「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用

市川 博之

「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用 ~自治体・管理職編~ 第3回 始めたよ! そしたら業務上の課題が多く見つかるよ…【試行錯誤から知行合一へ達せよ】

地方自治

2022.09.27

覚悟を決めてDXを推進している途中だが、「おお! ここでも問題が」、「え? あそこでも問題が?」、「これってできないの? あれもダメなの?」…

――この先どうしたらいいのか分からなくなってきた…。

「DXを本気で進めたいと思っているんですが、あちらこちらで問題課題が山積されて全然進まなくなってしまいました、どうしたらよいでしょうか」

という遅々として進まず困っている方々に向けて、本連載では、全国の「できない、助けて!」とDXに迷える自治体職員の管理職の皆さんに向けて処方箋を提供していきたいと思います。

第3回は、始めたよ! そしたら業務上の課題が多く見つかるよ…【試行錯誤から知行合一へ達せよ】です。
どうやれば継続的に進められるのか、それがポイントです。

 

1.こういうのやりたいのだけれど、この部分に規制があって…

<症状:この時期によくある質問や言動> ・「条例が厳しくて…」 ・「会計規則が厳しくて…」 ・「相手側の民間企業に渡す時に変更がかかるとまずい…」 ・「すべての企業が電子化できるわけじゃない…」 ・「○○の方針が決まっていないところがある…」 ・「部門間に壁がある…」

<症状:このような発言が出るのはなぜ?> ・昭和の時代に作られて修正できている条例や会計規則がベースとなっているので、アナログのことしか考えられていない。 ・自分たちだけが変わっても、相手側が変わらないと使えないのでは、一部アナログを残す必要があるのでは、と思ってしまう。 ・自分ができていないことを、他のところのせいとして責任転嫁してしまう。 ・規制は「守るもの」だと思っている。 ・部門の権益は「守るもの」だと思っている。

<処方箋:自治体の皆さんへ> ・最初に言っておくと、行き詰まるのは悪いことではありません。やらなきゃ、行き詰まることすらありません。対応すべき課題やリスクはあって当たり前。その上で、それらをどうするかを考えるのです。行き詰まったとき、「あ、ここはダメだ…」で終わらせなければいいんです。

・規則は守るもの。これはそのとおりです。でも、時代に合わなくなったら変えていくのも規則です。だって、皆さん、租庸調の制度で税金を扱っていませんよね。時代に合わせて、必要なところは変えるのです。その変えるべき場所がわかったと思うことにしませんか? そして、それはいつ変えられるのか、いつまでに変えるのか、それを自分だけのメモでいいので残してみましょうよ。

・住民側も、「自治体が変わらないからアナログでもしょうがない…」と思っている面も多いんですよ。一度、住民に聞いてみましょう。何割かはお互い本当はやめたかったものあると思いますよ。

・自分はがんばっている、ではなくて、今回のDXでは周りも上司も巻き込むのです。知って行わざるは知らないのと同様です。知っていてできないではなく、知っているからこそ行動と優先順位をつけていきましょう。

・部門の権益? 誰の方向を見て仕事してるんでしたっけ。 複数の部門で組めば住民価値が出せる、コストが下がって価値が上がるならやる、なのです。そういう相談が普段からできるよう、小さなことからでもやるのです。

 

2.思ったよりも現場の把握を担当者もできていないよ…

<症状:この時期によくある質問や言動> ・「現場の状況がうまくまとまらないんです」 ・「局所的に細かく知っているのですけど、全体像がわかりません」 ・「担当者の入れ替えが多くて、しっかりと把握してる職員は忙しくて、調査が進みません」 ・「担当者が『自分の業務は複雑なのでシステム化できない』と思い込んでいます」

<症状:このような発言が出るのはなぜ?> ・ローテーション時の引き継ぎで、やることは引き継がれるが、意図は引き継がれない。 ・作業単位での説明はできるが、業務全体の説明となると、どこまでが業務なのか把握していない、もしくは、複数人で担当しているため自分の作業領域以外はわからない。 ・いきなり細かいところから聞いてしまっている。 ・年度会計職員の業務内容がブラックボックス化している。でも、アウトプットだけはわかる。 ・人でないとできないという思い込みがある。

<処方箋:自治体の皆さんへ> これ、業務ヒアリング能力をつけるチャンスですよ! まとめられない理由は2つあります。 1つめ。業務担当者側が何を説明していいのかわからないこと。何を意図していて何を作りたいという「目的」と「できあがり」、そして何に使うかを説明しているでしょうか? これ、ちゃんと擦り合わせてから行わないと、そりゃあ擦り合ってないものができあがりますよ。 2つめ。業務ヒアリングしているデジタル部門の側に業務ヒアリングのノウハウがないのです。業務ヒアリングってビジネスコンサルタントの領域なので、導入や開発とは違うスキルが必要です。そのあたり、鍛えてあげないとポイントをついたものになりません。

・「作業と業務は違う」を明確にしましょう、これが業務担当者とデジタル部門の擦り合わない一番のポイントです。In/Outが決まっていて1つひとつこなす作業(申請用紙をもらう、住所・氏名を確認し、チェック印をつける、バインダーに閉じる)のレベルからまとめていては、いつまで経っても終わらないし、この単位でまとめていると、作業の効率化=単なるデジタル化になってしまいます。作業の塊である業務の単位で確認していきましょうよ。

粒度の粗い業務フローから作り、それを分解して詳細化する。いきなり細かいRPAレベルのものを作らない!! 自治体職員さんは真面目だから、細かいところやりたくなっちゃうのはよくわかるんですけどね…。

・たまに見かけます。空のシートを渡して、まずは書いてくださいって言う場面。それ、「書いてほしい例」をつけないと、書き方がバラバラになりますよ! 絶対、いいサンプルつけてくださいね! 「ここに、これを書いてください」という説明文じゃないですよ、具体的な例ですよ!

 

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市川 博之

市川 博之

シビックテックラボ 代表理事、市川電産CEO、東京造形大学特任教授。

エンジニア・コンサルティングファームを経て、現職では自治体・企業・地域問わずICT全般の「デザイン×デジタル」を組み合わせ、コンサルティングから開発実装までを支援している。デジタル庁オープンデータ伝道師や総務省地域情報化アドバイザーも兼務しつつ、地域におけるシビックテック活動にも力を入れている。
「総務省データアカデミー」(データ利活用研修)や「自治体変革PJ-DX」(DXプロジェクトリーダー育成とマインドチェンジ促進の研修)など、自治体向けには伴走型の実践研修を提供し、全国で150以上の自治体で研修講師を務めるとともに、自治体DX推進計画のアドバイザーや、行政DXのコンサルティング支援を実施。主な著書は『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』(小社刊)。

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