を達成するための作用を行うにあたって用いる金銭」とありますので、そのために予算や決算があります。
収入・支出の予定を「予算」として市議会の議決をもって成立させ、予算執行の結果を「決算」としてまとめ、監査委員の審査を経て、市議会の認定を受けているわけです。
民間事業者には気をつけろ??
vol.50で山形さんが書かれているように、僕自身も「お金」の話をするのはご法度であり、悪であるという認識が強いです。
予算や決算の話をするときは、日常的にお金の話をしているにもかかわらずです。
お金の話をすることは、それは自身の「潔白であることの裏返し」のように感じなくもないです。
そこには「公務員の不祥事」のイメージが根強いからかもしれません。
デジタルの話をする上で、必ずと言ってもいいほど深い関係性を持つのが、民間事業者のみなさんです。
そこでは間違いなく「お金」の話がつきまっています。
自治体側は、可能な限り、安い費用で導入したい。
民間事業者側は、自社の製品やサービスを自治体に導入したい。
双方の思惑の中で契約が決定されるわけですが、そこに、入札情報の漏洩などといった不祥事が発生するケースがあるわけです。
職員のモラルによるところも多いですが、憲法第15条、地方公務員法第29条で規定されている「全体の奉仕者」である以上は当然遵守されることが前提となっています。
ステークホルダーでもある市民や地域の要請に応えることが職員に求められているわけですから、当然ながら不祥事などはもってのほかです。
なんとなくで済ませてない?
そういった中で、職員は民間事業者のみなさんと打ち合わせするのを警戒する雰囲気がなんとなくあります。
「なんとなく」かよ、と思われた方も多いと思いますが、「なんとなく」です。
民間事業者側もコンプライアンス意識を高める姿勢で取り組んでおられますから、無理やり契約にこじつけるケースはないと思います。
一方で、自治体が示す仕様書の中に、自社の製品やサービスが優位になるような文言を入れるように促したりすることがあるのでは、という質問を他の自治体の職員の方からいただいたりします。
その内容をそのまま気づかず仕様書に入れてしまう…といったケースもあるようです。
また、他の自治体が調達した仕様書をまるまるコピーして使ってしまうケース。
気づけば全く同じような製品やサービスが入ってしまうこともままあります。
表面的には「お金」の話ではないんですが、行き着くところは契約行為に至るわけですから、「お金」の話に結びついていきますので、仕様書の要件は自団体にあったものなのかしっかりと精査する必要があります。
そのサービスは必要なものなのか、過剰に仕様書に書き込むことによって、複数社の参入を妨げることとなっていないかに注意が必要です。
お互いに何をやりたいかが明確でないため探り合いになっているかもしれませんが、仕様要件や要求要件への理解は「なんとなく」では済ませられません。そこを把握することなく警戒している雰囲気が残っているように思えます。
早期のサービス実現に向けて
スマートシティサービスやデジタル田園都市国家構想を実現するために、「既存の価値ではない、新たな価値を生み出す」ことが求められています。
これを自治体だけで実現することは非常に難しく、民間事業者のサービスを利用していくことが必要です。
問題は、そういったサービスを「どうやって見つけるのか」と、「どうやって契約するのか」だと思っています。
単に先進的なサービスを導入するだけでなく、そのサービスを導入した結果、「住民福祉の増進」にどうつながっていくかということを忘れてはいけません。
これまでの窓口サービスとは異なる観点で、新たな技術や発想を取り入れる必要がありますので、日々の暮らしの中の困りごとに対してアンテナを高くする必要があります。
その困りごとを解決するためのサービスを探すとなると相当な情報量が求められているように思えます。
デジタルマーケットプレイス
そういった中で、アジャイルな調達を実現する「デジタルマーケットプレイス」の検討が世界経済フォーラム 第四次産業革命日本センターを中心に行われています。
「デジタルマーケットプレイス」とは、国がデジタルサービスや事業者をリスト化するもので、その中から自治体が選んで調達するという仕組みです。いわば、国のお墨付きを得られたサービスを知ることができるもので、イギリス政府が先進的に取り組みを進めています。
詳しくは、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターのnote「アジャイルな調達を実現する「デジタルマーケットプレイス」( https://note.com/c4irj/n/n365eba41786f?fbclid=IwAR3Z3HqONbR_E0pKrHk9FaVO-tWtPE7OLk2rEzQEn2fgjOaKd94o-3l2op4)を参照してください。
2022年6月7日に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」においても、公共調達改革の一環としてデジタルマーケットプレイスの検討を新たに盛り込まれていますので、こちらの早期実現に期待したいところですね。
では、また次週! デジデジ!
~次回の日記は10月20日(木)に更新予定です!~
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