東西南北デジデジ日記 vol.41 今週の担当:【南】今村寛

地方自治

2022.07.28

「自治体×デジタル」を多彩な切り口からゆるっと考えてみる、現役&元自治体職員4名によるリレー日記。連載担当が日頃感じる素朴なギモンに執筆陣が回答するスタイルとなるも、ラスト4人目は変わらず【南】今村さんに。「業者」「推進」のお題2つのターンの掉尾を飾ります。(※本連載は毎週木曜更新です)

―――――2022年7月28日 Thu.―――――――

 

ネタ切れからの三題噺

皆さん、三題噺(さんだいばなし)ってご存じですかね。

落語の形態の1つで、寄席で演じる際にお客さんに適当な言葉や題目を出してもらい、出されたお題3つを折り込んで即興で演じる落語のことです。

我々デジデジ4人衆(誰が名付けた?)はこれまでのリレー連載でそれぞれ好きなことを好きなように話題提供してきたわけですが、先日4人での対談を行った際(vol.37)に「ちょっとネタが尽きてきたよ」という話になり、ぎょうせいの担当さんから助け舟として何かお題を出しましょう、という話になりました。

お、これで原稿を書くのが楽になる! と思ったのですが、担当さんから一気に4つのお題が出され、それをどの順番で誰が拾うのかという取り決めも特になかったので、山形さんは「業者」、千葉さんは「推進」という言葉について書きながらデジタルやDX界隈の話題でまとめ、多田さんはその両方について書きながら最後はデジタルっぽく締めるという「三題噺」の荒業をやってのけ、しんがりの私に無理難題のタスキが渡されたというわけです(苦笑)。

 

自分は「業者」じゃないという意識

「業者」という言葉のイメージについては、山形さんも多田さんもあまり悪い印象を持っていなかったようですが、私は相手方に対して失礼な表現だという認識があり、あえて使わないようにしていたつもりです。

以前、公共工事を発注することの多い技術系の部門の方々が、身内だけで話すときは「業者」と呼び捨てにし、発注者として「業者にさせる」という上から目線でものを言いながら、相手が目前にいるときは「業者さん」と呼び方を変えていて、その用例の中に隠れた蔑みの印象を持ったのですが、そういうのって必ず相手方に伝わっちゃうんですよね。

そもそも民間だと「業者」という言葉をあまり使わないのは自分も相手も広くくくれば「業者」だからなわけで、役所が「業者」という言葉を無意識に多用するのは、彼らが誰かから発注された仕事を請け負うことを生業とし、自分たちとは違う世界に生きているということで一線を画しているのだと思います。

この言葉自体が役所の中と外の間に垣根があるという意識の表れなのでしょう。

 

どこにでもある「○○推進課」「○○調整課」

所属名に「推進」をつけるのは役所あるあるで、千葉さんの分析は秀逸です(vol.39)。
何かやってる感を出すにはもってこいの言葉ですね。

似たような話で私が思い出すのは「調整」です。
「○○調整課」これも役所の所属に多いと思います。

役所の中で意見が対立することを事前に調整するための専任組織。
誰かが事前に内部調整することで、所管争いやたらいまわしの長期化、常態化を避けるという安全弁はどの自治体でも備えていると思います。

私もそういう仕事をしたことがありますが、本来であれば当事者同士で互いに胸襟を開き、共通の理解を得るために対話を行えば解決できるはずのものが、調整者を立てることで互いにより自分に有利な状況を創ろうと画策し、かえって手間がかかってしまうこともありました。

「○○推進課」も「○○調整課」も、自分で○○をするというわけではなく、○○についてみんなそれぞれやることがあり、推進課や調整課はその統括をするに過ぎないという意味なので、無駄な内部コストにも見られかねないと思います。

 

名は体を表す

とはいえ「名は体を表す」ということもあります。

福岡市では、2014年4月にそれまで「財政課」だった組織の名称を「財政調整課」に改めています。

これは事務分掌規則に掲げる業務内容は特に変えていませんが、課の名前を変えたのはこの年に本格導入した「枠配分予算」の影響です。

枠配分予算の導入は、予算編成に係る権限と責任を財政課に集中させるというこれまでの考え方を改め、各部局の自律的な判断を尊重しつつ、全体最適を果たせるよう部門間の調整を行うことが財政課のミッションだと再定義することでしたが、そのような再定義が行われたことを財政課自身が自覚し、各部局も議会や市民など外部からもわかるように、当時枠配分予算の本格導入に踏み切った課長の肝いりで財政「調整」課という名称に改められたものです。

私は当時、財政課の係長でしたが、これはとんでもないパラダイム転換だと感じました。

 

思いを言葉に 言葉をかたちに

言葉というのは不思議なもので、口から発すると魂が宿ります。
これは「言霊」と言います。

思っていることは「言葉」にしないと誰にも伝わりませんし、自分自身の思いをはっきりさせることもできません。
しかし実は、「思い」が行動やかたちに変わるには、この「思いを言葉に」する過程が必ず必要です。
言葉にすることによって言霊を持った「思い」が、自分や他人の心の中で育ち、やがてそれが何かの行動を起こす原動力となる。

私はこれを「言霊の力」と呼んでいます。
「思い」は「言葉」として発することで自覚し、また他から認知され,この世に存在します。
そうやって言霊を吹き込まれた「思い」は、やがて人の考えや行動に影響を与え、「かたち」になっていきます。

「言葉」を発することは、かたちのない「思い」を社会の中に存在させること。
そうやって生まれた「言葉」に宿された言霊たちが、自分の、そして人の心を動かし、明日の自分、明日の社会を形づくる。

そう思うと、言葉を発することってとても重要で意味があることなんだなと思います。

「業者」という言葉をどういう意味合いで使うのか。
「推進」という言葉にどんな言霊が宿り、それが誰にどんな影響を及ぼすのか。

「DX」という言葉が拓く未来は「電子化」でも「高度情報化」でもありません。
言葉に宿る言霊の力を信じて、思いを言葉に、言葉をかたちにしていけたらいいなと思います。

三題噺、いかがでしたでしょうか。
おあとがよろしいようで。デジデジ!

 

★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885

★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/

★そのほか、自治体財政の話、対話の話など、日々の雑感をブログに書き留めています。
https://note.com/yumifumi69/

 

~次回の日記は8月4日(木)に更新予定です!~

 

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