【リレー連載】「自治体×デジタル」を考える 東西南北デジデジ日記

ぎょうせい

東西南北デジデジ日記 vol.49 今週の担当:【南】今村寛

地方自治

2022.09.22

「自治体×デジタル」を多彩な切り口からゆるっと考えてみる、現役&元自治体職員4名によるリレー日記。「外部人材」をテーマとした2周目。デジタル人材を採用したその先は――【南】今村さんが総括します。(※本連載は毎週木曜更新です)

―――――2022年9月22日 Thu.―――――――

 

外部人材活用、その先にあるもの

前クールに引き続き「お題」は「外部人材」。

この「外部人材」というお題をデジデジ日記で取り上げると決まった瞬間から、
「これって自治体DXを進めるうえで自治体内に不足するデジタル人材をどうやって確保し、そのスキルを自治体内に移転するかって話だよね」
という着想が我々、交換日記4人組の頭の中を駆け巡りました。

何のために、どんな人材を、どういう仕組みで受け入れるのか。
受け入れ側の体制、変化を受け入れる心構えをどう整えるか。
外部人材のモチベーションをどう喚起し、維持するか。

などなど様々な視点、論点があり、すでに7話もこのお題をやっているので、完全に私のネタは枯渇していますが、この2クール、8回にわたる外部人材ネタの最終話として、未来志向で「外部人材活用、その先にあるもの」について考えてみたいと思います。

 

なぜ外にいるのに内にはいない?

私たち地方自治体は、新たなことに取り組む際に「外部人材」にそのスキル、ノウハウを頼りがちですが、それは裏を返せば、新たなことに取り組む必要が生じたタイミングで、内部にそのようなスキル、ノウハウを持った職員がいないということでもあります。

これって当たり前のことなのでしょうか。

時代の変化によって必要とされ始めた新たな知見を持つ人材が役所の外にはいるのに、なぜ役所の中にいないのか。

DXに関して言えば、情報化社会という概念が生まれたのは今から60年前の1960年代ですし、インターネットの普及からもすでに30年経っています。
この間、民間企業は情報化の波をうまく乗りこなし、スマホの普及により個人が常時ネット環境の中にいることを前提としたサービスを当たり前のものとして提供し、その中で得られた膨大な情報を新たなビジネスに活用することまでを企業経営の常識として行うようになっています。

一方、この60年の間、政府、自治体は常に民間の周回遅れで後塵を拝し、必要なサービス開発には必ず外部人材に依存し、その目利きができる人材すら内部に確保できない始末です。

なぜ、私たちは組織の中で社会の変化や新しい事象に対応できる先見性を持った人材を確保し、あるいは育成することができないのでしょうか。

 

アップデートができない公務員

政府も地方自治体も、国民、市民の福祉向上のため、非常に多岐にわたる分野で行政サービスの提供を行っています。

この提供にあたっては行政組織の性格上、無謬(むびゅう)性や公平性が求められ、これらを担保するために有形無形の様々な決め事が設けられていますが、この決め事(あるいはそれに根差した固定観念)により、私たち公務員は現状を肯定し、維持しようとする保守的な思考、態度を取りがちですし、新たな挑戦について臆病です。

このことは組織や職員の意識に深く染みついており、結果として、競争社会で生き残っていくうえでは民間企業では当たり前となっている、新たな情報に触れて現在の自分や組織をアップデートしていくという発想、意欲の乏しさにもつながっていると私は感じています。

 

時代をキャッチアップできる組織、人材を

もちろん、外部のスキルやノウハウに頼ることは時によっては必要で、内製化によって膨大な時間やコストがかかることに比べて効果的である場合は積極的に活用したほうがいいでしょう。

しかしながら、そのスキルやノウハウを受け入れるための目利きや自治体内の土壌づくり、外部人材を活用して組織内に移転された技術の安定的な継承を考えれば、また、技術革新や社会環境の変化の幅やスピードが年々増している現状を考えれば、少し未来を先取りして時代の潮流を学び、その先端を行く外部でのスキル、ノウハウの進化や変化にきちんとキャッチアップできる人材を常に一定数確保し、外部人材もうまく活用しながら革新をいとわずに断行する組織を創り続けていくことが何より必要です。

では、時代をキャッチアップできる人材を確保、育成するために何をすべきか。

採用による人材確保でしょうか。
それとも研修による育成?

 

常に自らをアップデートせよ

例えばDXというふうにテーマを絞れば、そのテーマに沿って採用や研修による人材確保・育成を行うことは可能でしょう。

しかし、将来が不確実な時代の変化を先読みし、将来どのようなスキルやノウハウを持った人材が必要になるのかをあらかじめ予測することは不可能です。

私たちにできることは、どんな時代の変化にも柔軟かつ迅速に対応できるよう、進取の精神をもって新たな情報や知識に触れ、自らを常にアップデートし続けること。
そして、それを組織として推奨し、応援し、賞賛することで、職員個人が自らのアップデートに意欲をもって取り組める環境を整備することです。

国民、市民の福祉向上を担う全体の奉仕者としては、無謬性や公平性といった保守的な素養だけでなく、その保守性によって奪われがちな革新性、挑戦意欲を、素養として合わせ持つことが公務員には求められているのです。

公務員よ。
国民、市民の幸せのために、常に自らをアップデートせよ!

最後は少し上から目線で叱咤激励させていただきました。
おあとがよろしいようで。デジデジ!

★11月9日(水)、オンラインイベントに登壇します。
リクルートHELPMAN JAPAN主催「未来につながる共創と対話」
詳しくはコチラ

★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885

★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/

★そのほか、自治体財政の話、対話の話など、日々の雑感をブログに書き留めています。
https://note.com/yumifumi69/

 

~次回の日記は9月29日(木)に更新予定です!~

 

バックナンバーのご案内


バックナンバーはコチラから。

執筆陣のプロフィールはコチラから。

 

アンケート

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

すぐに役立つコンテンツ満載!

地方自治、行政、教育など、
分野ごとに厳選情報を配信。

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツ満載!

地方自治、行政、教育など、
分野ごとに厳選情報を配信。

無料のメルマガ会員募集中

ぎょうせい

ぎょうせい

閉じる