Osaka Metro Groupが目指す都市型 MaaS構想 ~大阪・関西万博開催に向けて~(特集:行政サービスとMaaS)

地方自治

2022.03.16

4 現在の取り組み

 次に、前項でご紹介した「都市型 MaaS構想」の内、第2層でその実現を目指す新たな交通手段の1つとして、2021年3月から大阪市内の生野、平野両区において実証実験を開始した「オンデマンドバス」と、利用者に提供を開始した「MaaSアプリ」についてご説明します。

(1)オンデマンドバス

 現在は、日本各地でオンデマンドバスが運行されていますが、主に、需要が減退している路線バスの代替手段として導入されている事例が多いように見受けられます。一方で、Osaka Metroが手掛けているオンデマンドバスは、もともと一定の移動需要が想定される都市部において需要即応型の小型のバスを運行することで、多くの乗り合いを成立させると共に追加的な需要を喚起し、「利用者の利便性の向上」と「公共交通の持続可能性の向上」を両立させることを目指しています。

 具体的には、約3㎞四方の一定のエリアに、路線バスよりも小型の旅客定員8名の車両を投入し、アプリや電話からの利用者の予約に応じてその都度AIシステムが最適なルートを生成し、その指示に合わせて毎日6時から23時までの間、運転士がオンデマンドバスを運行しています(図-2)

-2 オンデマンドバスの概要

 このルート生成の際、発着時間に幅を持たせ、一回の運行で複数の利用者の乗り合いを成立させるような計画を立てることがポイントになっています。本システムでは、AIがルート等を学習して継続的に運行効率を改善できるため、コストを低減して運賃を抑制し、需要を喚起できると期待しています。

 また、小型の車両を用いることで、路線バスでは運行できない道路まで走行範囲を広げると共に、路線バスの停留所よりも乗降場所を多く配置することで、「『自宅』や『目的地』から『バス停』までの移動」といったきめ細かいニーズにも対応し、新たな需要の創出に取り組んでいます。さらに、「車いすのままでご乗車いただけるオンデマンドバス車両」も導入し、多くの方にためらうことなく外出していただける環境の整備に努めています。

 この実証実験では、まずは、路線バスと同一の「210円」という料金の設定とし、2021年12月からは「5,000円定期券」の発行を開始しました。

 運行開始以降は、実際にご乗車くださっているお客さまの声や実証実験の目的に合わせ、順次、「運行エリアの拡大」や「バスの位置表示」、「接近通知」、「乗降場所の写真表示」などのアプリの機能改善を行いました。

 具体的な乗車人員の推移については、昨年の夏期にコロナ感染症拡大や長期休暇等の影響を受けつつも、以降はほとんど減少することなく、概ね順調に利用者を伸ばしています(図-3)

-3 オンデマンドバス乗車人員の推移

 当初オンデマンドバスの主な利用者として想定していたご高齢の方以上に、30代から50代のご利用が多いことが判明しました。

 さらに、利用者へのアンケート調査(図-4)からは、オンデマンドバスの運行によって外出が促されている旨の回答も得られており、まだ需要の定着途上であることから確実ではないものの、地下鉄・路線バスの既存公共交通に比べ感染症の影響が小さく、「需要に合わせて供給する」、「密を回避しやすい」というオンデマンドバスの特徴が、新しい時代の利用者のニーズに合致し、新たな市場を築きつつあるという期待を感じています。今後も社会実験を通じて、新しい都市交通のあり方を追求していきます。

-4 オンデマンドバス車内アンケート調査

(2)MaaSアプリ

 Osaka Metroでは、大阪市内でのオンデマンドバスの運行に先立ち、2021年3月4日にスマートフォン用アプリ「Osaka MaaS社会実験版」の配信を開始しました。本アプリは、オンデマンドバスの予約・決済機能を備え、Osaka Metroを含む関西2府4県で運行する多様なモビリティを用いた経路検索が行えるアプリとして開発を進めました。リリース後も、UI/UXの改善をはじめ、オンデマンドバスの車いす対応やサブスクリプション対応、タクシー配車アプリとの連携等、継続的にアプリの改善に取り組んでいます。また、他社と連携したキャンペーン等も展開し、アプリユーザー数の拡大を図っています。こうした施策が奏功し、アプリの主力サービスであるオンデマンドバスの運行エリアが限定的な中でも2022年1月末には約2.7万ダウンロードを実現しました。

5 今後の展望

(1)万博に向けて

 当社では、2025年に開催予定の大阪・関西万博において、レベル4を見据えた自動運転車両を核とした次世代の交通管制システムの提供を目指した実証実験を実施します。当該実証実験では、大阪・関西万博で多くの来場者輸送需要が予想される中、待ち時間のない効率的な移動と、未来社会における自動運転車両を組み込んだ次世代の交通管制システムの構築や新たな移動体験、新たなサービスの事業性の検証を行います。関係者とともに実証実験を重ね、最先端技術の導入による、交通事故・交通トラブルゼロを目指します。

 さらに、「都市型 MaaS構想」の実現を支える技術として、車両乗降における顔認証決済、パーソナルモビリティのシェアリングシステムや車両エネルギーマネジメント、車内の映像コンテンツや、道路の非接触充電・発電・自然循環配慮型舗装等についても実証実験を行っていく予定です。鉄道においても、関西の鉄道7社で実現を目指す「関西MaaS」に参画し、新たな価値の創造を目指して他社との協業を拡大していく予定です。

(2)MaaSの展開

 当社では、「都市型 MaaS構想」の体現を通じて他社や行政、他地域の方々などと幅広い協業を実現し、一人ひとりの移動を便利に快適にすると共にあらゆるサービスをつなぎ、利用者に「新しい発見」を提案することで、賑わいの創出に貢献したいと考えています。

 今後も、「大阪から元気を創りつづける」とともに、「交通を核にした生活まちづくり企業」として、前例にとらわれずに新しい時代に合った交通手段を提供し、新しい形のまちづくりに貢献することで、大阪とともに、成長していきます。

 

 

【執筆】大阪市高速電気軌道株式会社
交通事業執行役員兼交通事業本部 MaaS戦略推進部第1部長 上新原公
交通事業本部 MaaS戦略推進部 MaaS戦略推進課長 竹谷健治
交通事業本部 MaaS戦略推進部 MaaS戦略推進課係長 前田次郎

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特集:行政サービスとMaaS

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