保育者のリアルなお悩み、弁護士が解決します!

吉永公平

保育者のリアルなお悩み、弁護士が解決します! 第6回 ③事故以外の保育園の運営に関するトラブル

NEWぎょうせいの本

2022.06.22

連載 保育者のリアルなお悩み、弁護士が解決します!

弁護士・春日井市総務部参事
吉永公平

第6回 ③事故以外の保育園の運営に関するトラブル

事故以外にもトラブルがたくさん

 今回は、保育園において法律が関係する場面として第1回でご紹介した①~⑨のうち、③事故以外の保育園の運営に関するトラブルを解説します。「そもそもこれは保育園の問題なのか」という観点も重要となります。なお、責任や謝罪の種類については、第4回をご参照ください。

送迎関係

 保護者による園児の送迎関係のトラブルは少なくありません。駐車場が少ないという保護者の苦情に関しては、保育士が解決できる問題ではありません。駐車場の整備は公立園なら保育課、私立園なら本部の所管事項です。そもそも保育士に駐車場の話をしても、保育士には解決する権限がありません。ですから、保護者としては、保育士ではなく保育課や本部に直接お話をすべき内容なのです。

 とはいえ、保護者にとっては保育士が身近な存在のため、何でも保育士に言ってしまうというのが現状でしょう。そのような保護者の気持ちもわからなくはありません。そのため、いったんは保育士から「ご不便をおかけしていますが」といった「感情に配慮した謝罪」を伝えることは、やむを得ないところです。ここで理解しておきたいのは、公立園であれ私立園であれ、保育園には全ての保護者を満足させるほどの駐車場を整備する義務はないという点です。そのため、保護者に伝える謝罪は「非を認める謝罪」ではなく、「感情に配慮した謝罪」にとどまります。

 また、駐車場が少ないと何度も保育士に苦情を言う保護者がいれば、「保育士では駐車場の件を決められませんので、保育課・本部に直接お話しください」と保護者にお伝えすべきです。権限がない保育士との話を繰り返しても、双方にとって有意義ではありません。これは保育士の責任逃れではなく、適切な役割分担です。この役割分担を適切に行わないと、保育士が本来果たすべき保育にも支障が生じかねません。

 また、保護者の路上駐車等の交通マナーにつき、近隣の方から苦情が入ることもあるでしょう。この場合も、大の大人である保護者に関する交通マナーですから、保育園が本来責任を負う問題ではありません。そもそも、保育園が園児を受け入れる前や、園児を保護者に引き渡した後の出来事ですから、保育園の権限の範囲外の問題です。そのため、本来であれば「保育園に言われても…」という内容です。

 しかし、近隣の方としては、「保育園がなければ送迎問題もないのだから、保育園が保護者の交通マナーに責任を持つべきだ」と考えているのかもしれません。本来はこのような考え自体を改めてもらえると助かるのですが、近隣の方のお気持ちもわからなくはないところです。そこで、近隣の方に対しては、「保護者にはご意見をお伝えします」と回答することが考えられます。この際、理屈上は「感情に配慮した謝罪」さえ不要です。まさに保護者の問題に過ぎないため、保育園には「道義的責任」さえないからです。この点は、保育園自身の問題である「駐車場をどこまで整備するか」とは異なります。ただし、近隣の方への感情的な配慮から、あえて「ご迷惑をおかけしておりますが」という言葉を用いることも構わないと思います。

騒音関係

 年々、保育園から出る「音」に関する苦情が増えているように感じます。園児の声等を「騒音」と呼ばれることさえ悲しい思いがします。騒音に関する「法的責任」の有無は、諸般の事情を考慮した上で、「受忍限度の範囲内」か否かで判断されます。人は社会で生活する際、騒音や振動、日当たり、道路の渋滞や排気ガス等、お互い様としてある程度の不便さを受け入れないと社会が成り立ちません。そのため、ある程度の不便さは「受忍限度の範囲内」であるとして、違法とはならないというものです。

 保育園に関する音のうち、園児の声は法律・条例により直接的な規制をされていません。しかし、「受忍限度の範囲内」を超える音になれば、違法と評価されてしまいます。音の大きさが何デシベルから違法となるとは明確に線引きし難いですが、通常の保育園で見受けられる園児の声であれば、近隣の方の「受忍限度の範囲内」を超えることはそうそうないと思います。裁判所も、「受忍限度の範囲内」か否かの判断においては、上述した「諸般の事情」を考慮する際に、保育園の公益性・公共性も考慮すると述べています。

 なお、エアコンの室外機は騒音規制法の対象になる場合があります。この場合は、室外機の音が一定のデシベルを超えると、法的にも問題があります。保育課や本部の所管事項だと思いますので、室外機から異常に大きな音が出ている場合は、保育課や本部に対応を依頼してください。

 次回は、④保護者・近隣への対応方法について解説します。

[著者プロフィール]

吉永公平(よしなが・こうへい)
名古屋大学法学部卒業、名古屋大学法科大学院修了後、2012 年弁護士登録。法律事務所にて勤務した後、2014 年春日井市入庁。現在、総務部参事。職員からの法律相談や職員研修、庁内報の発行、要保護児童対策地域協議会(実務者会議)への参加等を主な業務としている。兼業として、中京大学総合政策学部(地方自治法)・名古屋学院大学法学部(情報法)・名古屋大学法学部(法曹養成演習Ⅳ実務)非常勤講師や、他の自治体や劇場での研修講師も務める。愛知県弁護士会行政連携センター運営委員会委員。1児の父として約3か月の育児休業を取得。

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