「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用

市川 博之

「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用 ~自治体・管理職編~ 第1回 えっ、うちから始めるの?【無為徒食は思考停止と心得よ】

地方自治

2022.09.22

一般職員編の短期連載から半年ほど経ちました。
一般職員にとどまらず、迷える管理職の皆さんからのDXの相談も増えてきています。

「やらなきゃいけない情報はたくさんくるが、自分たちではやり方がわからない」
「どこから進めたら、どの部門と一緒にやっていいのか、わからない」

特に多いこんなお悩みへの回答として、本連載では、全国の「できない、助けて!」とDXに迷える自治体職員の管理職の皆さんに向けて処方箋を提供していきたいと思います。

*自治体・一般職員編の記事はコチラ
https://shop.gyosei.jp/online/archives/series/「できない、助けて!」どーする?-dx・サービス

第1回は【無為徒食は思考停止と心得よ】です。
考えることを諦めたら、そこでその自治体のDXは終わりです。
だって、最初からトランスフォーメーションできてないのですから。

 

1.DXってどうすれば成功できますか?

<症状:この時期によくある質問や言動> ・「成功している自治体の事例はありませんか?」(=担当者と同じことを言う) ・「成功している自治体はありますか?」 ・「やっぱり外部から人に入ってもらうしかないでしょうか?」 ・「相談する場所や情報を得るところ、どこかないでしょうか?」 ・「進め方がわかりません」

<症状:このような発言が出るのはなぜ?> ・ちゃんとDXのことを考えていない、この一言に尽きるかもしれません。 ・マネればDXだと思っている。 ・誰かがやってくれればDXになると思っている。 ・教えてくれる人がいない、といった昔ながらの受け身のマインド。 ・自分は変わらず、周りが変わることを望んでいる。 ・元電算室あるあるの、他部門の巻き込み方がわからないから、「進め方がわかりません」になってしまっている。

<処方箋:自治体の皆さんへ> ・最初に言っておくと、私は、DXに成功した自治体なんて知りません。DXに挑戦している勇者たちは知っています。DXは、定着してこそ成功と言えます。局地戦で勝利を収めている偉大な方々もいますが、私の見るところ全庁的に取り組めているかと言えば、表面的には派手に振る舞っていても、実質はまだまだなので、助けてと依頼が来るような状況です。私が、大きな都道府県や、政令指定都市の研修をしているところを見ても、まだまだ道半ばということがわかるでしょう。その道の1歩目から自分で選ばないで、その後の道筋はどのように歩むのですか? 自らの足で踏み出しましょう、その1歩目を。

・外部から来る人の多くは傭兵です。戦いが終われば帰ります。外部から来た人に何を求めていますか? 一番求めなきゃいけないことは、DXのための導入事業の支援ではなく、庁内のDX人材に対してどうやって外部人材の知見をトランスファーするかですよ? 戦が終わったら、システムだけ残って人材は残らなかったら、その後に続くDXなんてないのですから。

・マネる前に、考えなきゃダメです。自分の自治体と、他の自治体の事情は全く同じなのですか? 違う要素があるのであれば、自分の自治体として何が最善なのか方針を立てるのが管理職の仕事でしょう? 例えば、数万人の市と政令指定都市で全く同じ方法が通じるとは限りません。一例を挙げれば、RPAは処理数が大きい(=人口が多い)ほど1件あたりの効き目が小さくても効果が出ます。RPAを活用して、大都市では効果が出たとしても、小さな街ではそれほど効果がないことなんてザラであり、その場合はRPAのコストのほうが高くついてしまいます。窓口改革だって同じですよね。人口が1,000人以下で高齢者が多い村であれば、ひょっとすると移動型窓口になるほうがいいかもしれないし、常に「これが最高の施策か?」と問いを持つことが大事です。

・情報が見つからない? 相談ができない?
なぜ、デジタル庁の「デジタル改革共創プラットフォーム」を使わないんですかね? 課長級でも使っちゃっていいんですよ。自分から外に出て行かない限りは、情報なんて手に入るわけがありません。昔のように、リアルで会う、書籍を読む、国からの連絡を待つだけではないことができる時代なのです。その心をまずはトランスフォーメーションしてください。

・周りが巻き込めない場合、「どこから始めていいかわからない」は大正解です。だってDXって、全庁的なプロジェクトや、人事や企画部門と同じく横軸を刺す部門になってくのですもの。巻き込みができない段階で、そこで終了ですよ? できそうな部分から導入をお願いして回るのではなく、人事や企画と組んでしっかりと組織としての活動ができるように采配しませんか? トップからの錦の御旗をもらうことでも構いません、これからは電算のおもりが仕事ではありません、DXは人を動かす「改革」の仕事ですから。

 

2.自分のところから始める必要ありますかね?

<症状:この時期によくある質問や言動> ・「標準化のあとや他の自治体ができたあとにやるほうが効率的では?」 ・「まだ決まっていないところに手を出すと手戻りがある」 ・「確定してから進めたいと思います!(キリッ」 ・「近隣の中心都市が始めてからでいいと思います」 ・「組織や庁内でも進め方がまだ決まっていません、整ってからにしたいです」

<症状:このような発言が出るのはなぜ?> ・考えることをしたくない(またか)。 ・失敗をしたくない。 ・自分自身で周りを説得できる自信がない。 ・面倒なことを進んでしたくない。 ・今の仕事で手いっぱいなのに増やしたくない。

<処方箋:自治体の皆さんへ> ・このタイプの管理職はすべてが受け身。決定事項だけをしていくことになってしまうため、魂のこもらないDXとなってしまうでしょう。DXには熱量が必要です、そして泥臭いものです。自分で考えていないことを、どうして、人にやってもらうことができましょうか。腹を括って自分がやる、と言い出せない状態では周りからもそのような目で見られることでしょう。言われたからやるではなく、自ら提案する。これが、DXを管理職として進めるときの心構えです。

・業務改革を進めているのです。失敗をしたくないと言いますが、思考停止して後回しにしているその状態こそ「機会損失」という大失敗に陥っているのです。担当者には事業を決める権限はほとんどないでしょう。「できない」→「できる」に変えられるのは管理職のみです。この管理職も動かないようであれば、どのようにデジタル「トランスフォーメンション」できるというのでしょうか。

・茹でガエル状態になってやしませんか? 今は忙しい、ならば、これから人が減り、高齢者は増えていく世の中では、さらに社会的負担は増えるし、職員が減っていけば1名あたりの仕事量は増えていきますよ(例えば、橋梁の調査なんて人が減っても仕事は減りません)。今、やらなければ、10年後に行政サービスが保てないものが出てくるのです。先送りにして困るのは現役の世代です。今こそ、未来のためにひと仕事しましょうよ。

・標準化についてそう思っているならば、積極的に情報を入手したり、なんなら自分の自治体から検討に参加させてもらったりするなどしたほうがよいのでは、と私は思います。そうすれば最初に理解して進められるのですから。何もしないで止まっているのと、自ら情報を得にいく、学び準備するのは意味がまったく違います。

 

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市川 博之

市川 博之

シビックテックラボ 代表理事、市川電産CEO、東京造形大学特任教授。

エンジニア・コンサルティングファームを経て、現職では自治体・企業・地域問わずICT全般の「デザイン×デジタル」を組み合わせ、コンサルティングから開発実装までを支援している。デジタル庁オープンデータ伝道師や総務省地域情報化アドバイザーも兼務しつつ、地域におけるシビックテック活動にも力を入れている。
「総務省データアカデミー」(データ利活用研修)や「自治体変革PJ-DX」(DXプロジェクトリーダー育成とマインドチェンジ促進の研修)など、自治体向けには伴走型の実践研修を提供し、全国で150以上の自治体で研修講師を務めるとともに、自治体DX推進計画のアドバイザーや、行政DXのコンサルティング支援を実施。主な著書は『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』(小社刊)。

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