地方公共団体のオープンデータをより多く使ってもらうために

地方自治

2022.06.23

この資料は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊J-LIS」2022年6月号に掲載された記事を使用しております。
なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。

地方公共団体のオープンデータをより多く使ってもらうために
(よく分かる情報化解説 第87
回)
元横須賀市副市長 HIRO研究所 廣川 聡美

(月刊「J-LIS」2022年6月号)

 

学ぶべきPOINT
オープンデータ推進にあたり、公開されたデータが活用されるために留意すべきポイントを考えましょう。

1 はじめに

 オープンデータを推進する上で気になるのは、公開したデータが活用され、役に立てられているのかどうか、どうしたら役立ててもらえるかということだと思います。オープンデータ推進は法律(官民データ活用推進基本法)で義務付けられていますので、進めることは当然です。担当の職員の皆さんが様々な業務に前向きに取り組むためのモチベーション維持向上にオープンデータが役に立っている実感や未来で役に立つ予感、手応えが必要です。粛々と取り組みを進めることに加えて、一部でも良いので、成果を早く目に見える形にすることが大事です。それには、公開したオープンデータを少しでも多く使ってもらうためのアプローチが必要です。本稿では、そのための方法を、データ利用者とデータ提供者の両方の視点から考えてみることにします。

2 データ利用者の視点

 データ利用とは、地方公共団体が公開したデータを加工したり、他のデータと組み合わせたり、見せ方を工夫したりすることにより、自らの事業や研究等に利用する場合と、その結果を第三者に情報提供する場合とがありますが、その両方を含んだ利用者の視点に立って考えてみましょう。利用者の視点で望ましいオープンデータとは、利用したい、利用しやすい、探しやすい、信用できる、適切に更新されているなどの単語がすぐに浮かんできます。

 「利用したい」とは、その分野の情報に関するニーズが高いということですが、2018年度に国が実施した地方公共団体アンケート(「オープンデータの取り組みに関する自治体アンケート結果(No.20)」1))によると、地方公共団体(217団体)が利用者ニーズ調査を行った結果、ニーズは、防災分野の各種情報、基礎的な統計情報(人口、産業等)、公共施設の位置やサービスに関する情報、観光に関する情報、子育てに関する情報、健康づくり・医療福祉に関する情報の順となっていることが分かります。その後の社会状況を踏まえれば、医療や健康等に関する情報のニーズはさらに高まっていると思われます。

1)「オープンデータの取組に関する自治体アンケート結果」
https://www.digital.go.jp/resources/data_questionnaire/

 政府が地方公共団体に対して公開を推奨しているデータと、公開するデータの作成にあたり準拠すべきルールやデータフォーマット等を取りまとめたものが「推奨データセット」2)です。推奨データセットは、基本編と応用編に分かれており、オープンデータの取り組みを始めるにあたっては、まずは基本編から取り組むことが勧められています。基本編には、AED設置箇所一覧、介護サービス事業所一覧、医療機関一覧、文化財一覧、観光施設一覧、イベント一覧などのデータ名と、1件ごとのデータが備えるべきデータ項目等を記述したデータ項目定義書(項目ごとの説明やデータ形式等を示した文書)がセットで掲載されていますので、ぜひご覧ください。基本編は、公共施設等に関するデータが多く取り上げられており、GIS(地理情報システム)との連携による多様な利活用がイメージされます。応用編には、学校給食献立情報や小中学校学区区域情報、各種支援制度の情報など、多様なデータセットが示されています。これらを参考に、公開可能なデータ、公開するデータを検討していただくと良いと思います。

2)「 推奨データセット」
https://www.digital.go.jp/resources/data_dataset/

 また、実際に利用されている事例を参考にすることもお勧めします。利用されている事例は、デジタル庁のWeb サイト「オープンデータ100」3)からダウンロードすることができます。オープンデータ100 には、民間企業や地方公共団体におけるオープンデータの利活用事例等が、新規性、実用性、継続性などの観点で審査の上、掲載されています。どういうデータが、どのように使われ、どんな役に立っているのか、まずは概要を把握してみてください。その上で、応用が可能と思われる事例があれば、検討されてはいかがでしょうか。

3)「 オープンデータ100」
https://www.digital.go.jp/resources/data_case_study/

 「利用しやすい」とは、まさにオープンデータの定義(オープンデータ基本指針)にある通り、誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう、①営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの、②機械判読に適したもの、③無償で利用できるものの、いずれにも該当する形で公開されることが前提となります。①の利用ルールについては、特段の理由がない限り、CC BY(クリエイティブ・コモンズ表示4.0国際)等を用いることが望ましいとされています(地方公共団体オープンデータ推進ガイドライン4))。その理由は、利用のための制約が少ないこと、シンプルで利用者が理解しやすいこと、国際的に広く採用されており、利用者がデータを組み合わせて利用する際にライセンスの問題で悩まなくて済むこと等です。②の機械判読に適したものとは、コンピュータにダウンロードし、データを判別し、処理や編集加工等を行うことが容易にできる構造やデータ形式で作成するということです。データの利用にあたっては、他の地方公共団体や国、民間企業等が公開しているオープンデータと組み合わせて活用することが見込まれるため、データ形式や分類方法等を整えておく必要があるのです。特定のアプリケーションでなければ開けないのでは困ります。ガイドラインには、データの内容やアクセス方法について、共通語彙基盤5)やコードの規格等に準拠させておくことや、構造化しやすいデータについては、オープンデータの評価指標として用いられている「5つ星」(5Star Open Data)のうち、3つ星以上(特定のソフトウェア機能に限定されず共通で利用できるデータ形式(CSVやXML))での公開を原則とすることとされています。なお、共通語彙基盤とは、国や地方公共団体などの組織間での情報交換を円滑化するために、共通の用語集を取りまとめたものです。

4)「地方公共団体オープンデータ推進ガイドライン」
https://cio.go.jp/policy-opendata

5)「共通語彙基盤」
https://imi.go.jp/goi/

 「探しやすい」ことも、大事な要件です。探しやすいとは、検索がしやすいこと、手間や時間をかけずに、目的のデータに到達できることです。検索を容易にするためには、データの分類(カテゴリー分け)やタグ付け(データに対して短い単語(キーワード)をいくつか付けて整理する方法)を行います。分類の方法としては、国が公開しているDATA.GO.JP では、政府統計の総合窓口「e-Stat」で使われている分類や日本標準産業分類などが使われています。また、地方公共団体の事業名やサービスの名称等を共通化する取り組みとして進められている「ユニバーサルメニュー」(NPO団体アスコエ、一般社団法人ユニバーサルメニュー普及協会)6)等をもとに、「地方公共団体が保有する情報の標準分類(サンプル)」7)が作成されていますので、ご参考までに。

6)「ユニバーサルメニュー」
https://universalmenu.org

7)「 オープンデータをはじめよう 地方公共団体の最初の手引き書」P.94〜P.95
https://www.data.go.jp/data/dataset/cas_20150305_0002

 また、複数の地方公共団体が同じサイトでデータを公開することにより、少ないステップ数で目的のデータに到達することができるようになります。都道府県がサイトを立ち上げ、域内市区町村がそのサイトを利用している例もあります。利用者の視点に立った公開方法だと思います。同じデータ形式で、広域でまとめて公開できれば、もっと簡単にダウンロードができます。

 「信用できる」「信頼できる」データであることも重要な点です。データの作成や管理にあたって万全の注意を払い、データの信頼性を維持することはもちろんですが、悪意を持った利用者が、編集・加工した情報をあたかもデータの公開主体が作成したかのように公表し、利用される懸念もあります。特に改ざんが心配されるデータについては、公開サイトに元のデータを残しておき、比較できるようにすることや、電子署名やタイムスタンプなどの改ざんを検知する技術的方法を導入すること、利用規約に禁止事項として盛り込んでおく等の措置を講じることとします。「適切に更新されている」ことも、信用できるデータであるために必要です。お知らせやイベント情報等、データの鮮度がその価値に関わるデータはもちろん、統計情報やサービスに関する情報等のデータが更新された場合には、可能な限り迅速に公開する必要があります。一定期間、変化のないデータもあると思いますが、変化のないことを確認することも大切です。長期間更新されていないデータは、疑いたくなるものです。組織変更等の原因により、参照サイトのリンクが切れてしまっているケースもあり、注意が必要です。データに対する信頼度は、それを公開する組織に対する信頼度であるとも言えるのではないでしょうか。

3 データ提供者の視点

 次に、データを提供する側の視点で考えてみましょう。オープンデータをより多く使ってもらうために本稿では、①推進体制をしっかり整えること、②モチベーションを維持すること、③見直しと改善を継続することの3点に触れておきたいと思います。

 1点目の推進体制については、すでに整えておられることと思いますが、企画政策部門や総務部門等に位置付けられたオープンデータ推進担当と情報部門やDX推進部門が連携し、中心となって、種々のデータを所管する事業原課を加えた庁内横断的な推進チームを編成し、取り組まれているかと存じます。まずは、そのチームの現状を把握することをお勧めします。現在の活動状況、オープンデータに関するメンバーの理解、データの更新状況などを確認してみてください。人事異動等で担当者が変更されている場合もあると思います。メンバー同士のコミュニケーションがうまく取れているか確認し、情報交換や勉強会を開催してみると良いのではないでしょうか。オープンデータは、いったん公開すればそれで終わりというものではありません。息の長い継続が必要なのです。その仕事を担うチームと、そのメンバーを大切に育て、世代を越えてつないでいく必要があるのです。

 2点目のモチベーションの維持も重要です。オープンデータの政策の旗振り役は、企画部門や情報部門等ですが、データの作成などの実務を直接に担当するのは業務所管部門の職員だと思います。彼らがモチベーションを維持して、仕事に自信と誇りを持って気持ちよく働ける環境でないと、疲労が重なることで、データの品質が落ちたり、適切に更新されなかったりというようなことになりかねません。では、どうすれば良いでしょうか。なんといっても、仕事が形になり、住民や地域社会の役に立つこと、それを実感できることが第一です。

 役に立つとは、文字通り、利用者さらには二次利用者の課題解決の役に立つことです。実際にデータが活用され、それが役に立っていると提供者に伝わることによってはじめてフィードバックされるのです。そのためには、まず、旗振り役の推進部門の皆さんが利用者への積極的な働きかけを行うことが不可欠です。利用者へのアピールは、データ公開サイト(カタログサイト等)への掲出、関係するアプリ事業者等への直接連絡、報道発表、国への報告、国のデータカタログサイト(DATA.GO.JP)への登録など、多様な手段で粘り強く、繰り返し行うことをお勧めします。また、どういうデータが、どのように役に立っているか先行事例等を調べて、提供者と共有することも大事です。手を尽くして、利用者にデータを活用してもらい、その結果を提供者にフィードバックしてこそ、労に報いることができるものです。そうしてチーム全体のモチベーションを高めて行くことが継続につながります。

 3点目は、見直しと改善です。オープンデータの取り組みは継続が大事です。一度公開すれば、それで完了ではありません。公開することが目的ではなく、利活用してもらうこと、役立ててもらうことが目的なのです。したがって、公開しているデータの質・量が適切かどうか、他に公開すべきデータはないか、公開のルールや仕組み・方法はどうか、適切に更新されているか、利活用の働きかけは十分に行われているか等々について、利用者や事業者、専門家等の意見を聴取し、その結果をもとに見直し、改善していくことが必要です。点検のポイントは、公開しているデータの分野・領域について、関係者のニーズを確認し、反映されているかや、公開しているデータの公開ルールが二次利用可能なルールとなっているか、データ形式が機械判読の容易な形式となっているかなどです。データ公開の仕組みについては、横断的に検索が可能か、一括でダウンロードができるか、システムから容易にデータにアクセスできる仕組み(APIなど)を提供しているかなどをチェックし、必要であれば改善することにより、利活用を推進するのです。

 オープンデータ推進の目的は、住民やまちの課題の解決と地域の活性化です。多忙な日常業務の中で、ややもすると後回しにされるきらいもありますが、ぜひとも様々な方法や視点で推進状況を見直し、データの利活用を進めていただきたいと思います。

 

 

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特集:自治体で広まるデータ利活用

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