東西南北デジデジ日記 vol.45 今週の担当:【南】今村寛

地方自治

2022.08.25

「自治体×デジタル」を多彩な切り口からゆるっと考えてみる、現役&元自治体職員4名によるリレー日記。今回のテーマは連日のメディアの見出しで踊る「外部人材」。この言葉自体は目にも耳にもすっかりなじんでしまったように感じます。さて、実際の自治体現場ではどうなのでしょうか。(※本連載は毎週木曜更新です)

―――――2022年8月25日 Thu.―――――――

 

三題噺じゃないけれど

前クールに引き続き、今回も「お題」をいただいています。

今回は、山形さん(vol.42)、千葉さん(vol.43)、多田さん(vol.44)とも「外部人材」で統一いただきましたので、三題噺という芸当は披露しなくて済みそうですが、逆に同じテーマで3人も書いた後に何か目新しい視点が残っているのかというところがしんがりの弱みですね(笑)。

 

人のふんどしで相撲を取る

DX界隈の話に限らず、役所はいろんな局面で外部人材の力を求めます。

やりたいことのお墨付きを得るために御用学者の威光を笠に着たり、何を書いていいかわからない計画を策定するのに作文コンサルに丸投げしたり、はたまたDXみたいに専門的な知識、技術がすべてを解決してくれると言わんばかりに魔法の杖を振ってみたり。

自分の都合だけを振りかざして必要な時に必要な部分だけつまみ食い。
なんてジコチューなんでしょうね(苦笑)。

まあ、世の中お金で解決することが多いわけですが、こんな使われ方されたんじゃ外部人材も払った金の分しかその価値を提供してくれませんし、ひょっとしたら払うお金よりも低い価値しか提供してくれないかもしれません。

それを目利きすることができないというのも悲しい役所の性ですね。

せっかく人のふんどしで相撲を取るのであれば、せめて快くふんどしを貸してくれるように相手の気持ちを整えるというくらいの礼儀は欲しいものです。

 

それ、面白そうですね

私は財政課時代からよく「民間の力を借りるように」と言っていましたが、それは対価を払って業務を委託することだけではありません。

私自身は、中小企業振興を担当していたときに、大学や商工会議所、民間企業、NPOなどとよく共働で事業を実施していましたが、それはお金のやり取りが発生するものではなく、お互いのリソースを出し合ってWin-Winの関係になれるよう役割分担するものが圧倒的に多かったですね。

プロジェクトの卵を持って意中の人のところに出かけていき「こんなことを考えているんだけど、一緒にどう?」と誘ってみると、結構な確率で言われるのが「それ、面白そうですね」という食い気味の相槌。

私の経験から言えば、社会的な意義があり自己の存在意義に合致するもの、自分の能力やノウハウを活かせるもの、プロジェクトに携わることでの自身の成長が期待できるものであれば、たとえ支払える金額が自治体規程のものであろうとも乗ってきてくれることがあります。
それはいったいどういうわけなのでしょうか。

 

合言葉はこの指とまれ

役所の持つ最大の力は「社会的信用」です。

中小企業の業務効率化と社会の利便向上のためにとキャッシュレスを推進したときは、実証実験の名のもとにキャッシュレス事業者を公募し、手を挙げた多くの事業者に福岡市の実証実験として自社のツールによるキャッシュレスの普及促進(という名の営業活動)をしてもらいました。

役所は看板を掲げて旗を振るだけでしたが、この看板効果はてきめんでキャッシュレスは驚くほど見事に普及していきました。

学生のキャリア教育を実践的に行いたい大学と人材確保を行いたい地場中小企業をマッチングするイベントを大学の授業として行ったこともあります。
信用力のある役所が「この指とまれ」とひとたび声をかければ、いろんな能力、ノウハウを持った企業、市民団体、NPO等が結集したドリームチームを組むことも、その発案が一民間企業であるよりははるかに容易なのです。

 

ふんどしを借りるのはお互い様

外部人材を活用する際に役所側に求められるのは、相手方を先生として教壇に立たせるのでも、業者として自分のしたくない作業を金で任せるのでもなく、パートナーとして尊重し対等なタッグを組むこと。

例えば、大学の研究者の意見を聴くにしても、お金を払って知りたいことだけ尋ねるのではなく、相手の研究に役立つ情報やフィールドを提供して互いにWin-Winの関係を築き、役所に協力してよかったと思ってもらうようにすれば、快く協力してくれますし、こちらが予期せぬ大きなフィードバックをいただけることも。

民間企業、大学、市民団体、NPO、専門家などの役所外セクターは、それぞれ役所にしか用意できない社会的信用のあるプロジェクトの舞台で自分たちの存在を世に現し、腕試しをしたいと思っています。

外部の優秀な人材がその能力を活用したいと思えるフィールドを用意し、ここで存分に暴れていきませんかと声をかければ、嫌だと言う人はいませんよ。

 

やる気スイッチはどこにある

もっとも、そんなプロジェクトスキームを役所の中だけで考えられるか、その話を持ち掛けたら興味を持ってくれる確信がある意中の人を普段の人間関係の中で目利きし、どれだけストックできているか、というところにかかっていますけどね。

DXもまたしかり。
外部の誰かに何かを頼んで全部役所の手柄にするのではなく、互いの知恵と力を出し合ってWin-Winになれることが外部人材活用の必要条件です。

実は、これさえあれば、外部人材はお金がなくてもノリノリで関わってくれて、払おうとしていたお金の数倍の価値を提供してくれるはず。
ですよね? 山形さーん!

おあとがよろしいようで。デジデジ!

 

★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885

★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/

★そのほか、自治体財政の話、対話の話など、日々の雑感をブログに書き留めています。
https://note.com/yumifumi69/

 

~次回の日記は9月1日(木)に更新予定です!~

 

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