月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2022年4月号 特集:“新しい日常”化と行政サービス

地方自治

2022.03.30

●特集:“新しい日常”化と行政サービス

今年も新型コロナ禍の中、自治体は新年度を迎える。いまやマスク着用、三密回避は当たり前、オンライン活用、テレワークも普通の光景になってきた。いわば“新しい日常”が定着する中で行政サービスはどう変わってきたのか。そして今後はいかにあるべきなのか。"新しい日常"化(アップデート)への適応、そして今後の行政サービスの姿を展望したい。

■対話が自治の原点──市民から出発する日常を/福嶋浩彦

新型コロナ禍から私たちは何を学び、“新しい日常”をどうデザインしていくのか。コロナ禍は同調圧力と相互監視、そして市民の分断をもたらした。私たちの社会の持つ危うさを浮き彫りにしたと言ってよい。自治体はまだ、それを乗り越える自由な対話の場を地域に作れていない。当たり前になったオンライン活用を、市民とのコミュニケーション強化につなげるのもこれからだ。首長のリーダーシップが問われている。

福嶋浩彦 中央学院大学教授

新型コロナ禍から私たちは何を学び、“新しい日常”をどうデザインしていくのか。コロナ禍は同調圧力と相互監視、そして市民の分断をもたらした。私たちの社会の持つ危うさを浮き彫りにしたと言ってよい。自治体はまだ、それを乗り越える自由な対話の場を地域に作れていない。首長のリーダーシップが問われている。

■“新しい日常”化に対応する自治体組織/大杉 覚

自治体組織は、複雑性や予測不可能性を縮減して取り込む社会システムの一つである。と同時に、現在のように社会が動揺をきたした状況にあっては、社会システム全体を安定化させる役割を担う公共部門の最前線に位置する。自治体組織にも“新しい日常”対応が要請されるが、それは自覚的である必要があろう。

■“新しい日常”化と自治体のリソース/西尾 隆

コロナ対策の基本は三密の回避であり、通勤の時間やリスクを考えてもテレワークは“新しい日常”のベースといえる。だが、対面での仕事がもつ人間関係や信頼形成の意義、定着した人事慣行という正負の遺産を考えると、論点はテレワークの可否・是非という技術的な話から、自治体のもつリソースの検証というより制度的な議論に向かっていく。「命と安全」対「不要不急」という優先順位の決定も資源配分に影響する。

■“新しい日常”化と自治体の広報・広聴の視点/牧瀬 稔

新型コロナウイルス感染症の対応として、三密回避にともなうオンライン化やソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保、マスク着用など“新しい日常”化が進んでいる。“新しい日常”化の中で、地方自治体の政策にも変化が生じている。政策の中には、広報・広聴もある。本稿では、コロナ禍における「新しい日常」化における自治体の広報・広聴の視点を言及する。

■“新しい日常”を日常化するための自治体の窓口サービスとは/瀧口樹良

“新しい日常”が定着した社会に向けた自治体の窓口サービスを実現するには、従来の自治体の窓口サービスの提供方法からの転換を図る必要がある。そのためには、感染に立ち向かう新たな非対面型または来庁不要の窓口対応を実現させる必要があり、その手段としてのデジタル化の対応が求められている。ただし、単に紙の届出書や申請書の受付処理を前提とした従来の自治体の窓口サービスの提供方法にデジタル化を適応すると、かえって非効率的な窓口対応に陥ることになりかねない。そのため、デジタル化の対応を前提とした窓口対応へと処理手順を抜本的に見直すといった窓口サービス改革が不可欠といえるだろう。

■“新しい日常”化における行政サービスと市民協働/新川達郎

“新しい日常”が定着する中で地方自治体の行政サービスは、大きく影響を受けている。新たに浮上した様々な課題への解答の一つが市民協働である。しかしそれは従来型の委託や補助ではない。市民の創意工夫あるいは事業者のアイデアによって、行政サービスの目的を達成するのみならず民間の事業性を成立させ、ひいては公共性のある公民の共通目標の実現に資する活動が主流となるのである。

■“新しい日常”化における子どもたちへの支援
 ──子どもらよ、コロナ禍をバネに進化を遂げよ!/定野 司

ヒトは生まれながら「育つ力」を持っている。そして、この「育つ力」が人類に進化をもたらしてきた。そう考えれば、“新しい日常”化における子どもたちへの支援は、「子育て」支援ではなく、「子育ち」支援となる。そして、これこそが「教育」や「人財育成」の原点であり、新型コロナウイルスも人類の進化の過程の1ページにすぎないことがわかる。

■“新しい日常”化における議会のアウトリーチのあり方
 ──オンラインを活用した住民とのコミュニケーションの可能性/佐藤 淳

「不易流行」という四文字熟語がある。“新しい日常”化において、議会における「流行」は議会のICT化、オンライン活用である。「不易」はもちろん監視機能と政策提案機能の強化である。コロナ禍であればこそ、住民福祉の向上を目指し、議会からの政策サイクルを回し、政策提案を行う議会にならなければならない。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
 自治体職場のスタートアップ

今年も4月を迎え、新年度がスタートします。
コロナ禍に振り回され、いまだ不安や不透明感も尽きませんが、新しい事業や新しい人、新しい職場など、次代に向けての「はじめの一歩」を踏み出さなければなりません。自治体職場を取り巻く環境が大きく変わる中、こうした自治体職場でのスタートアップには何が求められるのか、考えてみましょう。

■自治体新事業・スタートアップの心得/船木成記

新年度となり、皆さんには心機一転の気持ちが生まれているのではないだろうか。しかしながら、異動におけるいつもの風景のような話だけではなく、我々が肝に命じなければいけないことは、これまでに経験したことのないような、大きな時代の転換点に直面しているということだ。

■新採職員、異動職員の上手なスタートアップ/秋田将人

新採職員・異動職員にとって、新しい職場での滑り出しが上手くできるのか、失敗してしまうのかは、大きな問題だ。また、受け入れる職場や管理職、人事部門の配慮も鍵となる。

〈取材リポート〉
◆“クロスメンター”で新任係長や異動者のスタートアップをサポート/神奈川県小田原市

初めて部下を持つことになる係長への昇任や異動は自治体職員のキャリアの中でも大きな転機。新しい環境にチャレンジする期待感の一方、本当に自分はうまくやっていけるのか不安を募らせている人も少なくないだろう。神奈川県小田原市は、2020年度からクロスメンター制度を導入。新任係長や初めて異動を経験する職員のスタートアップをサポートしている。

【新連載スタート】

■キャリアを拓く!公務員人生七転び八起き なんでお前が市役所職員?!/堤 直規
■ただいま開庁中!「オンライン市役所」まるわかりガイド
 人事異動ももう怖くない!?/屋敷昌範
■自治体法務と地域創生──政策法務型思考のススメ
 新連載に当たって/関東学院大学地域創生実践研究所
■にっぽんの田舎を元気に!「食」と「人」で支える地域づくり
 にっぽんの田舎を元気にしたい!/寺本英仁

●連載

■管理職って面白い! 水が合わない/定野 司
■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ 2021年度、心に残る3つの言葉/後藤好邦

■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/澁澤 幸
■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭
■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人
■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫
■宇宙的公務員 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介
■次世代職員から見た自治の世界/中西咲貴
■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
上村 崇・京都府京田辺市長
「参画と人のつながり」を進化させ、「みんなが住み続けたいと思えるまち」の実現を

2019年4月の市長選で10分野50の政策(マニフェスト)を掲げて当選した京都府京田辺市の上村崇市長。「10年先の未来(まち)に責任」と標榜し、市長就任から間もなく丸3年。「参画と人のつながり」を深化させ、「みんなが住み続けたいと思えるまち」の実現に向けて邁進中だ。

上村 崇・京都府京田辺市長(49)。特産のお茶(玉露)を自ら淹れる上村市長。「農林水産大臣賞をとらはったお茶。玉露は低温で抽出しないといけない。お茶を介して会話を楽しんで」と話す。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝
 隆景家から頼家への転生(九) 次の転生は誰に?

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
 住民が掘り起こした「ため池」決壊の実相と教訓──原発事故、続く模索

津波、そして原発事故。東日本大震災では世界史に残る災害が起きた。原発事故は現在もまだ進行形で、新たな問題が次々と発生している。だが、その陰に隠れて、本来なら注目されるはずの災害の教訓が見過ごされてきた。福島県須賀川市長沼地区の農業用ため池「藤沼湖」決壊である。住民が記録誌作成のために聞き取りを行ったところ、想像を絶する実相が明らかになった。

□現場発!自治体の「政策開発」
 ビッグデータを活用して健康寿命の延伸を図る──介護予防DX(佐賀市)

佐賀市は、地域や医療機関などの関係者と連携し、医療・介護・健診等のビッグデータを活用して重症化リスクの高い高齢者の介護予防を推進している。健診やレセプト、独自調査によるデータを分析し、ハイリスク者を抽出。専門職による保健指導や治療の勧奨につなげ、医療費・介護費の適正化と生活習慣病重症化予防・介護予防による高齢者の生活の質の確保・向上を図る健康長寿のまちづくりに取り組んでいる。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
 議会への認知向上・関心惹起に、広報広聴ビジョン・同アクションプラン2022─2027を策定──大津市議会

任期4年間の実行計画「ミッションロードマップ2019」の中で「広報のあり方検証」を掲げた大津市議会は3月、広報広聴ビジョン・同アクションプラン2022─2027を策定した。ビジョンでは、議会への認知向上・関心惹起に力を入れ、広報ツールの特性を活かし、関心度合いに合った内容の情報発信、双方向コミュニケーションなどを展開すると明記。最終年度(27年度)には「市議会に何らかの関心がある市民の割合」を60%(21年度は43・6%)にまで高める目標を掲げている。

●Governance Focus

□将来人口を下方修正 「賃金」を柱に新戦略
 ──人口減少率が全国最大の秋田県/葉上太郎

人口減少率が全国最大となっている秋田県が、将来人口の想定を下方修正した。2015年策定の人口ビジョンでは、65年に58万6000人まで減るとしていたが、これを13%以上も下げて50万8000人になると推計し直したのだ。若者、特に女性が出て行く転出構造。合計特殊出生率は上がるどころか、昨年は全国44位の1.24%に転落した。県は東京圏との賃金格差が若者流出の大きな要因と考え、対策を練っている。「流れ」は変えられるだろうか。

□国と地方「対等」をどう位置づけるか
 ──対応迫られる危機管理とデジタル化/人羅 格

政府の第33次地方制度調査会が始動した。ポイントは、新型コロナウイルス感染対策の教訓や、進展するデジタル化を踏まえ、国と地方の関係をどう見直していくかだ。政府は緊急事態対応を念頭に、国関与の強化を探る。一方で地方側は逆に自由度の拡大を指向しており、ギャップは大きい。

●Governance Topics

□総合賞は、初めて高校生チーム(加古川市)が受賞
 /チャレンジ!!オープンガバナンス2021

市民や学生と自治体が協働し、データを活用しながら地域課題の解決に取り組む「チャレンジ!!オープンガバナンス(COG)2021」(主催/東京大学公共政策大学院科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」教育・研究ユニット等)の最終公開審査が3月6日、開催された。昨年度に引き続きオンラインで実施された最終審査には11チームが進出し、総合賞は兵庫県加古川市の「兵庫県立加古川東高校STEAM特講地場産業PR班」が受賞。6年目で初めて高校生チームがグランプリに輝いた。

□AIシミュレーションを総合計画・まちづくりに活用──山口市
 /伊藤美早紀・櫻打鈴子・広井良典

京都大学と日立京大ラボ(日立製作所)・日立コンサルティングは、2017年に公表した「AIを活用した、持続可能な日本の未来に向けた政策提言」以来、AI技術を活用した未来シミュレーションや政策立案に関する研究を進め、多くの自治体と共同研究及び政策策定支援を行ってきた。このたび山口市と進めてきた政策提言AIシミュレーションの成果がまとまったので、以下報告する。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚
□“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘
□自治体の防災マネジメント/鍵屋 一
□市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹
□公務職場の人・間・模・様/金子雅臣
□生きづらさの中で/玉木達也
□議会局「軍師」論のススメ/清水克士
□「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭
□From the Cinema その映画から世界が見える
 『白い牛のバラッド』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『自分で始めた人たち』宇野重規]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
 簀編み職人のために手間を惜しまず──竹ひご職人・竹大工房(静岡市)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ
 1000本の桜並木を抜けて、青空の下に広がる菜の花畑へ/埼玉県幸手市
□山・海・暮・人/芥川 仁
 うちにもようやく春が来た……──福島県相馬郡飯舘村
□生業が育む情景~先人の知恵が息づく農業遺産
 先人の知恵が育んだ日本屈指の果樹園景観
 ──盆地に適応した山梨の複合的果樹システム(山梨県峡東地域)
□クローズ・アップ
 絶滅、発見。それでも故郷に帰れない悲劇の魚──秋田県仙北市、田沢湖のクニマス


■DATA・BANK2022 自治体の最新動向をコンパクトに紹介!

 


※「もっと自治力を!~広がる自主研修・ネットワーク」「人と地域をつなぐ─ご当地愛キャラ」は休みます。

 

 

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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