「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用
「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用 ~自治体・管理職編~ 第1回 えっ、うちから始めるの?【無為徒食は思考停止と心得よ】
地方自治
2022.09.22
目次
3.うちの規模だと今ではないと思います…
<症状:この時期によくある質問や言動> ・「予算がないんです…」 ・「できる担当者がいないんです…」 ・「うちはパソコンの操作すら怪しい職員もいるので…」 ・何だかんだ言い訳をして、今やらない理由を作る。 ・リスクを語り、効果を語らない。
<症状:このような発言が出るのはなぜ?> ・リスクがあるものはやりたくない(プロスペクト理論)。 ・今のまま変えなくていいのではと思っている。 ・キーボード入力ぐらいしかできない人が本当にいる。 ・本当に予算がとれない。
<処方箋:自治体の皆さんへ> ・予算がとれないのはわからんでもないですが、私は付き合いのある自治体さんには、実施する有無は関係なく、企画や調査は進めておくことをお勧めしています。なぜかと言えば、国が補助金を付けてくれるときに何の準備もしていなかったら、その補助金を使うことはできないからです。予算がないなら、準備は万全にする。それが、先を見て仕事をするということです。
・プロスペクト理論とは、人は効果よりもリスクを強く意識して、たとえ、効果が上回っても、今やっていることができなくなるリスクがあるとそれを課題に評価してしまうことです。これがあるせいで、人は業務を変えようとすると、些細なレアケースまでも使って反論してくるのです。それを理解したうえで、業務改革を進めてみてはいかがですか? 反対されるのは当たりまえ、一つひとつのリスクを最小になるように丁寧に付き合ってあげなきゃDXなんて進まないんですよ。
・パソコンができないまま、それでもOKって風習はいい加減やめたらどうですか? 民間企業でタイムカードをスマホでオンライン化する際に、私はデジタル苦手だから…と言っても、ルールとして実施されるでしょう。リスキリングの時代が来ています。今のままのアナログに引っ張られる要素からまずは退治しましょう。GIGAスクールで子どもたちにデジタルを使っている一方、その予算をとっている自治体職員がタブレットやPCが使えないようではマズくないですか? 子どもたちが学んだことを、行政サービスでも使えるようにしなければならない時期が来ているのですよ。
・担当者やできる人がいない――それって、この先何もしなくて自然に解決するのでしたっけ? いないとわかっているのであれば、ここで育てるということを計画し意図的に担当者としての力をつけさせる(やらせてみる)ことをしなければ、いつになっても現れません。対外的なDXセミナーや研修もたくさんありますし、快く送り出してあげましょう。無料のオンラインセミナーもでいいんです、時間をとってあげること。これ即ち、タイムマネジメントができるのは管理職だけなのですから。作業に没頭させるだけでは、人は育ちません。
4.思考停止から抜け出そう!
ここまで書いてきておわかりいただけたと思いますが、全部の根底にあるものは、今までのやり方で、DXという新しい概念を進めよう(いや、進めてないのか)としている点です。
その方法で進めると、今までのIoT/ICTやビッグデータ、オープンデータなんかの二の舞でうまくいかないままDXも過ぎ去ってしまいます。
DXは、行動変容やマインドチェンジを伴うものです。
今までと違う動きをしなければ、今まで通りのデジタルツールの導入事業で終わってしまいます。
DXで必要なことは3つ、
①「効率化→価値創造」 ②「置き換え→チェンジ(変化)」 ③「費用対効果→QoS(Quality of Service;サービスの品質)の向上」 です。
そう、行動や考え方を変えていくんですよ。
すぐには難しくても、そういう心がけや気持ちを持つことが大事なのです。
私が管理職向けのDX研修はマインドチェンジ研修に注力しているのも、その点を重要視しているからです。
自治体の皆さんは効果算出がすこぶる苦手で、効率化の時間短縮効果しか考えられないパターンもよくあります。
今回は、新しい価値の創造を伴う改革なので難しいことも多いでしょう。
だからこそ、多くの担当者や部門を巻き込んで、どうすれば「うれしく」なるのかビジョンを一緒に作って令和の時代の価値を再構成していくのです。
管理職の皆さんは、この時代の変化を取り入れて、思考停止(先行事例踏襲など)から抜け出し、自分自身で判断する軸を作ってください。
イノベーションや新しいことは、急には誰も価値を理解できないのです。
それを自ら判断し実施するか決められるのは管理職の皆さんだけなのですから。
5.おわりに
私も業務改革の仕事を長くやっていたので、変えられないと思ってしまうことは理解できますが、動き・備えることを管理職としてしなければ、必要な時にどのように対応できますか?
DXの進め方がわからない、それは、管理職が失敗も含めてアレコレ考えて動く姿を見せていないからです。
担当者は上の人がやっていることは、やっていい分野だと判断します。
それを見せることこそ、管理職の役目ではないですか?
思考停止は、即ち機会損失です。
本来できたことを、考えることをやめることで先延ばししてはいけません。
リスクなんてあって当たり前です、リスクはマネジメントするものです。
むしろ、リスクが全く上がってこないなら、ちゃんと検討できていないのです。
自治体の言うところの「検討します」(サスペンド)ではなく、本当に「検討」していきましょう。
今なら、自分の地域にあったDXが十分できるのですから。
イラスト/市川希美
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★第2回 重要性はわかった。で、何から?【守破離の守から始めて深根固柢を整えよ】(Click!)
★第3回 始めたよ! そしたら業務上の課題が多く見つかるよ…【試行錯誤から知行合一へ達せよ】(Click!)
著者について
市川博之
シビックテックラボ 代表理事、市川電産CEO、東京造形大学特任教授
エンジニア・コンサルティングファームを経て、現職では自治体・企業・地域問わずICT全般の「デザイン×デジタル」を組み合わせ、コンサルティングから開発実装までを支援している。デジタル庁オープンデータ伝道師や総務省地域情報化アドバイザーも兼務しつつ、地域におけるシビックテック活動にも力を入れている。
「総務省データアカデミー」(データ利活用研修)や「自治体変革PJ-DX」(DXプロジェクトリーダー育成とマインドチェンジ促進の研修)など、自治体向けには伴走型の実践研修を提供し、全国で150以上の自治体で研修講師を務めるとともに、自治体DX推進計画のアドバイザーや、行政DXのコンサルティング支援を実施。主な著書は『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』(小社刊)。
『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』 市川博之/著
(発行年月: 2019年12月/販売価格: 2,310 円(税込み))