東西南北デジデジ日記 vol.50 今週の担当:【北】山形巧哉

地方自治

2022.09.29

「自治体×デジタル」を多彩な切り口からゆるっと考えてみる、現役&元自治体職員4名によるリレー日記。今回は「お金」をテーマにお話しいただきます。(※本連載は毎週木曜更新です)

―――――2022年9月29日 Thu.―――――――

 

今回の天の声

「公務員とお金」をテーマに、ちょっといろいろご意見お聞きしたいです。

お金、お金ねえ。
vol.46でも書きましたが、僕自身は公務員時代、「お金」の話をするのはご法度であり、悪であるという認識が強く、正直言うと今もそれは抜けきれていないかもしれません。

なんだろう、「怖い」印象?
自身の潔白さがなくなってしまうような、そのせいで自身の「価値」(があるかどうかは知りませんけどね)がなくなってしまうような、そう言う恐怖心、意識しなくても、あります。

 

「恐怖心」の発端を振り返ってみる

僕が公務員になったのは1998年。
いわゆる就職氷河期と言われた時代。

僕自身は高卒で運よく地元就職ができたので、実感的には「そんなに氷河期だったかな?」という感覚ですが、僕のちょっと上の年代の方(いわゆる団塊ジュニア世代)はどこの役所でも多いですが、僕の年代はちょっと少なかったかなという肌感覚です。
なんとなく「採用ひかえ」があった時期なのでは? とも想像します。

まだまだ職場の中も昭和のにおいが多く感じられる頃で、机には灰皿。
職場の天井には煙の雲がある、そんな感じでした。
今から考えるとまったく想像できない世界ですね(笑)。

当時の僕は未成年。
社会人になったとはいえ、社会の出来事には興味もなく、日々
「仕事終わったら遊びに行こう!」「今日はすぐ帰してくれるかな!?」
といったことしか考えていませんでした。

でも、そんな中でもはっきり覚えているのは、ちょうどこの頃、日本各地で公務員の不正が多く報道されていた時期。
公務員の行動がどんどんと厳格化され、特にお金の部分については相当厳しくなっていった時期だったということです。

 

こんな時代背景があった

採用された当時は今よりも前向きな事業が多かったような印象を受けます。
大通りの拡幅、未舗装道路の舗装、下水道整備、高速道路用地の整理、港湾整備、町営住宅の建て替え。

ただ、これらは僕が採用される前には計画予算化がされ、すでに動き始めていた事業ばかりで、そろそろ事業完了する時期が近づいているものも多々。
徐々に「緊縮財政」という言葉が庁内でも言われ始めた時期でもありました。

昭和的な発展を遂げ、これまではお金を使うことを是として来た価値観の中で、急に「緊縮だ!」「実は財政的にやばい!!」という話が出てきたことに加えて、「公務員の不正問題」。

 

そして世間体への忖度…?

当時の幹部職員の皆さんの心中を想像してみます。

「これまで良かれと思ってやって来たことが全て否定されている感じがする」
「うちの街は悪いことしてないのに、なんなんだ、この締め付けは」
「当然もっともっと締め付けは厳しくなっていく。自分たちの身の潔白を証明していくためにも、もうお金は使わないほうがいいのでは」

こんな気持ちと共に、現実的に財政が厳しくなって来ています。
「もうお金使っちゃダメだ!! 理由なんてどうでもいい。とにかくダメだ!!」
という方向に向かってしまったのではないのかなと思うわけです。

実際に、僕も職場の飲み会などで町内に行くと、
「役場職員のくせに人の税金で酒なんか飲むな!!」
と言われた経験を持っているので、過剰なバッシングの中で大変だっただろうなと感じます。

…が、これは後にかかわる大きな問題にもなっているのではないかと感じている面もあります。

過剰なバッシングや、それを回避するための過剰なリスクヘッジにより、「とにかくお金をつかっちゃダメ」を徹底してしまったがために、

・お金(税)を使うと言うことはどう言うことか ・何に対してどう使うのがいいのか ・税を使う上での透明性はどうあるべきか
といった当たり前の職員教育が、この時期ちゃんとされていない可能性があるのではないかなあと想像しています。

 

それ、「ご法度」の言葉で済ませてない?

少なくとも僕自身が「お金の話をするのはご法度」と感じてしまうのは、僕にこの観点がすっかりと抜け落ちている証左ではないのかなと思います。
もしかしたら僕の近くの話だけかもしれませんけどね。

民間の身分になって、なおさらこの感覚は大きいなと思います。
また、他の団体の方々の話を聞くと、なるほど、規模とか地域差もあるのかもしれませんが、基本的にへりくだることに慣れすぎてしまい、昼休みにコンビニでソフトクリームを食べてバッシングされると昼休みに買い物に行かないようにというおふれを出してしまいがちな組織体制になってしまうことも多いのではないでしょうか。

きっとそれは今管理職をやっているのはちょうど僕と同じくらいの年代の人たちも多くなってきている、すなわちお金の教育がちょっと抜け落ちてしまっている可能性がある世代なのかもしれません。

インターネット分離後の世界で、ネットワークを変えるのがこわいというのもしかり、DXでこれまでの常識を覆していこうというのもしかり、初めてのことはなんでも怖いものです。
変わることを是として育って来ていないと、そう感じることは理解できます。

「やらないのがダメだ!」を言う前に、なぜこうなって来たのかを深掘りしながら、じゃあどうやったら変わっていけるかね? という話を「ちゃんと」していきたいよなあと思ってます。

「ちゃんと」の中にはしっかりとデジタル技術のこともいれていかないとダメですよね。
というところで今回はおしまいです。
次回もデジデジしてくれよな!

 

~次回の日記は10月6日(木)に更新予定です!~

 

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千葉大右・多田 功・山形巧哉・今村 寛

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