こちら「湯河原町」情報化本部 デジタル推進室と外部組織立ち上げにより観光立町のデジタル化推進に挑む
地方自治
2022.06.24
この資料は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊 J-LIS」2022年5月号に掲載された記事を使用しております。
なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。
こちら「湯河原町」情報化本部
デジタル推進室と外部組織立ち上げにより観光立町のデジタル化推進に挑む
古くから温泉地として知られる湯河原は、神奈川県の西南端に位置し、首都圏からのアクセスもよい自然豊かで温暖な町。近年では、観光だけでなく、リタイア後の移住地としても注目されている。
湯河原町の紹介
東に相模灘を望み、他方を緑深い山々に包まれ、ホタル舞う二本の川の流れる湯河原町は、四季を通じ温暖な気候に恵まれています。また、湯量豊かな温泉は、万葉集に詠まれた唯一の温泉として古くから名湯と伝えられ、多くの文人墨客に愛され、観光地として、多くの人々を癒してきました。
近年では、「人を癒して1200年 湯河原」というキャッチコピーによる町のイメージ戦略やロケツーリズムを推進することでメディアへの露出が増えたことにより、まちの魅力度ランキングが122位から55位に急上昇したことを、職員一同、大変うれしく思っております。
情報化の経緯とデジタル推進室の設置
当町における情報化は、1977年度にコンピュータの汎用機を導入し、住民記録・税等のバッチ処理を開始し、1986年度には、バッチからオンラインへのシステム移行、2006年度には、汎用機からクライアント&サーバ型のシステムへ移行し、住民記録・税・福祉等の基幹業務のほか、財務会計、人事給与等の内部業務のシステム化を行ってきました。
そして、神奈川県内の全町村で神奈川県町村情報システム共同事業組合(通称「シス組」)を立ち上げたことにより、2012年度からは、シス組が提供するクラウド型システムを県内全町村が使用する共同処理の形態へと移行し、現在にいたります。その間、町の機構改革に合わせ、組織を電子計算係、電算室、情報システム係、情報処理係と変革させてきました。国が推進するデジタル化への迅速な対応やさらなる住民の利便性向上と行政の効率化の推進のため、情報処理の役割は大きな変革を迎えることから、2021年4月に地域政策課情報処理係を廃止し、新たにデジタル推進室を設置しました。
デジタル推進室設置から1年の振り返り
デジタル推進室設置後、1年が経過し、その間、DXを推進するための庁内組織及び外部組織の立ち上げ、職員を対象とした研修、また、デジタル推進計画策定の基礎資料とするための「デジタル化の推進に関するアンケート」を町民及び事業所に対し実施しました。
当町のデジタル推進室職員は、情報処理のスキルは、かなり高いものでしたが、一方で、会議の設置・運営など、未経験の事務が多く、これまでになかった気苦労が絶えませんでした。また、新たに室長は設置しましたが、課員の補充は行わずに、従来の事務処理にプラスして「デジタル化」が加わったことで、デジタル関連の情報収集や分析など、例年以上にマンパワーを必要とする1年でした。
外部組織につきましては、「デジタル化推進会議」を設置し、委員は副町長を座長として、町の経済団体等からの推薦のほか、一般公募、大手ベンダーからの推薦による有識者の15名で構成しました。この「デジタル化推進会議」では、委員の皆がデジタルに精通している方だけではないため、極力「DX」という言葉を使わないように心がけるなど、デジタルアレルギーを少なくする工夫を大切にしました。この組織は、デジタル推進計画策定に向け、本年度から本格的に始動していくことになります。
次に、アンケートの結果についてですが、個人アンケートでは、今後、デジタル化によって、町民が利便性の向上を実感できるかが鍵となり、その中でも、高齢者や機械が苦手な人、機器の無い人への配慮が必要であり、そのためには、丁寧な説明や利用方法の指導などが、デジタル化を進めるにあたっての課題であることが導かれました。
また、事業所アンケートでは、社会が急速にデジタル化していく中で、この流れに乗り遅れることは観光立町である当町にとって致命的であり、デジタル化による未来像、そのメリット・デメリットを、住民だけでなく事業所の方々にも広く示し、理解を深めていくことが重要であることが明らかとなりました。
今後の取り組み
今後の取り組みですが、2022年度には、デジタル推進計画の策定を行ってまいります。この計画では、国の重点施策である「自治体の情報システムの標準化・共通化」や「セキュリティ対策」につきまして、シス組や神奈川県と調整しながら進めることになります。
また、「行政手続きのオンライン化」「地域社会のデジタル化」においては、まずは、具体的な課題の整理やニーズの把握等を行っていくわけですが、予算も伴うことから、優先順位の決定やシステム導入に至る目標年次・KPIの設定等の実施計画までをまとめられるかが大きな課題となると推測しています。
庁内では、職員研修等を通じて全庁的に業務の変革の必要性が認識できたことにより、この4月にデジタル推進室の職員が1名の増員となりましたが、いずれにしても、初めての計画となるため、手探りで進めることになります。
当町のデジタル推進室のポリシーである「システムにおける一番重要なことは『優しさ』」を維持し、今後も湯河原町の地域性を重視した施策に取り組んでまいりたいと考えております。