保育者のリアルなお悩み、弁護士が解決します!

吉永公平

保育者のリアルなお悩み、弁護士が解決します! 第2回 ①日常的な園児との関わり(1)人権に配慮した保育

ぎょうせいの本

2022.05.18

連載 保育者のリアルなお悩み、弁護士が解決します!

弁護士・春日井市総務部参事
吉永公平

第2回 ①日常的な園児との関わり(1)人権に配慮した保育

子どもにも人権はある

 今回は、保育園において法律が関係する場面として前回ご紹介した①~⑨のうち、①日常的な園児との関わりについて解説します。日常的な園児との関わりの中でも、一番重要なのは「人権に配慮した保育」です。園児に限らず、子どもは人権を有しています。

人権とは何か

 人権とは、文字通り「人」の「権」利です。人権は、人が生まれながらにして有するものです。「子どもだから人権はない」ということはありません。憲法11条も「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」と定めており、子どもを除外していません。

 たまに「権利と義務」の関係を誤解して、「子どもは義務を負わないから、権利もない(認めるべきではない)」と言う人がいます。しかし、義務を負う人(例えばお金を払う人)は、「ある一場面において、権利を有する人(例えばお金をもらう人)の相手方となる」ことを意味するに過ぎません。お金を払う人ともらう人は別人です。よって、「子どもは義務を負わないから、権利もない(認めるべきではない)」という考えは、法律的には誤りです。

 なお、憲法11条は「国民」と定めているので、「外国人は人権がないの?」という疑問が生じます。しかし、そのようなことはありません。憲法は「外国人にも、人権の性質によっては限界があるものの(国政選挙の選挙権や入国の自由等)、可能な限り人権を保障する」と考えています。「国民」という表現は言葉のアヤです。保育者のみなさんが外国人の園児に対して不当な扱いをしていないことと同じです。

子どもの人権

 憲法には様々な人権が定められています。それらを全部マスターしようとすると大変ですので、大切な関係図を一つお示しします。

 私たちは義務教育の中で、「憲法は『国民主権』『基本的人権の尊重』『平和主義』が3本柱だ」と学びます。しかし、実はこの3本柱の上位概念=大目的があります。それは「個人の尊重」です。憲法13条前段は「すべて国民は、個人として尊重される」と定めています。「人は、組織や他の誰かにいいように使われるのではなく、一人の人間として尊重されるべきである」という考えです。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義は、それら単体で十分大切なものです。しかし、真の目的(大目的)である「個人の尊重」を実現するために、これら3本柱(小目的)が大切である、ということなのです。
そうすると、「子どもの人権を尊重すること」(小目的の一つ)は、「子どもを個人として尊重するため」(大目的)、ということになります。

子どもの人権の中核=幸福追求権

 憲法には様々な人権が定められています。たとえば、健康で文化的な最低限度の生活が保障される「生存権」、自由な考えを邪魔されない「思想・良心の自由」、言いたいことを言う「表現の自由」、手に入れた財産を不当に奪われない「財産権」等です。これらの人権は、究極的には「個人の尊重」の実現のためのものです。「個人の尊重」は憲法13条前段で定められていますが、続きの後段では「(前略)幸福追求に対する国民の権利については、(中略)最大の尊重を必要とする」と定められています。これを「幸福追求権」といいます。子どもを含め、私たち人間は、「幸福追求権」が憲法で保障されていたのですね。

 様々な人権は、一言で言えば「『幸せになるための権利』の各場面でのあらわれ」です。子どもの人権の中核は(大人も同様ですが)、あえて大雑把にいえば、「幸福追求権」なのです。子どもに幸せになってもらうのは、私たち大人の願いでもありますよね。

幸福追求権をもう少し具体的に

 「そうか、『幸福追求権』が大切なのか」とはいうものの、あまりピンときませんね。「幸福・幸せ」が何かはっきりしないからです。人によって「幸福・幸せ」の意味は異なるでしょう。そうであっても、子どもにとってすべからく共通する「幸福・幸せ」もあるはずです。その代表例は次のⅰⅱです。

 ⅰ「適切な保育を受ける権利」は、子どもがまだ成長途中で自立できないため、大人から育ててもらう権利です。この「大人」には保護者と国・自治体(そこから派生する保育園も)が含まれます。児童福祉法1条は憲法の考えを踏まえて、「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する」と定めています。

 ⅱ「意見表明権」は、子どもがまだ成長途中で自立できないとしても、一人の人間として意見があるはずであり、それを表明することは尊重されるべきである、という権利です。子どもは意見を上手く表明できないこともありますので、大人が子どもの意見を上手くキャッチする必要があります。日本が締結している「児童の権利に関する条約」12条も、意見表明権を保障しています。筆者も保育書を読んで、「保育士は、まだ言葉が話せない乳幼児にも真摯に向き合い、何を考えているかをキャッチしようとする。真の保育とは、大人の都合を子どもに押し付けるものではない」ということを学びました。

 ⅱはⅰの一部ともいえます。しかし、ⅰは子どもがやや受け身である一方、ⅱは子どもの主体性を正面から認めるものであるため、独立してⅱに位置付けました。

 次回は、①日常的な園児との関わりの続きとして、園児の呼び方とチーム保育園について解説します。

 

 

[著者プロフィール]

吉永公平(よしなが・こうへい)
名古屋大学法学部卒業、名古屋大学法科大学院修了後、2012 年弁護士登録。法律事務所にて勤務した後、2014 年春日井市入庁。現在、総務部参事。職員からの法律相談や職員研修、庁内報の発行、要保護児童対策地域協議会(実務者会議)への参加等を主な業務としている。兼業として、中京大学総合政策学部(地方自治法)・名古屋学院大学法学部(情報法)・名古屋大学法学部(法曹養成演習Ⅳ実務)非常勤講師や、他の自治体や劇場での研修講師も務める。愛知県弁護士会行政連携センター運営委員会委員。1児の父として約3か月の育児休業を取得。

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